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明るい坂道

DAY26 美しい村連合・山梨県早川町 日本で最も小さい町はとてつもなく広く、そして水曜定休だった


人口1,099人*、日本で最も小さい「町」、早川町。町の中心を流れる早川沿いの6つの村が合併(1956年)してできた町で、現在でもカラーの異なる38の集落が点在している。

早川町位置情報(出典:wikipedia)↑黄色いところが早川町

美しい村認定理由1:赤沢集落
昨日訪問した道志村が山梨の東の秘境なら、早川町は西の秘境。道志村の場合は神奈川県側に道路が通じていたが、早川町の西側は南アルプスに阻まれ、道はどん詰まりになっている。なぜ、こんなところに村ができたのか、不思議になるくらい不便そうな立地だ。

その謎を解く鍵の一つは「信仰」にあるようだ。日蓮宗総本山の久遠寺のある身延山と、七面山をつなぐ尾根道は、日本各地にあった「請」という信仰のグループが参拝のために歩く道だった。その中間地点にある赤沢集落は、全国の「請」が宿泊するための「請中宿」が立ち並ぶ集落として栄え、重伝建地区にも指定されている。赤沢集落

実際、行ってみると、当時の雰囲気を残す建物が、急斜面にびっちり並んでいる(これならどの宿も眺めは最高だったろう)。最盛期は40軒を超えたといわれる宿も、現在は「江戸屋」一軒のみの営業とのことだが、未だに各地の請の名前が書かれた木札が下がっている建物は多く残る。私たちが訪問した時は、集落丸ごと、ほぼ貸し切り状態だったが、不思議とその請中札が当時の賑わいを感じさせる。請中札集落の上から下まで通じる道に、住民によって整備されたという明るい色の石畳がしかれており、急斜面のわりに歩きやすい。集落の中間くらいにある妙福寺の駐車場に車を止めて、ぶらぶらするのがよいだろう。観光バスなど到底入れない山道をくねくねと登っていくので、大混雑することはなさそう。周囲の山の景色も美しく、紅葉の時期はさぞ美しいだろうと思う。基本的にこの集落はお土産物店や飲食店がなく、町並みと景色を楽しむところと思った方がよい。唯一食事をできる「蕎麦武蔵」は、土日以外は予約制なので、要注意。

明るい坂道
美しい村認定理由2:奈良田
6村が合併しただけあり、早川町は人口の割に面積がばかでかい。下から上まで、早川沿いに町を縦断するのに1.5時間はかかる。その村の最上流、最も奥まったところに位置するのが、奈良田という集落だ。谷の斜面に石積みの段でつくった、わずかな平面。そこに家と小さな畑がひしめいている。ジグザグの道は上に行くと地図上から消えている。Uターンできずに苦労するので、歴史資料博物館で折り返すこと。

奈良田
奈良田はこんなに山奥なのに、古くからあった土地らしく、奈良王こと孝謙天皇がらみの七不思議が残っていたりする。当時から温泉地としても有名だったようで、705年開業の「世界最古の旅館」でギネスブックにも掲載されている「慶雲館」もある。法隆寺みたいな旅館をイメージしてドキドキしていたが、現在はリニューアルした高級旅館となっていた(当たり前か…)。残念ながらここのお風呂は日帰り温泉なし。(付近には白根の湯、奈良田の里等、日帰り可の温泉もある。)

美しい村認定理由3:硯石
早川沿いからちょっと離れた硯島集落(すずりしま)は、書道のときに墨を解く硯(すずり)石の砕石と、その加工で有名なところ。ただ、筆を使って文字を書くことなど殆どなくなってしまった現在、硯の需要も激減。硯職人さんも最後の一人となってしまった。そこで、町が、施設を整備し硯の文化を学び、体験ができるようになっている。私たちは時間切れとなってしまい訪問できなかったが…硯づくりはやってみたかったなぁ。

茂倉集落
商工会議所が作成したという早川町マップに「日本のチベット」と記されており気になった茂倉(もぐら)集落。奈良田から下ってくる道の途中の新倉という集落から、山に向かいぐねぐねと登っていく。標高約900mの山奥、これまた山の斜面にへばりつく集落。50戸くらいの、ある程度まとまった集落だが、常時住んでいるのは半分で、25、6人だそう。
茂倉集落
きっと、現在住んでいる人の数より、お墓の数の方が多いのだろう。集落の一番上にはお墓がずらり。山々の頂を見晴らしていた。
茂倉集落2
ものすごい暑い日だったからだろうか。ここもまた、平日の昼は殆ど人気がなかった。家と家の間に、坂道の路地が入り組んで、迷路のようになっている。コンクリートで不格好に固めてあるが、ゴミは落ちておらず、草刈りなどもきちんとされている。人口が少ない割に、きちんと手入れがされており、おじいちゃん、おばあちゃんが大切に住んでいる姿が思い浮かぶ。

茂倉集落3

上流文化圏研究所
今回は、町役場で美しい村担当の深澤さん、上流文化圏研究所の鞍打さんのお二人に、早川町についてお話を伺うことができた。

鞍内さんと深澤さんは途中退席でお写真を撮りそびれてしまいましたが…鞍内さんと。

場所は廃校を活用した交流促進センター内。早川町のみならず、「上流圏」とうたっているのは、より広く、日本において「山村の暮らしの価値を見直そう」という想いから。20年程前、まちづくりブームでハコモノがバンバン建てられていたときに、都会に追いつくために新しいものを建てるのではなく、今ある暮らしの価値を再認識しようという方向に舵を切った早川町、上流文化圏研究所はその実行組織として設立された。
上流文化圏研究所
お二人とも、もともとはこの町ご出身ではない。深澤さんはご両親が早川町ご出身だったということで、小さな頃から縁があってIターン。鞍打さんは大学生の頃のフィールドワークで関わっていたのがご縁でIターンしてきたという。お二人のように、何らかの関わりがあったり、観光できたりして、早川ファンになる人は多く、ファンクラブを組織し、会員費を町づくりの原資にしているそうだ。

移住施策にも力を入れており、移住者住宅も整備されている。移住者を受け入れるためには集落の合意をまず取り付ける必要があり、誰か一人でも町の人が合意しなければ受け入れられない。相当の手間をかけ、丁寧に受け入れを行っている。

移住者の一人として、お子さんをもつ鞍打さん。小学生の人数がとにかく少ないため、なんの行事をやるにも、全員参加。ひとりひとりの役割がある。責任感も育つし、居場所も必然的にできる。少人数でも悪いことばかりではなく、むしろメリットもあるという。

早川町の中心を流れる早川

水曜定休の町と心得よ…
最後に留意点。この町は、公共施設にしろお店にしろ、全体的に水曜日が定休日が多い。運悪く、私たちは、その水曜日に訪問してしまったため、悉く定休日。歴史資料館、秘湯 奈良田の里、食事処でおすすめされた南アルプスプラザ等。一方で、前述の通り、この町はものすごく広いため、車で走って訪問するだけで相当な時間がかかる。全体を回ろうとしたら、回るだけで終わってしまう。従って、この町を訪れるときは、水曜日は避ける、行きたいところに目星を付けてから、効率よく回るというのがポイントである

次回は水曜日を外し、午前中硯石づくり体験、昼に赤沢集落武蔵でお蕎麦を食べ、鞍内さんにお願いして午後に茂倉集落の元気なおばあちゃんたちの話を聞いて、奈良田の温泉に浸かって締めくくるというゴールデンコースで訪問したい。

早川町マップ(出典:早川町オートキャンプ場 キャンプ場情報blog)

*2014年7月1日の国勢調査推計人口

  • 上流文化圏研究所
    山梨県南巨摩郡早川町薬袋430
    TEL: 0556-45-2160
    研究所だけあって、早川町の情報をはじめ色々な情報が揃っているので面白いです。そういう使い方が想定されているのかはわからないのですが、普通の観光よりちょっとディープな情報を知りたかったらこちらに立ち寄ってお話を聞くと面白いと思います!

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