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林さん2

DAY30-3 重伝建・長野県木曽平沢 日本で唯一漆町で重伝建認定を受けた町 平沢のご先祖は忍者だった!?


朝早く木曽町からスタートし、奈良井宿によって、木曽平沢に到着したのはもう夕方もいいところ。そんなに名も知れていないひっそりした重伝建だし、ついでに寄ってしまおうか、というノリで乗り込んだのですが、ここでもとってもよい出会いがありました。

漆器職人町のまちなみ
漆で有名な町は日本にいくつかあるけれど、木曽平沢は「漆器町」として重伝建登録されている、日本唯一の町。両側で合流している2本の狭い通りが指定区域で、歩いて回っても20分くらい。その狭いエリアは漆屋さんだらけ。職人さんは半減してしまったというものの、未だに現役で100人以上いらっしゃるそうです。

漆やさんの看板
町並みの特徴としては、多くの建物が道から一歩引いたところに軒を連ねているところ。緩やかなカーブを描く通りは特に、家がギザギザに建っているような感じ(写真参照)。
木曽平沢のまちなみ
そして、漆の町独特なのが、表の建物から、裏の塗り蔵(=作業場)、そして倉庫としての蔵まで続く細〜い道が、家と家の間に通っていること(現在では家の中にあることも多いようですが)。こちらの写真にもある通り、赤が表のミセ、黄色部分が作業場になっています。
木曽平沢の地図
集落の入り口に漆の作業の見学や体験、資料館的な施設がありましたが、当然、既に閉館。お店もぜ〜んぶ閉店。夕暗がりの町をブラブラしていたところ、一番町の奥の方に、明かりがついているギャラリーのようなところを発見!いそいそと中に入ってみると、おかみさんが出てきてくださり、あれこれお話ししているうちに、職人であるご主人も引っ張りだしてきてくださいました。

ご主人の小林さん、なんと平沢の漆器組合の専務理事さんで!もちろん、国の伝統工芸士でもあります。この町について、そして漆器について、たくさんお話を伺うことができました。

林さん

なぜ平沢が漆器の町に?
漆器と言ったら、京都とか、会津、金沢のおひざ元の輪島が有名ですが、なぜ、こんな山奥に漆器の町があるのでしょう?きっと漆の木が大いに違いない。小林さんに聞いてみたところ、意外や意外。「漆はほぼ100%が中国からの輸入品。歴史的にみてもずっとそうですよ。」とのこと!えぇ〜知らなかったー!

輸入品ゆえ、産地を選ばないという漆器。普通はお殿様が京都の上流文化を取り入れるため、おひざ元でつくらせるものだったのだとか。それで、加賀藩では輪島が、会津藩では会津の漆器がつくられていたのでしょう。しかし、それとは毛色が違うのがここ木曽平沢のおもしろいところ。

このあたりは、ちょうど尾張、甲斐、美濃が接する要衝で、尾張としては両国ににらみを利かせるために人を配置していく必要があった。そこでつくったのがここ平沢の町。ただ、山間の急斜面で農業は難しい。そこで、場所を選ばない漆を生業とさせたそう。なので、平沢の漆職人たちの先祖は忍者(?)なのだとか。(笑) ここで制作した漆器を人の集まる奈良井宿で売りさばくという構造だったようです。

また、つくり始めてから幸運にも、近くで漆下地に最適な珪質度土(細かい穴の多く吸収のよい土)が見つかったことも、平沢が現代まで漆器の町として続く要因となったようです。

店舗

職人町のメリット?
それにしても、同じエリアにこんなに漆屋さんが固まって、売れるのでしょうか?商売敵がところ狭しといるように見えるのですが…。聞いてみれば、漆の輸入は販売の単位が大きいし、購入後、機械で精製しなければならないものだそうで。そこで、組合で一つ漆工場をもち、輸入から精製を共同でやっているとのこと。

また、例えば今、周辺の小学校の給食の食器を全て漆器にするというプロジェクトをやっているそうですが、ゆくゆくは木曽郡全ての小中学校で導入するという計画もあり。そんな大量受注の際は、組合で受けて、みなで分担するのだそうです。そんな合理性もあるんですね。なので、「100人の職人がいても、手が足りないくらい、みんな忙しい。」のだそうです!

塗りの作業

仕事場見学
もう8時を回っていたと思いますが、お願いして、ちゃっかり塗り蔵までみせてもらいました。

こちらの写真は、お店のカウンター部分に漆を塗っているところ。お話を聞けば、本当に日本中飛び回られていて。日本一周している私たちより、よほど日本にお詳しい。例えばこういった、お店のカウンターや梁等の建具、浴槽、果てはお寺まで、漆を塗りにいくからだそうです。漆職人さんというと、工房でコツコツ作業をしているイメージでしたが、実際は外に出て行くことが案外多いのですね。これから上海での展示会の話もあるとかで、ワールドワイドな展開も期待されます。
仕事場1
これが、漆を乾かしている棚。乾かすといっても漆の場合、乾燥は大敵!漆は、言ってみれば木から抽出した油なので、水分の多い環境でよく乾くもので、この棚の下にも湿度を保つためのお水のバケツがありました。エアコンを入れると乾燥してしまうので、この時期は汗だくでの作業だそうです。大変だぁ。
乾燥中の棚
こちらは板に見えますが、漆を塗る細かくって固い毛の刷毛。これ、女性の髪の毛でつくるものなんですって!
漆の刷毛
こちらが素の状態の漆。透明なのかと思いきや、最初はこんなに濁っている。この粒子を揃えていくことで透明度をあげていくのだそうです。
漆
これに色粉を混ぜて着色。昔から使っていた色粉は現在、毒物として取り扱いが厳しくなり、入手が困難になってしまったものが多く、残念ながら伝統的な色は出せなくなってしまったそうです(特に赤)。いくら危険とはいえ、色粉で死んだ職人はいないどころか、職人さんはみなものすごい長生きだそうで、先日80歳を過ぎてなくなった方が「若くして亡くなって…」と弔われているといいます。伝統工芸師は、扱いのプロなわけで、規制を緩和すべきなのではないかと思いますが…。
色粉
職人さんからものを買うという贅沢
町をパッと見て何か感動するような建物がある訳でもなく、特徴である蔵までの通路も、表から見ただけではわからない。「漆屋さんばっかりだね」と、ともすれば、10分散歩して終わってしまいかねなかった地味な平沢の町。偶然にもとても親切な小林ご夫妻にお会いしできて、帰る頃には9時を回っていました。

バブル期は一日に数十万円もどっさり漆器を買っていくお客さんがいたけれど、現在は中国の工場で生産される安価な漆器も増え、個人のお客さんはめっきり減ってしまったそう(ちなみに、中国産の漆器の修理をする際、使用されている漆の成分を調べると、漆ではない「何か」が結構多く含まれているのだとか…)。
林さんと
確かに、漆は本物と偽物の区別がつきにくい。それは、本物を見ても思うこと。それに、まさか、こんなに手間のかかっている商品とは、今回職人さんの仕事を教えていただくまで知りませんでした。しかし、こうやって、つくり手の方のお話を聞き、使うたびに思い出しながら、生活の中で使い込んでいく。欠けてしまったら、修理して使いつなげていく関係。プレゼントするにも、ストーリーと想いをのせることができる。これが、大量生産では得られない、職人さんから直接商品を買う楽しみなのかもしれない。身の回りに、こんなプロダクトが増えていったらいいな。

漆会館が開いていれば、更に漆の歴史について学べたり、漆を精製している工場見学もできるそうです。奈良井宿を訪問することがあれば、職人町のおもしろさを感じに、是非、平沢にも足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。漆器との新しい関係を結びたかったら…春野屋さんがおすすめです^^

(ちなみに、こちらもJR中央線、木曽平沢駅が最寄で車ナシでもいけちゃいますよ!)

  • 春野屋
    長野県塩尻市大字木曽平沢1799
    TEL:0264-34-2131

 


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