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はがき完成

DAY48-2 美しい村連合・奈良県吉野町 桜だけじゃない!国栖(くず)集落にてディープ吉野を堪能する旅


奈良県吉野町(よしのちょう)。「吉野の里」、と聞けば、行ったことのなかった私でも、なんとなく万葉のあはれの世界を想起する。

吉野という地域は、奈良・平安の時代より、都からちょっと遠出して景色を楽しみむ貴族達のワン・デイ・トリップ先だったそうだ。そういう意味では当時から名を馳せていた、生粋の美しい村といえる。さて、そんな美しい町吉野町の現在や、いかに。

吉野川<大雨後の濁流にも関わらずパラソルがひしめく吉野川。海が遠いから仕方ないのか...>

美しい村認定ポイント1:桜
吉野町の美しい村認定理由のひとつは、当然のこと、桜に染まる吉野山。ただ、この季節では見ることはできない。さらに、古い町なだけに、道がものすごく細く、入り組んでおり、かなりの運転レベルを要する。ここまで、相当な秘境を走り抜いてきた我々だが、ここへきて初めて車を擦ってしまったのだった…。というわけで、桜を目にするには多くの犠牲を払うことになりかねない。

吉野桜<出典:吉野山観光協会 確かに美しい…>

美しい村認定ポイント2:国栖の里
しかし、もう一つの認定理由が非常に興味深い。「伝統の技が生きる国栖の里」とある。吉野町には桜で有名な下・中・上千本以外にも各集落に歴史が残る。その中でも特徴的なのがこの国栖という集落だ。吉野のもう一つの顔について知る人は少ない。今回は、役所の山本さんにお話を伺った上、更に地域おこし協力隊の吉村さんがまるまる半日アテンドをしてくださり、一般的に知られている観光地吉野とはひと味ちがった魅力を教えてもらった。

町役場にて<山本さん(左)と吉村さん(右)>

吉野さんたちについて
ちょっと話はそれるが、吉村さんは、なんと珍しくご夫婦ともに協力隊員。旦那様の耕治さんは、吉野町の情報発信強化のため、観光協会整備に奔走され、奥様の寿代さんは国栖集落がご担当なのだとか。ちなみに観光協会は大和上市(やまとかみいち)駅前。扉を開けた瞬間、吉野杉がふわ〜っと香るお部屋で、お酒や木炭、割り箸や和紙などの吉野グッズが購入できる。お土産はこちらで!
観光協会
お二人はお住まいの集落でお家をいちからつくっていたり、小水力発電に取り組む等、一人ではできなかったかもしれない課題を、ご夫婦で楽しみながら、助け合いながらクリアしている印象を受けた。

観光協会プロダクト

植さんとこで紙漉き体験
さて、さっそく吉村さんのあとをついて国栖集落へ。国栖は紙漉きの里といわれ、和紙職人の住む集落で、最盛期には約60軒近く工房があったそうな。吉野川とそれに注ぎ込む水が豊富なこと、また川に向かって緩やかな南向き斜面になっており天日で紙を乾かすのに適していたこと、また奈良・京都に近く、公家や寺社等、紙の需要が高い地域に位置していたため、和紙づくりが盛んだったそう。

和紙の型枠<吉野和紙は掛け軸の裏紙に使われる固めの紙が主。型枠も掛け軸型>

和紙職人の植さんのところで実際に紙漉き体験をさせてもらう。植さんはもともと職人のお家に生まれたわけではない。大阪の商売人をしていたが、結婚を期に地元へUターンし、職人さんの道へ。紙の原料となる楮(こうぞ)を育てるところから、紙を煮て、たたいて、水にさらして…現在では機械に頼れる工程も増えたが、常に新しいものづくりに挑戦している植さんは、しばしば手間ひまかけて、1から手づくり。「植さんはいつもなにかしら試してますよね~」と吉村さんが笑う。植さんも満面の笑み。笑顔が本当に素敵でこちらも何かうれしくなる。
紙漉き伝統産業を地元が学ぶという取り組みとして、吉野町の小学生は楮を植えて育てるところから始まり、卒業する時には、自分の手でその楮から紙を透き、卒業証書を手づくりするという取り組みをしているそう。そういう取り組み、素敵!
檜の皮
これは檜(ひのき)の皮をアルカリ処理して柔らかくしたもの。楮よりも繊維が堅く、長いので、やや苦戦したそうだが、間伐材の皮をなんとか使えたら…と試行錯誤中という。植さんは、相談があればなんでもとりあえずやってみる精神の持ち主だ。私もなんかあったら植さんに頼もう!

 はがき完成

完成。ファンドレイジングにご協力くださった方々に、これでメッセージ書きま〜す♪

国栖一望
国栖のビューポイントに連れて行ってもらった。手のかかる和紙の天日干しをする工房は少なくなったが、冬になると、今でもここから和紙を貼った板が各工房の庭に並ぶ様子が望めるとのこと。住まいと仕事場、職と暮らしが一体化した、面白い風景がここにもありました。
国栖地区一望
福西さん訪問
古来の伝統技法を守り、ほとんどの工程を手作業でこなすことで有名な、福西さんのお宅へお邪魔した。工房内には草木染めなど、色とりどりの和紙がならぶ。福西家の和紙は、国宝の修復に使われており、海外の美術館でも 使われているそう!現在は6代目の福西正行さんが、お父様の後を継いでいらっしゃる。あいにくご不在だったが、奥様がお茶を入れてくださった。

福西家の前で<奥谷さん(左)、福西さんの奥様(中)、吉村さん(右)>

なんと、奥様はすぐ下のお家のご出身で「小さな頃から常に水のちょろちょろ流れる音が生活にあったけど、嫁ぐまで福西さんが何をやってるのかよう知らんかった」という。国栖では紙漉きのために、各工房に山水が引かれていて、耳を澄ませば、確かにどこからともなく水の音がしてくる。この音が落ち着くんだと、福西さんは言う。新幹線の音と共に育った私としてはうらやましいばかり。

福西家<右手にあるのが山水を貯めておく水槽。冬はこのお庭が紙干しの板でいっぱいになるそう>

ご近所の奥谷さんは、吉野製箸工業協同組合の事務局員さん。林業が盛んだったこの町で、製材業が下火の中、割箸業に転換してきた歴史がある。国産の割箸の中での吉野割箸シェアは約9割。吉野の割り箸で食べるとご飯がおいしくなるらしい。非常に丁寧に面取りしてあり、口当たりがよいからだという。

ここで少しPRのお手伝いをしておくと、資源を大切に、ということでMY箸プロジェクトが盛んだが、国産の割り箸は間伐材からつくられているもの。間伐材が活用されれば、その利益を森林のメンテナンスに回すことができるという意味で、割り箸はむしろ消費してほしいものなのだという。是非、臆せず国産割り箸をつかってください!

割り箸の材料<製材後のかまぼこ状の板が、町の至る所につんである。製材所も多く歩いているとふと木が香る。>

国栖奏(くずそう)
国栖集落は紙漉きだけでなく、古来より伝わる伝統行事の「国栖奏」でも知られている。応神天皇が吉野離宮にいらっしゃったときに舞を舞ったのが始まりとのこと。現在でも旧正月14日に12人の奏者が衣装を着て浄見原神社まで歩き、舞を奉納するものだ。山菜や魚とあわせ、生きたアカガエルが供されるという!!

国栖奏<出典:ディープな吉野の歩き方>

浄見原神社は非常に簡素なもの。当日はここが舞台になるそうだ。集落に代々伝わるお祭りとして、現在では保存会が保存に取り組んでいる。

国栖奏

犬のいない集落?!
国栖地区のネタは尽きない。ここには犬が一匹もいない集落が存在するらしい。窪垣内集落といって、以前大海人皇子(後の天武天皇)が的に追われてこの地に来た際、老夫婦が皇子を船の下にかくまった。が、敵方の犬が船の周りの臭いをかぎ始めたため、翁が犬を殺してしまったというのだ。それ以降、ここで犬を飼うと火事や病気が起こるといわれ、未だに犬が一匹もいないそう。吉野の里は歴史がありすぎて、伝説と歴史の狭間くらいにある気がしてくる。

犬のいない集落

窪垣内地区<窪垣内地区の神社には狛犬すらいない...笑>

たべもの関係
鮎が自慢という清流、吉野川。ランチには山本さんおすすめの、鯖寿司と鮎の「せごし」をいただきました。「せごし」とは鮎を下ろさず丸ごと、骨付きでスライスしたお刺身。鮎は草食の魚なので、ほんのりスイカの香りがすると、岐阜の馬瀬で聞いたものの、感じられず…だったが、確かにこの鮎はスイカの香りが、するっ!!ちょっと感動するので、機会があれば是非みなさんおチェックしてください。
せごし

鮎寿司
その他にも吉野名物は色々ある。例えば吉野葛。風邪で体調を壊したらまず葛湯を飲むという!葛うどんなるちゅるちゅるのものもあるらしい。おいしそうだ。それからワールドカップで一役人気となった八咫烏(やたがらす)をはじめ酒造が3つ。そして、小麦餅…というけれど、今回は国栖の里をenjoyし過ぎて、何一つ試すことができなかった…。無念。

まとめ
役所の山本さんに定番の質問「この町はそもそもはどのような成り立ちなんでしょうか」と質問したところ、「天智天皇の時代に…」との回答。一瞬戸惑った。これまで色々重伝建を巡り、鎌倉・江戸辺りからは歴史が身近に感じられ始めていたが、奈良はもう一歩も二歩も歴史が深いのだ。

日本全国を歩いていると、その土地の歴史が町の空気に染み付いているような気がしてくる。吉野は濃厚に、何と表現していいかわからない、そういうどろっとしたものを感じた場所だった。桜の魅了以外にも掘れば掘るほど深い吉野。もっと多くの人がそれに触れ楽しめるようになるといいなぁ。

国栖地区遠景


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