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サインボード

DAY23 美しい村連合・福島県三島町 町は思想を反映する…先人のヴィジョンが活きる町


「島」がつく地名は海を連想するが、福島県の三島町も(静岡県の三島市と同じく)、決して海に面している町ではない。むしろ、ものすごい山奥。只見川を挟んだ谷の両側に、這うように張り付いているような町だ。只見川を渡る鉄道の鉄橋が美しく、紅葉と新緑の時期に観光客が見に来る有名スポットもあるのだとか。

 道の駅から美しい只見川もこの日は大雨で濁流に…

編み組細工
ここ、三島町の美しい村認定理由は、その山間の自然風景ではなく「編み組細工」と「サイノカミ」。編み組細工(あみくみざいく)とは、草木のツルや木の皮でつくられた籠や靴、袋、蓑、ロープなどの生活用品。昔から雪深いこの地方の農家が、冬の間に各家庭で手づくりしていたものだ。

材料となる木皮材料となるヒロロ、マタタビ、葡萄のツルなど

以前は、(その芸術性はさておき)日用品を自ら作っている農家は少なくなかった。しかし、プラスチック製品の流入とともに、そのような文化は失われてきた。三島町でも安価なプラスチック製品の流入と、農業から建設業へ町の産業の推移(三島町は只見川のダムで栄えた町でもある)とともに、手仕事が失われつつあった。
たわし
しかし、建設業は、ものが建ったら終わってしまう、ある意味一過性のもの。昔ながらの生活に根ざした産業も残しておかなければ、との想いで、当時の佐藤町長のもと昭和56年に「ふるさと運動」が始まる。平成17年には三島町の編み組細工が伝統工芸品認定を受けるまでに。

生活工芸館
その編み組細工の展示・販売と体験施設の「生活工芸館」。もう少しキャプションが充実していると勉強になるのだが、基本的にはプロダクト名と作成者と値段の札しかついていないのがちょっと残念。ヒロロのコースターづくり体験も、この日は既に受け付け終了となってしまっていた(12時前だけど…)。事前予約をしていった方がよさそうだ。
ひろろのロープ
ひろろのバッグ等は、さすが伝統工芸品指定を受けており、美智子様が購入されたというだけあって(!)とても上品。もちろんお値段もそれなり(2〜5万円が相場)。もうちょい、手の届くちっちゃいポーチとか、ほしいなぁ…。しかし、伝統工芸品指定をうけると、伝統重視するため、デザインを斬新にしずらかったりするようで、新しい商品開発の動きは、今のところあまりないそう。作り手さんも、昔からできる方ばかり。若い作家さんはいらっしゃらないらしく、少しもったいない気がした。

ヒロロのバッグ

桐ダンス
編み組細工とともに、ふるさと運動で見直されたのが、桐。冬に寒い地域では、年輪の目が細かく、三島町の木は質がよくて有名だそう。現在でもまちの中央を流れる只見川沿いに、桐の林が残る。親の代から何十年かけて木を育てる。1本数千万円とする時代はよかった。が、桐ダンスが嫁入り道具として珍重されなくなってから久しい現在、桐の価格は暴落し、メンテナンスのコストばかりがかさむようになってしまった。なんとか付加価値をつけることはできないか。と、桐の加工工場を設立。「ふるさと運動」の一環として、桐ダンスの製造を開始したそうだ。

木組み桐ダンスの組み方色々

「ふるさと運動」が現在の三島町のアイデンティティを形成しているといっても過言ではないほど、危機感を持った当時の村の人のビジョンに基づいた行動が、じわじわと、しかし確かに、町の未来をつくっている好例である(必ずしもうまくいっているわけではないにせよ)。

年中行事のサイノカミ
三島町の観光パンフレット等を拝見すると頻出する「サイノカミ」。どうやら昔から地区毎に続く年中行事のことらしい。藁を高くしめ上げて、旧正月にどんど焼きのように燃やし、新しい年を祝うので「歳」の神というのだそうだ。

サイノカミ(出典:今日の奥会津

それ以外にも季節毎の小さなお祭りが地区毎に残っている。例えば「虫送り」という行事。その年の豊作を祝って害虫を追い払う行事だそう。日中、子供達が虫を捕まえて、籠に入れてくる。夕方に提灯に明かりをつけて、祝詞をとなえつつ、なんと昼に捕まえた虫を燃やしながら練り歩くのだそう。残酷さがリアルだ。

宮下型住宅とサインボード
編み組細工、桐、サイノカミ。それらはともかく、この町で一番面白いと思ったのが、屋号のサインボード!!!屋根の色や家のかたちにばらつきはあっても、統一されたデザインのサインボードがかかっているだけで、町並みにまとまりが生まれる。お店や住宅等プライベートな空間と思いがちだが、こんな小さなサインボードひとつを揃えてみることで、それらは景観というパブリックな側面を大いに持っているのだと、改めて実感する。
三島町のサインボード
この地区は昭和初期に大火に見回れ、その後、同じ建築様式で一斉に再建された。そのときの建築様式を「宮下型住宅」といい、白壁に、梁や柱の木組みが出ているのが特徴。この宮下型住宅、急峻な深緑の斜面をバックにたたずんでいると、心なしかフランスのアルザス地方のお家のようにも見えた。
宮下型住宅
統一サインボードは、建替えで減りつつある宮下型住宅の価値を再認識するための会津大学とのコラボレーション企画で、グッドデザイン賞も受賞しているそうだ。未だに、同一名字の人が多いので屋号を使っている、というこの地域らしさが出ているのもいい。景観条例という規制型ではなく、既存のものにちょっとしたエッセンスを付け足すという手法。非常にコストパフォーマンスが高いと思う。宮下型住宅

観光協会訪問
町の観光協会も宮下型住宅をリノベーションしたもの。観光協会の事務局長を勤める三浦さんがIターンで三島町に移り住んだ人と聞き、お邪魔した。海外を旅した後、日本の田舎で働いてみたいと、知人のツテで会津若松で働くことに。同僚で三島町出身の方がいて、この町のことを知る。より田舎っぽい暮らしがのこっている三島町が気に入って、住むことにしたのがきっかけだそうだ。まず、仕事。そして、人のつながりが地域に人を呼ぶ。
観光局にて
知り合いが紹介してくれたボロ古民家に住まわれているのだとか。しかし、インテリアがお洒落で、青木さんが、初めて行ったときはビックリした…というお話を聞き、「見たい!」と、声にこそ出さなかったが、大きい文字で私の顔に書いてあったのだろう…。いつも車中泊という私たちに、「うちでよければ、今晩、泊まっていきますか?」と三浦さんの有り難いオファー。

三浦さん青木さんと観光協会の三浦さんと役所の青木さんと

古民家のおもてなし
北日本の旅、最終日にして、初めて、地元の方のお家に泊めていただいた。夕飯は、豪華に会津地鶏の鍋!和食屋さんがご実家という三浦さんの漬け物、お料理。全部すごくおいしかった。夕飯には、Iターンで林業に従事されているという方も呼んでくださり、一緒に鍋を囲みながらお話を聞くこともできた。
地鶏鍋

早戸温泉
鍋を囲んで町の魅力の話。三浦さんに「町の魅力は?」と聞くと、雪化粧したときだという。特に夜に雪が降ってはれた朝の白と青のコントラストが素晴らしいそうだ。そんな冬にこられたら、また格別だろうな〜と思ったのが、この町の只見川の川上にある開湯1,200年の歴史をもつという「早戸温泉」。珍しく、公共浴場ではなく、地元の方の共同出資で運営されている。まだ新しさを感じる清潔な施設。川の高さまで、エレベーターで下がったところにあるお風呂は、川に近く、景色がとてもよい。お湯は飲んでも効くらしい。私はそう思わなかったが「昆布茶のようだ」という人もいた。湯治客用の簡易宿泊施設もあり、薬効が期待できるいいお湯なのだろう。

早戸温泉

ログハウス・どんぐり
三島町には、なぜかうらびれた旅館の看板が多い。なぜ、ここに旅館があるのか。期待されている客は誰なのか。経緯も理由もよくわからない。しかし、旅館客は基本旅館で食事をするからか、食事処がとても少ない(特に夜は殆どない)。私たちは、その中でも、青木さんからおすすめいただいていた「どんぐり」でランチ。北塩原村でも「三島町に行くなら、ちょっと高いけど、会津地鶏を食べて。おいしいから!」と言われていたので、ちょっと高かったけど、迷わず会津地鶏定食をチョイス。確かに、おいしい!「地鶏」と言われる類の噛み切れないような堅さではなく、適度な弾力がよかった。

会津地鶏
しかし!どんぐりでは、蕎麦も食べるべきだったようだ。鍋を囲みながら蕎麦の話になった。この町では、あまり農業は盛んではないものの、蕎麦を育てている人、蕎麦をうつ人が多いらしい。そして、みな「俺の蕎麦が一番だ」と主張しているそうだ。できるだけ蕎麦の周りの殻を取り除いた、透き通る、更級蕎麦で、おいしさを競う中、三浦さんが一番おいしいというのは、どんぐりの蕎麦。どんぐり
「どんぐりさんは、道楽ではなく、商売でうっている。」だから、できるだけ無駄のないよう、蕎麦は磨きすぎず、丸ごと使う田舎蕎麦(灰色のぷちぷちが入っている)だそうだ。それの方が蕎麦の香りが強く、おいしい、と。三浦さんは、言葉は多くないけれど、きちんと自分の基準を持っている。押し付けないけど、すごくこだわりがある。そんな感じの人だ。

「単なる観光ではなくって、人のつながりを生みたい。都会の方にとっての故郷のような町になれたら…」と、着地型の観光の企画を手がける三浦さん。一見クールに見えるが、身を以て、地域の暮らしをみせてくださり、本当に感謝です。ご馳走様でした。

 

三島町はぶらぶらして面白い町かというと、そうではないだろう(紅葉の季節とか鉄道ファンにはいいかも)。しかし、住む人々のくらしぶりに魅力があるような町のようだ。まずは観光協会にコンタクトをとって、楽しみ方を教えてもらうのが得策であろう。

三島町地図三島町マップ

  • 三島町
    人口:1,730人(2014国勢調査推計人口)

    三島町地図(出典:wikipedia)

  • 生活工芸館
    福島県大沼郡三島町大字名入字諏訪ノ上395
    TEL: 0241-48-5502
    営業:9:00-17:00
    休館:月曜・祝日の翌日・年末年始
  • どんぐり
    福島県大沼郡三島町大字名人入字諏訪ノ上410
    TEL :0421-52-2932
    営業 :9:30-19:00
    定休: 月曜日
  • 早戸温泉 つるの湯
    福島県大沼郡三島町大字早戸字湯ノ平888
    TEL.0241-52-3324

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