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加賀橋立

DAY37-2 北前船の栄枯盛衰、船主集落の重伝建・加賀市加賀橋立(かがはしたて)地区


金沢から車まで約1時間、石川県の西の端っこ、福井県に隣接した加賀市にやってまいりました。ここ加賀市には、2つの重伝建地区があります。ひとつは今回紹介する船主集落・加賀橋立(かがはしたて)、そしてもうひとつは山村集落・東谷(これについて書いた記事)。

加賀橋立の特徴は、「船主集落」であるということ。いわゆる「港町」ではなく、北前船の船主・船頭、そして船乗りが住む集落なのです。

ちなみに、船主・船頭・船乗りの違いを大雑把に説明すると、船主=船のオーナー、船頭=いわゆる船長、そして船乗り=船で働く従業員です。船主が船頭を兼ねる場合もあったそうですが、多くの場合それらは別で、船主は船に乗らない場合が多かったそうです。さっそく、「北前船の里資料館」に行ってみました。

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この「北前船の里資料館」は、旧北前船主・酒谷家が明治9年に建てた豪邸を転用したもの。とにかく中は巨大で、北前船主の財力を感じることができます。なお橋立地区は、明治5年(1872年)の大火によって集落の約6割が焼けてしまったそうですが、当時は北前船の廻船業の最盛期であったため、より大きく豪華な建物群となって復活したそうです。ここ、旧酒井家も明治9年なので、復興豪邸のひとつであると思われます。

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こんな感じで、たくさん北前船が橋立に寄港していたそうです。なお、当時の北前船主がどれくらい稼いでいたかというと、当時の医者や呉服屋の給料の3倍以上の所得(3千両以上)あったとのこと。その頃の医者や呉服屋だってかなり稼いでいたでしょうから、相当なものであったことがわかります。

なお、資料館の館内放送によると、船頭の給料は1,2両、船乗りに至っては半両程度であったそうな。でも、船頭には「自分の荷物を一定量載せていい権利」、そして船乗り以下には「航海の利益の約一割をみんなで折半する権利」があったそうで、実質はそれなりの歩合給をもらっていたことが想像されます。もちろん、死亡率もかなり高い、危険な仕事であったようですが。

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こちらは、資料館に展示されていた橋立地区の全景。散歩するのにちょうどいい規模の集落となっています。

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建物群としての橋立の特徴は、(1)赤瓦と、(2)笏谷石の石垣、そして(3)潮風に耐えるために壁に船材を使っていることの3つだそうです。町並み全体で統一されている古びた監事の赤瓦は、なかなか見た目に美しい。笏谷石(しゃくだにいし)は、福井県の足羽山で採掘される石だそうです。そして、素人目にも特徴的なのが、板材の使い方。大きな蔵も、壁に覆われています。

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坂や小道が多い、橋立の集落。かつては相当栄えていたんだろうなぁ、、と思いつつ散歩すると味わいがあります。なお、資料館によれば北前船凋落の原因は以下の4つ。諸行無常であります。

  1. 電信の普及により、地域価格差によるボロ儲けが難しくなる
  2. 汽車や汽船の発達により、移動手段としての優位性がなくなる
  3. 鰊粕(にしんかす)を用いた農産品の生産が輸入品に押されて低迷する
  4. 鰊(にしん)漁獲量の減少

結果として、汽船あるいは北洋漁業に転身した船主だけが環境の変化を乗り切ることができたそうです。後からみれば、技術革新と国際関係、そして自然環境の変化への対応力が運命を決めたといえるわけですが、空前の繁栄時にそれを見通すことはやっぱり難しいでしょうね。

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今でもとても風情があってよいところ、石川県・加賀市橋立でした。そして本日最後の訪問先、加賀市東谷へ。(こ)

続き:DAY37 (3/3) 地図を確認してから訪問すべき重伝建、加賀市東谷地区(荒谷町・今立町・大土町・杉水町)


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