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本川市長と

DAY35-3 富山県氷見市 旅の醍醐味はハプニング…にしても、はちゃめちゃなハプニングに見舞われた日本初・体育館リノベーション市庁舎視察


この4月末の退職前、私は銀行の調査部門で、地方自治体の公共施設関係の調査を担当していた。高度経済成長期に、一気に整備された日本のハコモノ・インフラが、耐用年数40年〜60年とすると、これから一気に建替え・更新時期を迎える。労働人口の増加・GDPの記録的成長とともに、右肩上がりの税収が続いていたときはよかったけれど、これから、そのお金をどうやって賄うのか。多くの自治体で、回答は先延ばしになったままだ。行政を責めても、もうお金は戻ってこない。納税者の私たちが、「これから」を考えねば…

更新投資額試算(出典:国土交通白書

その1つの明確な回答は「新たに建てない」ということだろう。馬鹿にしているのかと思うほど、簡単な答えだけれど、実行するのは難しい。例えば、「新たに建てない」方針だけれど、市役所がボロボロになっている。あなたなら、どうするだろうか?

氷見市庁舎の場合

氷見市(人口約5万人)は、その問いに対し、ビックリする回答を出した。なんと、「廃校になった学校の体育館を市役所として使う」という答えだ。美しい村でも、重伝建でもないけれど、一度、その庁舎を見てみたかった。少子化が進む中、年に何百という廃校がでている。それが市役所に生まれ変わることができれば、今後多くの自治体で適用できるはずだからだ。

氷見市役所外観端的に感想をいうと、想像以上だった。お世辞ではなく、下手な新築の庁舎より、よほどいい。まず入って左手に総合受付。ワンストップサービスということなので、とりあえず、話しかけちゃえ。

「あのぉ〜、この庁舎、体育館だったって聞いたんですけど…」ノーアポの私たち。
「庁舎の見学ですね。いつも、14時からなら見学ツアーがあるんですけどねぇ…遠くからお越しですか?」
「はぁ…遠いというか、日本一周しているところで….」
「そうですかぁ!せっかくですので、ちょっと案内ができる者がいないか、探してみます。ちょっとお待ちください。」受付の方もかしこまった感じではなく、親しみやすい。氷見市役所受付

リノベ庁舎概要
16時を過ぎているのに、すぐに企画振興部の女性が降りてきてくださいました。まず、概要説明。以前の庁舎は老朽化が進み、建替えが急務だった。しかし、津波の想定浸水地域に指定され、同じ場所での建替えは困難。そこで、都市計画課の職員から、廃校となっていた有磯高校の体育館を使っては、という案が出され、その他6案と比較検討した末、採用された。

耐震化関係の補助金、及び木質化の補助を受け、約19億円の総工事費のうち、市の負担は8億円。7月に隣の射水市(人口約9.2万人)の庁舎の総工事費が59億円で落札されたという報道があったから、比べても相当にコストを抑えられている。

旧有磯高校

説明用にきちんとパネルも用意してある。上の写真が旧有磯高校の空撮。とても珍しいことに、この学校には体育館が2つ、しかも平成に入ってから整備されたものがあった。その体育館2つと、教室棟の一番左の部分だけを残し、取り壊し。駐車場とした。

下が現在の姿(庁内案内図がwebで見つからず、下が切れた写真ですみません)。このカラーはそのまま業務内容を表している。オレンジは子育て関係、黄色は介護関係、という具合い。役所の都合で縦割りにするのではなく、多くくりの業務ごと配置することで、市民から見たわかりやすさを重視している。

氷見市庁内案内

旧教室棟
体育館2棟と違い、教室棟については、極力現状を残したテイストで会議室として使われている。古い階段や、水道等も残っていて、市民からは「懐かしい」と好評のようだ。取り外した黒板も写真左側、木枠のスタンド黒板にかわいく生まれ変わって活用。
氷見市庁舎教室棟

体育館(L)

まず、大きい方の体育館。ここで度肝を抜かれました。なんですか、この天井!また無駄な装飾を…と思ったら、これは光熱費節約のための工夫。体育館は屋根が高過ぎて、冷暖房がなかなか効かないため、幕を下ろして対処したもの。東京ドームの素材で、港のある氷見市にちなみ、船底をイメージしたデザインだそうです!(個人的には、船のマストの方が、順風満帆って感じでいいような気がしますが…笑)

体育館A2Fそして、こちらもまた、無駄にスペースをくうホワイトボードがズラズラと…と思ったら、こちらは大きなスペースをとる空調設備をお洒落に囲ってちょっとしたプレゼンや掲示物ができるホワイトボードにしてしまったもの!

情報公開スペース地味に、意志を感じるスペースがこちら。ここはもっとも日当りがいいため、当初市長室になる予定だった。が、ディスカッションを重ね、情報公開スペースになったそう。もっとも日の当たるところを、情報公開スペースに。隠し事はしません、と、聞こえました。

キャンプこちらは自由に議論に火がつくようにと設けられた「キャンプ」スペース。議論も透明化。

ワークショップワゴンこの庁舎は、アイディア段階から市民の意見を取り入れて実現したもの。その時から使っていたファシリテーショングッズをここでも活用しているそうです。この他にも、旧庁舎の使える機材はリユースしているとのこと。

 

市長室こちらが、市長室(写真だとこっちのが明るく写ってしまいました…)。こちらも透明性が高い行政のイメージ。というか、透明です。ちなみに、市長が忍者ハットリ君ファンなわけではなく(好きかもしれないけど)氷見市はハットリ君の作者 藤子不二雄Aさんの出身地。

体育館(S)
最後は小さい方の体育館。2階は議場。傍聴席と議員席の段差が殆どなく、距離が近い。

氷見市議場

下の階は地域共同スペースが3室。ocean、forest、dreamは雰囲気が異なり、その時のディスカッション内容やフェ—ズに合わせて使い分けできる。forestでワークショップ実施中だった。ポストイットをホワイトボードにペタペタ張り、参加者も楽しそう(職員なのか、市民なのかもわからないフランクさ)。わくわくした感じが伝わってくる。

この型破りな庁舎の企画やデザインのは、どなたにお願いしたのか伺ったところ、「殆どは市長のアイディアです。」とのこと。本川市長は、もとプロのファシリテーターでもあり、この氷見庁舎は、市民に情報を提供するだけでなく、地域の人が課題を持ち込み、話し合える、日本初のフューチャーセンターとしての機能が付加された庁舎でもあるのだ。

地域恊働スペース

本川市長との遭遇
見学を終え、アンケート記入をしていると、気さくな感じの職員さんが、ニコニコしながら外出から戻り、挨拶をしてくださる。と、思ったらなんと、本川市長でした!!お忙しいだろうに、私たちの旅の話、前の仕事の話等、よく聞いてくださり、「それなら!××さん…!」と、いいながら、その都度、フロアから関心の近い職員の方を引っ張り出しては、ご紹介くださいました。すごいフットワークの軽さ…!なぜ、日本では前例のない(世界でもないかも)、こんなにかっこいい体育館庁舎ができたのか。ここへきて、謎、氷解。
本川市長と

職員さんのBBQへ参戦!
嬉しいハプニングは続く。本川市長は、よる予定があるのだけれど…と、総務部長さんが、18時から、やる気のある職員を集めたBBQをやるから、と誘ってくださったのだ。なんとも、思わぬ展開。明日、輪島に行くこと以外、何も決まっていない。こういう時は流れに身を任せるのが一番!と、ちゃっかりBBQにまで、仲間に入れてもらったのでした。

氷見市BBQBBQでは、東京や大阪から氷見市に移住してきた中途採用の職員さんも多い。先鋭隊なので、特にすごい人達ばかりなんだと思いますが、夢を語る語る!人と人がこんなに近く、早く、つながっていける組織。ちら見しようと思ってのぞいた市庁舎でしたが、そんなことではすまない、勢いに巻き込まれて、素晴らしい体験をさせていただきました。

 

おまけ

漁師さんが使うので朝は早くから、夜遅くまで開いているという番屋で寝る前に汗を流し。さすがに、源泉かけ流しではありませんでしたが、炭酸風呂というシュワシュワしているお風呂がよかった。

氷見市番屋

そして翌朝。本川市長から入手した情報を頼りに、市場の朝飯を食べに!本当は競りも観れるのですが、寝坊して、競りがちょうど終わったところでした…
氷見市場漁師さんたちの食堂、海寳(かいほう)へ!たっぷりの厚切りのお刺身がおいしい〜!しかし、ここで印象的だったのは、食べたことのない上品さのあら汁。「かぶす汁」といって、とれたての魚のぶつ切りを煮込んでつくる味噌汁だそう。カワハギ、ハマチ、カマス等、使う魚が太平洋側と違うからなのか、いや、それだけの違いでは決してなさそうなほど、美味しい。むしろかぶす定食を頼めばよかったとすら思えてくる美味しさ。

かぶす汁氷見の海岸線に並ぶ民家。これまでまわった数少ない漁師町は、潮風でサビサビになったバラックみたいだった。でも、ここのお家は海に向かって、ずらっと、黒瓦が光る。小さくても、大きくても、壁がトタンでも、なんでも。瓦が統一されるだけでも、景観に何となく統一感がでていい。瓦は住んでいる人からは見えないけど、外から見たら、家の印象の1/3くらいを決めるんじゃないかな…などと、お腹いっぱいでまわらない頭で考えつつ、次なる目的地、輪島へ出発。短かったけれど、相当濃い時間をありがとうございました!

氷見の黒瓦


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