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DAY37-3 地図を確認してから訪問すべき重伝建、加賀市東谷地区(荒谷町・今立町・大土町・杉水町)


本日最後に訪問したのは、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)、石川県加賀市東谷(ひがしだに)地区。ここの住所は「山中温泉○○町」となっているが、あくまで合併を重ねた結果で、当の山中温泉とは結構離れたところにあるので注意が必要。
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写真にある通り、少し離れた4集落がまとまって指定を受けている。加賀市側から登っていくと、荒谷町(山中温泉荒谷町、以下同じ)、今立町が並んでおり、山の方に進み、峠を超えたところに杉水町がある。大土町というところが、谷を挟んで反対側にあったようだが、案内表示もあまりなく道がわからず、暗くなってしまったので今回は断念。事前調査と計画的な訪問が必要な重伝建である。(ナビがあれば多分迷わないのだろうけれど)

まず荒谷町。ここも赤瓦(赤というよりくすんだ橙色)の家が並んでいた。だが、なんの表示もない上、かなりガタが来ている家屋が多く、まさか重伝建地区だとは気づかぬまま、通り過ぎてしまったので写真はなし…。

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次に通過したのが今立地区。ここには辛うじて住民の集会所前に重伝建の表示がある(なんでここだけなんだろう?)。

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途中、家なみを撮影していると、家からおばちゃんが飛び出してきて、「撮らんで!」と、手で追い払うポーズ。(もちろん、写真の家ではありません)

確かに人の住空間であるけれど、敷地に踏み入れている訳でもなく、道路から家を撮影している。それに景観を守るために国の補助金(=税金)を入れた家で、景観的には誇れるものだと思う。

その一方で、「私の家は見せ物ではない!」という住民の抵抗感があるのも理解できる。いったい重伝建とはなんのために、どうあるべきなのだろうか。景観という公共的なものと、個人の所有物である各戸の線をどこでひくのか、考えさせられた。

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例えば、長野県白馬村の重伝建・青鬼地区(あおに)では、入り口に見学ルールの表示があった。

  • 住民の方の写真はとらないでください
  • 田んぼの畔は個人の所有なので入らないでください

こんな風に、住民同士で合意のとれたルールを決めて、訪問する人に示されているとありがたいものだ。

さて、次に大土町に向かいたかったのだが、道の表示がなく、ぐんぐん奥へ進み、峠を越えると杉水地区にでてしまった。後に知ったのだが、「大土町が、一番原風景的なものが残っているよ」とのことだった。集落に移住してきた若者が、農地を借りて頑張っているとのこと。東谷地区に向かう方には、ぜひ訪問していただきたい。

杉水地区をさまよっていると、お蕎麦屋さん(そば工房・権兵衛さん)を発見!車から降りてウロウロしていると、中からご主人が出てきた。また怒られるのか!?と一瞬身構えたのもつかの間、とても人の良さそうなご主人。道に迷ったのかと思ってでてきてくれたのだろう。なんとお蕎麦やさんは創業20年。お店は、ご主人のご実家だったところを改装した建物。向かいには2軒、新たなにリフォームした宿泊棟もある。

ご主人と

元々加賀市で漆塗り職人さんだったご主人、実家であるこのお店に、このままでは住む人もおらず、市に譲渡するか、それとも壊すかの選択を迫られ「やるなら若いうちに動かねば」と、思い切ってUターンしてきたそう。 今では加賀市等から若い方も隣集落に移住してこられて、一緒にNPO法人を立ち上げて情報発信やイベントを開催し、ファンづくり、ひいては村の後継者づくりに勤めている。

ご主人から、東谷の重伝建についても色々伺うことができた。瓦は現在の加賀市街地あたりで焼いていたため、この一帯は赤瓦が多いのだそう。赤土な訳ではなく、赤い釉薬が塗ってあるとのこと。この周辺の家のその他の特徴は、横方向の壁の板、屋根の中央にぽこっと重なっている、小さな屋根(いろりの空気孔)。屋根のてっぺんの継ぎ目の置き石。そして、装飾瓦(縁起物や海、山の装飾)。

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<一番奥が宿泊棟、真ん中が蕎麦屋の権兵衛さんです>

重伝建指定のきっかけは、伝統産業だった炭焼き(ここは加賀藩の御用炭をつくる地域だった)が廃れ、過疎化が進む周辺の村々で、年寄りたちに「今からお前ら、村をどうするんだ」と問われたこと。各集落の若手を中心に保存委員会を立ち上げ、市役所に相談を持ちかけたところ、重伝建という補助金制度を紹介してもらい、8年ほどかけて平成23年に重伝建に指定されたということだ。

しかし、広範囲に渡って指定を受けているということもあり、住民の間でコンセンサスが得られておらず、住民達も価値に気づいていないため、どんどん昔の家は取り壊されてしまう。毎年、1集落(町)1棟の改修費用という予算を組んでおり、改修の許可が下りたにも関わらず、取り壊してしまう人も多く、文化庁の方も残念がっているとか。

正直、ご主人も「重伝建に指定されると、こんなにも改修・修繕が面倒なものか・・」と、手こずっているらしい。瓦が壊れても、新しいものではなく、壊れたものの割れ目をつないで使わなければならない。割れ目からまた水が入って、冬には氷り、割れやすくなるにも関わらず…である。さっき怒鳴られたおばちゃんにも、いろいろ重伝建に対する不満があったのかもしれない。

東谷地区は、バラバラの集落がまとまって指定を受けているという点に特徴がある。また、他の重伝建のように「これはすごい!!」という建築物があるわけでもない(と思う)。そして、ほとんどの住民が80歳以上という集落さえある。しかしながら、そこに移住して住もうという若者や、蕎麦屋のご主人のように気合の入った方も確かにいる。今後、東谷という地域がどうなっていくのか、興味深い。10年くらいたったら、また訪問してみたいと思う(マ)。

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【余談】帰りに寄った山代温泉の「古総湯」がすごいことになっていました。(こ)

DAY37 (1/3) 石川県金沢市:百姓の持ちたる国・加賀百万石の重伝建、「東山ひがし・主計町・卯辰山麓・寺町台」

DAY37 (2/3) 北前船の栄枯盛衰、船主集落の重伝建・加賀市加賀橋立(かがはしたて)地区


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