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役所訪問

DAY57 美しい村連合・鳥取県智頭町:百人委員会、森のようちえん、そして麻解禁!? トップダウン&ボトムアップが両立した町を目指して


「百人委員会」や「森のようちえん」等、まちづくり関係で耳にしたことがあった智頭町。鳥取の山奥で、画期的なまちづくりのを繰り広げているという町は、いったいどんなところなのか?実際に足を運んでみるのを楽しみにしていた。
智頭宿町並み

智頭宿
まず、智頭といったら智頭宿が挙げられるようだ。智頭往来という、古くは奈良時代頃から鳥取と姫路を結んでいた道がある。江戸時代に入って鳥取藩の参勤交代の道となり、ここ、智頭はその宿場町として栄えた。

智頭往来(出典:夢街道ルネサンス 智頭往来は④に当たる)

その際、藩主が宿泊する本陣として使われていた石谷家住宅が、現在でも古い町並みのアイコン的な存在となっている。町をうろついていた私たちは、非常に運良く、町のボランティアガイドの福本さんと道ばたでお会いすることができ、せっかくだからと、石谷家住宅内を案内していただいた。
石谷家住宅
大庄屋だったという石谷家は、部屋数40以上というスケールと、美しい日本庭園が印象的。福本さんは、なんと子供の頃この石谷家住宅に住まわれていた経験があるという、超希少な人物!住人しか気づかないような小ネタ(隠しスイッチの位置など!笑)満載の充実したお話が聞け、普通に見るより楽しさ10倍くらいにはなりそうだ。ぜひ訪問前に連絡を。
福本さんと福本さんらが所属する町づくり協議会の方々で、石谷家住宅でのコンサートや雛祭り等、色々企画もされているそうなので、それを狙って行くのも手だ。
石谷家お庭

塩屋出店
町づくり協議会の拠点となっているのがこちらの施設。塩屋出店は石谷家の分家で、町が買い取り、以前は料亭として活用されていたこともあるようだ。庭には洋館が建っており、現在で智頭町出身の映画監督である「西河克己映画記念館」として、映画グッズが所狭しと並んでいる。

塩屋出店ご案内くださった福本さんが、以前、映画関係のお仕事をされていたこともあり、熱心に説明をしてくださるが、見たことのない作品ばかり…。古い映画ファンには、たぶんたまらないお宝がある。
塩屋出店映画
杉玉
智頭宿を歩き始めると、まず誰もが気になる杉玉であろう。普通は酒蔵や酒屋さんの店先にあるものだが、智頭町では大小色々な杉玉が各家の玄関に下がっている。特別な風習があるのかとお聞きすると、10年程前に、これも町づくりの一環として、名産の智頭杉を活用し、町に統一感を出すために始まったとりくみらしい。事前に予約があれば、智頭宿内に杉玉づくり体験ができる場所もある。一時はTVにもよく取り上げられ、全国から予約が殺到したらしいが、今残っているものは、茶色くすすけてしまっているものが多くなっていた。
杉玉
諏訪酒造
石谷家住宅から徒歩1分もかからないところに、諏訪酒造がある。もともとは旅館業を営んでいたが、江戸後期(1859年)に酒造へ。その際、酒造裏の諏訪神社からその名をとったそうだ。「天のない酒造り」(=これで完成、十分ということはない、という意味)がモットーというこの酒蔵。この言葉は、鳴川さんという諏訪酒造の名杜氏さんの言葉で、漫画「夏子の酒」でも取り上げられたのだとか。鳥取の美味しいお米と、千代川(せんだいがわ)の超軟水の伏流水で仕込んだお酒です。
諏訪酒造
みたき園
美しい村連合・智頭町のもうひとつの選定ポイントは葦津渓谷。森林セラピーや軽いトレッキングコース等あるようだが、今回は歩いている時間もなかったので、今回はみたき園にお邪魔してそのエッセンスだけ楽しむことに。
みたき園みたき園はこんなところに!?と思う程、森の中にある。木々の間に10棟程、築120年を超える茅葺きの小屋がポツポツと隠れていて、森の中の小さないち集落のよう。私たちは小川に面したウッドデッキ風のお座敷で山菜ランチをいただいた。みたき園

お盆に乗ったご馳走が、森の小径を通って運ばれてくる。ピクニックのような非日常感に、なんだかわくわくする。デザートにちょっとお昼寝してしまったくらい、気持ちのいい場所でした。
みたき園歩いていると森の中に素敵なカフェも発見。お食事ではなくっても、みたぎ園をお散歩して、ここでお団子を食べながら一休み、なんていうのもいいかも。

板井原集落
明治期は養蚕が盛んに行われていたが、集落と町の間の峠にトンネルが貫通したことで、急速に過疎化が進み、一時は住民が一人となってしまったそうだ。ただ、開発からは取り残されたために、江戸時代からの地割りが残り、古い集落の雰囲気がそのまま残っている。

板井原集落町では、なんとその集落のうちの古民家を一棟買い取り、大阪からオーナーをスカウトしてきて、カフェをオープン。今は代替わりして、三代目の「歩とり」というカフェとなっている。家々には、脇を流れる小川に降りる石段の跡がある。生活用水として使われてきたのだろう。そんな小川のほとりにあるから、そう名前がついたのかな。
ほとり

最近ワンコも仲間に加わったそう。2階はギャラリーになっていて、ちょうど「森のようちえん まるたんぼう」の写真展をやっていた。森の幼稚園とは、その名の通り、子供を施設ではなく、「森」で預かる幼稚園。智頭町の場合、9箇所のフィールドで、ほぼ毎日元気一杯遊んでいるらしいのです。

ほとりお母さん達が「こんな幼稚園がほしい」と協同で立ち上げ、保母さんの力を借りながら運営しているとのこと。お母さん達は、管理ではなく、あくまで見守りをするというスタンス。都会では公園にまでネットがかかり、ボール遊びは禁止なんて立て札が目立つ中、こんな環境で成長できるなんてうらやましい!私も子供ができたらこんなところで育てたいなぁ〜!

入園式(出典:下のロゴ、上記写真とも森のようちえん まるたんぼう)

ちなみに、森のようちえんのwebやプロダクトのデザインは、智頭町にお住まいの言葉絵本作家 澤田直見さんが担当されている。アーティストまで地場産(!?)なんて、とってもいいですよねー^^

まるたんぼうロゴ
寺谷町長の話
町歩きの締めくくりは、役場訪問。美しい村連合ご担当の酒本さんの取り計らいにより、なんと寺谷町長にもお話を伺うことができた。町の面白い取り組みの秘訣、お話ししてみてわかったが、それは寺谷町長にあった。

寺谷町長は一度、鳥取市との合併反対を機に町長を辞任し、2008年から再度現職に。「要求型」から「恊働型」へのシフトを目指し、町民に一緒に町をつくるという意識(本当の意味での自治の意識)を持ってもらいたいと、再選後、57集落全てを歩いて回って住民に直接伝えられたのだとか。「金がないなら知恵を出せばいい」と、町民が関心のある分野について考え、提案する百人委員会を立ち上げた。町民からよい提案があれば、予算をつける。その代わり、町民も言うだけでなく、動かなければならない。その結果実現したのが、前出の森のようちえんでもあった。

役所訪問

大麻生産に乗り出す!?
さらに、町のバックアップで実現させたビックリ施策が、麻の生産。これまた突拍子間もないが町長は大真面目。生産が禁止されている、というのは裏を返せば非常に希少価値が高いということ。町に移住して来た若者の提案から始まったというこのプロジェクト。麻は素材として非常に強く、古来より日本の生活の中にあったもの、という彼の主張にピンと来たのだという。県庁を説得し、条例を設置して町内での麻栽培を解禁したところ、神社の行事、職人等、思わぬ方面から問い合わせが殺到。新たなビジネスとなりつつあるそうだ。9月には麻祭もあり、年々人は増加傾向にあるのだとか。

麻まつり寺谷町長は観光庁によって観光カリスマに任命されているが、観光に限らず、ものすごく先見の明がある施策を、派手に見えるが案外地味に着実に、積み上げて少し先の町の形を描いている。まさしくビジョナリーピープルであった。トップが、ボトムアップを奨励し、よいバランスが保たれている。画期的な町づくりは、そんな環境の中から生まれたようである。

とっこ処(トッコトコ)
智頭を後にする前に、小腹がすいたので、駅前で評価の高かった(そもそもそんなにチョイスはないが)とっと処で早めの夕飯。智頭町に限らず鳥取ではよく食べられるというホルモン焼きそばを食してみることに。臓物系はやや苦手な私でもいけるお味。しかし、このお店、もともと尾崎製麺という、製麺屋さん。そのため、名物のホルモン焼きそばより、バックアップ策として注文したトマトラーメンの麺が特筆すべきおいしさであった。

ホルソバ
ちなみに、昔は「西田の自動販売機」(西田農園にあるため)なるもので、うどんの麺が販売されていたそうで、メニューの中にも自答販売機うどんが存在する。

【おまけ】
前日は鳥取砂丘へ。この不思議な砂丘、実は川の砂が堆積したものだと言われているのだが、その川こそが千代川(せんだいがわ)。まさに、源流を辿ると智頭にたどり着く、という関係にある。

鳥取砂丘
ちなみに、鳥取県は日本で唯一スターバックスのない県。知事のギャグが発端でスタバならぬ「すなば」というカフェが駅前にオープンしたのだとか。味は至って普通であった。
すなば


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