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てる坊

DAY31 美しい村連合・長野県池田町 北アルプスを愛して止まない人々が住む、てるてる坊主の里


池田町は広義の「安曇野」に含まれる地域で、町名としてご存知の方は少ないかも。地元民によれば、安曇野のお洒落なイメージよりは、ハイキングを楽しんだり、山のスケッチを楽しむようなのんびりした町、という位置づけだそう。

池田町地図(出典:絵になる安曇野

最も美しい村認定理由
そんな池田町の美しい村ポイントは、ガイドブックによると「てるてる坊主のふるさと」と「北安曇の眺望と安曇野の田園風景」とのこと。「てるてる坊主、てる坊主〜、あ〜した天気にしておくれ〜」という、あの童謡の作詞者、浅原六郎さんのご出身地だそう。役所前には、「てるてる坊主の館」まである。休館だったので拝見できず、てるてる坊主とこの地の深い関わりを知ることはできなかった。が、しかし、てるてる坊主の里と唱ってしまっては、むしろイメージがストレートに伝わらなくなってしまうのではないかと心配になるほど、この町はとにかく北アルプスの眺望が素晴らしいんです!それに惚れ込んで移り住む画家もいたとか。

池田町地図

ビストロ・カモミール
池田町のマップは至ってシンプル。町の南北に国道が通っており(上のマップだと横に走っている太線)、主要なものはだいたいその通り沿いに揃っています。まずは、そのメインの国道の、ちょうど真ん中くらいにある道の駅へ。お腹も減っていたし、開店早々のビストロ・カモミールで早めのランチ。町の食材を使って、町のお母さん達が手づくりしているという、池田町のいちおしのお店。しかし…安曇野価格の割に、やっぱり素人仕事という感じは拭えない。メニュー表通りにメニューが出てこなかったり、メインの煮物がカピカピだったり…やや残念(大根はおいしかった!)。
ビストロカモミール

ハーブセンター
ビストロ・カモミール横のハーブセンター。安曇野のお洒落感をとってつけたようで、こちらも名前負け感あり。ハーブ売り場はこの建物のほんの一角に過ぎず、あとは普通の産直とお土産物屋さん。ハーブ感をより楽しむには、恐らく本家安曇野に行った方がよさそうです。

ハーブガーデン

池田町観光協会
眺望がよいのは町に入って一発でわかる。その他にどんな見所があるのだろう。と、観光協会に寄ってみました。

「この町はもともとの成り立ちとしては、やはり塩の道で栄えたのですか?」
「それも、あるとは思います…」
「というと、他には?」
「養蚕が盛んだったらしいです。女工さんが多かったので、お菓子屋さんが多いと聞いてます。」
「へー!なにか特産のお菓子とか、あるんですか?」
「特別そういうものはありませんが…」

やはり安曇野ブランドで自然とお客さんが流れてくるのでしょうか。観光アピールにはあまり積極的ではない模様。まぁ、無理矢理に女工さん饅頭なんかつくるよりはいいでしょうが。

カフェ風のいろ
とにかく暑い!長野なのに暑い!!好天に恵まれたのは幸いだったが、特にすることも見つからず、暑さにへばって、ひとまずカフェへ避難することに。観光協会からほど近い、カフェ風のいろへ。

ここが、なんとも素敵なカフェでした。目の前に広がる田園風景と北アルプスもだが、なんといっても素敵なのがオーナーの高崎さんご夫婦。眺望の素晴らしさに、東京からこの町に移り住むことを決めたそう。そんな高崎さんのおすすめは、水田に水が張られる時期、山々がそこに写り込む景色。「これにやられました。」と、後からわざわざ写真を送ってくださいました。
池田町風のいろGW
とっても親切で、お客さんひとりひとりとのコミュニケーションを欠かさず、長野周辺の見所なら雑誌を引っ張りだして、色々教えてくださいます。珈琲豆も自家焙煎の本格派。豆も週代わりで色々楽しめるようで、私は(懐かしの)東ティモールのフェアトレードのお豆で淹れていただきました。隣町産のブルーペリータルトも美味。
ブルーベリータルト
合鴨農法のおじいさん
やっと少し日が傾いてカフェから次なる目的地へ!と、走り始めた矢先のこと。なにやら道路下の田んぼから「ガァーガァー」とやかましい声が。車を引き返して田んぼに降りてみると、おじいさんが、ちょうど鴨の檻を閉めて、仕事を切り上げるところでした。「今日はちょっと用事があってな。早く上がろうと思っていたところなんだぁ。」

と、いいつつも、腰を下ろして色々話してくれる。合鴨農法を初めて20年。既に現役は退いており、現在は自分と家族のためだけに、安全で美味しい、完全無農薬の有機栽培玄米をつくられているのだとか。
合鴨農法のおっちゃん
一時流行った合鴨農法も、手間がかかるので、町で今でも続けているのは、おじいさん一人になってしまったそうです。毎年5月頃から小鴨を飼い、ちゃーんと田んぼから出ず、合図があれば小屋にはいるようにしつける。鴨はよく害虫を食べてくれ、鴨の糞は肥料となる。稲穂が垂れはじめる頃には、鴨が米を食べ始めてしまうため、処分して鴨鍋にして食べてしまうのだそう。
合鴨のおっちゃんと
おじいさんは、絶対に老人施設なんかには入りたくないらしい。働かないと、ボケる、という。自分の手で、自分の食べる物をつくって、健康でいる。機械を使えば効率がいいが、敢えて手をかけて身体を動かす。それでも一人でやるんじゃ寂しいから、合鴨農法を取り入れているんだとか。田舎の方と話をしていると、彼らは農業は単なる「労働」以上の何か、もっと根源的な価値を見いだしているのではないか、と思わされます。

合鴨のおっちゃん2

福源酒造
合鴨農法とおじいさんの人生哲学のレクチャーを受けていたために、すっかり遅くなってしまった。この町で宝暦8年(1758年)からお酒を造り続けているという、福源酒造に閉店間際に滑り込みセーフ。蔵の見学はできませんでしたが、酒蔵で仕込んだシードルという、りんごの産地、長野県ならではの商品をゲット!

福源酒造
相道寺の宮澤さん
昨日、木曽平沢での経験に味を占め、職人さんならちょっと遅くても工房を見せてくれるかも…と、この地域にいくつかある釜の中では、もっとも古いとされる相道寺焼きの窯元を訪問。

相道寺焼き3代目(?)宮澤さんが、シーンとした工房からぬっと登場。お茶まで出してくださり、色々お話を聞くことができました。だいたいこの手の工房ではお話を聞いたんだから買わねば…とプレッシャーがかかりますが、宮澤さんは会話自体を楽しんでくださるタイプ。とても気軽に立ち寄れます。この土地にあった相道寺というお寺の名をとった焼き物で、灰を混ぜて出す、この褐色の釉薬が特徴とのこと。
相道寺焼
宮澤さんが作家として個展を開くというスタイルではなく、現在の相道寺焼きはお客様の体験を中心としている様子。大きな蔵で、学校や子供会等、グループ単位での受け入れができるようになっている。
相道寺焼2
画家の山下大五郎さん(知りませんでしたけど)も、池田町に滞在するときは、必ず宮澤家に宿泊していったそうな。そんな山下さんが、画家として構図をとるのに最も適しているとしたベスト・ビューポイントが、ちょっと先にあると聞いて、行ってみた。夕日はとっくに沈んでしまっていて、辛うじて残っている空の明かりでパシャリ。確かに綺麗だ。
北アルプスの眺望

みんな大好き北アルプス
この町の人に限らず、北アルプス周辺の町の人は、誰でもこだわりのマイ・ベスト・ビューポイントや、お気に入りの山を持っているようだ。「あの町に行くと、あの山の形がいいから、あの町の人はこの山が好き。」というような話を各所で聞いた。それも納得。こんなに美しい山が日常の中にあったら、ついつい眺めてしまうだろう。

しかし、度を超えていると思ったのは、この雪の形にまで名前を付けているところ!雪渓の形には、それぞれの伝説まであったりするらしい。しかしとにかく、このまるでかこってある影、絶対じいさんにはみえないでしょう。羊飼いが毎晩星を眺めてつくった星座レベルの無理矢理感が漂う。まぁ、それほどまでに生活に密着しているものなのだということはよくわかりました。
北アルプスの雪渓

こまどめの湯
「池田町に来たら信州サーモンを食べなきゃ!」と宮澤さんにおすすめされるも、お店は定休…。話している間に暗くなってしまって、観光スポットの大カエデもあづみのクラフトパークも見れず仕舞い…。代わりに、カフェの高崎さんから聞いた、となり町の葛温泉近くのこまどめの湯に車を走らせ、こちらもぎりぎり8時半に到着。星空満点の露天風呂は湯加減もよく、ゆったり。加温・加水・消毒なしの、源泉掛け流しでいいお湯でした。

こまどめの湯

まとめ
池田町はまちの建物等は見るのも忘れてしまったくらい、なんということもないのだけれど、とにかく田園と北アルプスの美しい眺望が記憶に残る町。思いのほか地元の方とお話することができ、てるてる坊主以外に、もっと人々の暮らしに根付いた何か、アピールできるものがあるような気がした。そこを丁寧に見つけ、安曇野ブランドに迎合することなく、ハーブやてるてる坊主にたよらず、町のもっと自然で、素朴なアイデンティティを前面にだしていくことができそうな町だと思いました(女工さんがいた歴史が、今の町にどんな影響を与えてるのかとか、唯一残っている繭蔵のあたりだとか。きっと北アルプスは眺望だけじゃなく、農業等地域の生活にも影響を与えているだろうし。掘り起こしてみたらなにかありそう!)

 

※営業時間・定休日については直接お問い合わせいただくことをおすすめします!


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