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原山地区

DAY45 美しい村連合・京都府和束町1 桃源郷ならぬ”茶源郷”の美しい景観はボトムアップ&チームワークの賜物だった


京都府和束町(わづか)。そもそもこの字を「わづか」と読めなかったし、これまでに聞いたこともなかった。ただ、静岡出身 お茶好きの私としては、やや親近感を感じ楽しみ…くらいの軽い気持ちで訪問したこの町。到着してビックリ。山がちな土地に町と茶畑が入り交じる、ちょっと不思議な光景。

「日本で最も美しい村連合」の村々をこれまで訪問してきて、人に美しいポイントを聞かずとも、村に入っただけで「あ、これはすごいな」と思える景観をもつ町は、実際のところ非常に少ない。和束町はその数少ない、町、丸ごとで勝負してくる村だった。

和束町

まずは、「和束茶カフェ」へ
この町にきたら、とりあえずここへ。和束茶カフェは和束を楽しむ拠点施設。お茶を飲んだり、和束で生産されている様々な種類のお茶を買い求めることができ、レンタサイクルも借りることができる。

和束茶カフェでは吉田さんが丁寧にご対応くださいました。吉田さんは、一旦東京で働いたものの、和束の温かい人と人との距離感が懐かしくて、帰ってこられたのだとか。今は国際色豊かなメンバーと、古民家シェアハウスでの生活を満喫されているそうです。
和束カフェ
もう一人、忙しい中ご対応くださったのが、コミュニティデザイナーの山下さん。山下さんも大学卒業後、一定期間都市部で働いた後に、和束に戻ってこられたUターン組(しかも兄弟揃って!)。雇用促進協議会に所属し、ワーキングホリデーや、マルシェ等のイベント、茶農家の援農斡旋事業等、色々と「コト」を仕掛け、発信している方です。半日かけて、和束町を案内していただきました。

山下さんと

役所訪問
まず山下さんと向かったのが、和束町役場。「美しい村」担当企画部署の皆様でお迎えくださいました!和束町の美しい村連合加盟の立役者、馬場さんから、和束町のまちづくりのドラマチックな歴史を紐解いていただいた。全てまとめたら一冊の本が書けそうだが、まとめると…

和束町は非常に珍しく、町長の意向というよりは、住民によるボトムアップで加盟することになったそう。その布石となったのが、京都府の景観資産登録第一号認定。和束は今のところは、まだこの景観が保てているが、茶農家の高齢化や人口減少の波を受け、耕作放棄地が増え、結果として土地を売却し、景観が変わってしまうかもしれない。

このことに危機感をもった町の有志が、茶農家の方と一緒に和束町の今後を考える「NPO法人わづか有機栽培茶業研究会」を立ち上げたのが始まり。かれこれ10年以上も前になるそうだ。(未だにテーマを変えてこの研究会メンバーで様々な課題に取り組んでいる模様。)

和束マップ<出店:和束町HP より実用的な観光マップはこちら>

一般的に役所は、住民から文句を言われることはやりたがらない。景観条例等の採択は、その後の開発に制限がかかる上、手続きの煩雑化を招くため、住民の反対を招くと考えられ、役所内では支持されなかった。そこで、馬場さんら役所の有志がプライベートの時間を使って、地元の方々とともに考え、意見をまとめていった。公的な役職という枠を超えて、地域のために働く役場職員さんがいるということが、和束の美しい景観を守っている秘訣かもしれない。

美しい村連合加盟には、地元の人にとってはあまりに「当たり前」なこの風景を、住民自身が誇りに思えるようにと、加盟したそうだ。加盟の為に奔走した馬場さんですら、和束のいいところやオリジナリティを外から教えられることが多いという。最後に、とっておきビューポイント、役場の屋上で釜塚の茶畑をバックにみなさんと撮影!

役所屋上にて

腹ごしらえ@茶房・竹の子
茶畑巡りの前に、腹ごしらえ。和束にはこれと言ってお食事どころがないのがネックなんですが…と、案内された地元の食堂(正式には茶房)竹の子。私は茶そばを注文。たまたまだろうか、外国人のお客さんもいらっしゃった。京都観光のついでだろうか。

あるいは、おぶぶ茶苑つながりか?おぶぶ茶苑とは、日本茶のインターネット直販会社。「荒茶」(=大きさや部位によって選り分ける前の、茶葉丸ごとの状態)の状態で直送してくれるという、珍しい販売方法をとっている。また、毎年各国に茶文化を広めるためのお茶ツアーを企画し、英語サイトで茶販売サイトも運営。海外からのインターンの受け入れも行っており、「京都」に惹かれた外国人がやってくることが多いようだ(が、実際は京都市内からは車で1時間以上離れている)。京都よりこっちの方が気に入って移住してしまう人もいるらしい。

ローカルから直接グローバル市場へと打って出て頑張っている企業、応援したくなりますね。(荒茶、飲みたかった…)茶そば

茶源郷巡り
山下さんの車にのせてもらい、午後は茶畑巡り。とっても私たちの大きな車では通れない細い道、坂。そして地図があってもたどり着くことは難しかったであろう、ぐねぐね道。山下さんは「子供の頃の遊び場だったから、だいたいわかります」と、すいすい登って行く。

和束は前述した通り、京都府内で、景観資産として真っ先に指定された。その指定スポットがいくつかあるのだけれど、町中どころか山の裏側にへばりつく茶畑まで指定されているため、車で行くには細道だし、自転車で行くには坂が急すぎるし、かなり手強い。

アウトドア・ウェディング会場の茶畑
こちらは、山下さんが「ここで結婚式をやる人がでてほしい!」という絶景の茶畑。ちなみに、去年、実査に「茶畑コン」を開催し、カップルの成就率(?)はかなり高かった模様。その後に期待したいところです。
原山地区
ここは鎌倉時代に初めて和束にお茶が植えられたという、原山地区(養治)の茶畑。読売新聞の記者さんが、和束を取材したときに見つけたスポットなんだとか!そんな話を聞くと、まだ見ぬビューポイントが山の裏に隠れているのではないかと思えてくる。

和束町の風景の特徴は、とにかく、茶畑と暮らしが分離していないところ。町の中にぽこぽこある丘も、町を囲んでいる山の斜面も、可能な限り茶畑になっている。
職住混在な和束
それにしれも、なぜ和束でお茶だったのか。馬場さんによると、山がちで米もとれにくいこの土地で、気候というよりは、近くに京都という茶の市場があるメリットを活かして、栽培が始まった。単位面積辺りの売り上げが高い茶の栽培を始めた先人達は非常に戦略的だったと思う、とのこと。和束では宇治茶ブランドの約4割程度を生産しているそうです。
かぶせ
トラックが運んでいる、この黒いカバーは、日光を遮断するもの。和束茶はこのカバーをかけて甘さを持たせた「かぶせ茶」の名産地。

その他の見所
ついでに、和束天満宮、和束の樹齢1300年を超えるという大杉(八坂神社)もお散歩。ここもなかなか車で入って行くには細い道で苦戦。和束町は奈良から京都へ抜ける人気のサイクリングロードなのか、自転車にスイスイ抜かされる。田んぼと茶畑の中を疾走するのはいかにも気持ち良さそう。ところどころ激しい坂があるけれど、天気のいい日の和束観光はサイクリングがおすすめかも。

天満宮

和束の大杉

田んぼの中に、古いような新しいような、とんがり屋根を発見。こちらは、会員制古民家のYou And Vilage(ゆうあんビレッジ)。築150年の古民家を材料を再利用しつつ、地元の宮大工さんが復活させたものだそうで、イベントやツアー、スクールの開催、宿泊の受け入れをしています。

ゆうあんビレッジ

再び、和束カフェ
茶畑ツアーを終え、和束カフェで気になっていた茶団子をいただく。焙じ茶・煎茶・抹茶の3種類がひと串に。もちもちしていて、甘すぎず、とっても美味しいです。おすすめ!
茶団子カフェのメニューの一つにあった「天空カフェ」。なんだろうと思っていると、ちょうど企画課の山中課長が和束カフェに登場。天空カフェに台風の影響をチェックしにいくというので、同行させてもらった。非常にいい眺めで、ここでお茶が飲めたらすごく素敵!ではあるものの、結構登るので、それまでにお茶がこぼれないか心配である。
天空カフェ
和束のヒットメーカー荒木さん
帰りがけに、山中さんにご紹介いただいたのが、地元のご婦人達が構成する、恋茶グループ代表であり、地場産品のヒットメーカーの荒木さん!荒木さん発案の「お茶の佃煮」は空前のヒットで和束カフェに行列ができたそうな(ただし、非常に良心的な価格設定をしてしまったため、利益は殆どなかったそうな…)!イベントで東京にもブースを構えた経験有り。現在も新しい商品開発に力をいれているとのこと。おばちゃんたちのパワーによって支えられている恋茶グループ、目下の課題は若手の育成とのことでした。

荒木さん山中さんと

まとめ
お茶の栽培という先人の営みが創りだした風景が、産業としても継続しつつ、地元の方々の努力によって美しく保たれていることは素晴らしいことだと思う。

また、和束町は、ボトムアップで美しい村に加盟したことが象徴しているように、まちづくりを担う多くの方々が有機的につながっているように見えた。こんなに短時間で、多くの人に会うことができ、見どころを案内していただき、お話を聞けるという対応の素早さと丁寧さは、茶畑の景観と同様、和束の特筆すべき点だと思う。これからも、この町の温かさや、和束の風景や文化を守る積極的な姿勢をもって、面白いことが色々起こっていくのではないか、と次回の訪問が楽しみになる「美しい村」だった。

マンホールもお茶


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