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DAY63 広島県の重伝建 車で行ける離島・呉市豊町御手洗と、マッサンな塩のまち・竹原市竹原


離島の重伝建を訪問するのは大変だ。2014年9月時点で登録されている108の重伝建のうち、離島重伝建は6つ。北から順に、佐渡ヶ島、大崎下島、塩飽本島、的山大島、沖縄の渡名喜島、そして竹富島である。(後記:この中で圧倒的に訪問難易度が高いのは「的山大島」で、1ヶ月で九州の重伝建を制覇した僕らも、ここだけは諦めた。それほど手強い離島だ。)

車で行ける離島の重伝建・豊町御手洗

今回の訪問記は広島と愛媛の間、瀬戸内海に浮かぶ大崎下島の一部である「豊町御手洗(ゆたかまち・みたらい)」。ここ御手洗は、なんと飛行機もフェリーも使わずに訪問することができる唯一の重伝建なのだ。(1994年に「港町」として指定)

Google Mapでは、ぱっと見、フェリーなしには行けないように見える。しかしながら、広島市中心部から車で2時間弱かかるものの、車だけで行けるのだ。(カヤックで横断せよ、とか書いてないかと心配になったけど、そんなことはなかった)

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ぽこぽこと海上に浮かぶ島をいくつもこえて、御手洗に到着。まずは定番の観光案内所から。

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画像:呉市豊町観光協会

ちょうど開いた観光案内所で、地図を入手する。

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細い道を歩く。黒く塗られた木製の外壁が、港町らしい。ここで商売が営まれていたこともあり、商家町的な雰囲気もある。地区全体で町並みにはよく保存されているようだ。

「御手洗」という一風変わったこの地名は、「神功皇后が三韓侵攻の時、この地で手を洗った」ことが由来であるらしい。三韓侵攻は西暦200年代のこととされているので、とんでもなく古い。もうひとつの伝説として、菅原道真が901年に大宰府に左遷された際、ここに立ち寄って手を洗ったというものがある。これでも結構古い。

由来と伝説の真偽は歴史の霧の中だし、追求するのも野暮だけれど、御手洗が昔から天然の良好であったことは間違いないようだ。江戸時代にこの町は「風待ち、潮待ち」の場として発展し、伊能忠敬もこの地を拠点として瀬戸内海の地図を作成した。

茶屋のあと「若胡子屋」と郷土の偉人・中村春吉

人々の往来で賑わう御手洗にはかつて、四軒の「茶屋」があった。地区には、今でもその建物が保存されている。それが「若胡子屋」だ。

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若胡子屋の中は、ちょっとした資料館になっている。写真を中心に、往時(といっても、明治以降)の御手洗を学ぶことができる。

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こんな感じで、お茶屋は相当賑わっていたらしい。若胡子屋には100人以上の芸妓がいたという。

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加えて、非常に興味深いのがこの「中村春吉」なる人物である。1871年生まれ、御手洗出身の彼は、かなりクレイジーな経歴をもつ。

1902年(明治35年)、自転車による世界一周無銭旅行に出発する。ただの旅行ではなく無銭旅行であったのは、費用の問題と、無銭旅行での世界一周は前例がないがために意義があると考えたためであった。横浜港を出航して後、中国-シンガポール-ビルマ-インド-イタリア-フランス-イギリス-アメリカと経由して、1903年(明治36年)5月に帰国。
―wikipedia

帰国後は満州や朝鮮をいったりきたりしており、「軍事探偵だった」説もあるらしい。人生の終盤においては、「霊動法」という「精神的医術」の普及に努めたという。経歴だけみるとかなりの不思議さんだが、様々な逸話がさらに不思議度合いを数段濃厚なものとしている。以下、資料館にもwikipediaにも記載されている武勇伝より。

「五賃将軍」の異名を持っていた。五賃とは汽車賃・船賃・宿賃・家賃・地賃のことで、これを克服して無銭旅行を成し遂げたことから春吉が「五賃征伐将軍」を自称していたのが縮まったものである。

インドを横断している際には、ハイエナとジャッカルを素手で生け捕ったと語っている。生け捕りの顛末については本人の言以外に証拠はないが、ハイエナとジャッカルが春吉名義で上野動物園に寄贈されたという記録は残っている。

この他にインドでは「夜中に狼の群れに襲われ、油をしみこませた高野豆腐に火をつけたものを一晩中振り回して難を逃れた」「食料を失って餓死寸前のところ、襲ってきたクロヒョウを撲殺し、その肉で飢えをしのいだ」などといったことがあったとも語っている。もっとも、いずれも本人の言以外に証拠はない。

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足の長い小学生の看板や、まちなみ

資料館でお腹いっぱいになったところで、海沿いへと向かった。ところどころ、洋館も目立つ。

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立派な石垣も残っている。

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港町には欠かせないネコ。とても人なつっこい。

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古民家と海との間に松が立ち並ぶ、美しい海辺。

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江戸時代に石で造られたという灯籠「高燈籠」が海辺に建っていた。

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堤防も石積みでできている。

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海に面した立派な家もある。ここは、七卿落遺跡(しちきょうおちいせき) といい、幕末に京都を追放されたお偉いさんが長州に逃れる途中に隠れた家とのこと。随分人通りの多いところに隠れたなと思うけれど、やはり潮を待つのにちょうどよい立地(潮待ちのまち)だったのだ。

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ものすごくウキウキしすぎている「SCHOOL」の標識。これもそこそこ古いものらしく、御手洗の底知れなぬ奥深さがちらりと表れる作品だ。

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歩いていると、窓際で修理に専念する時計屋さんを見つけた。後で調べたところによると、この新光時計店(松浦時計店とも)は、「世界に名を轟かせる伝説の時計職人」のお店だったらしい。そう言われて思い返せば、ただならぬ風情と情緒を備えた時計店であったような気もした。

ひと通り町を歩いて、再び観光案内所へ戻る。道中、ロケ中っぽいたくさんの人たちがいたので避けつつ歩く。観光案内所のおばちゃんも、全然しらないドラマや女優さんの名前を上げて、自慢気にお話されていた。

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案内所で購入したジュース。ここは「大長みかん」で有名らしい。

ドラマの宣伝効果もさることながら、「ロケに使われている町なのだ」ということで、住む人たちは誇りを持てるものなのかもしれない。(一方で、こうした事態に遭遇するたびに、町並みは映画のセットではなく、住民がいて、その営みを歩いて楽しんでもらうもの、決してロケに使わせないという姿勢を貫く妻籠宿のことが頭に思い浮かぶ)

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車で近くの公園に向かい、瀬戸内海と御手洗のまちを眺める。次は、同じ広島県のもうひとつの重伝建、竹原へ。

マッサンのロケに盛り上がる重伝建・竹原市竹原

御手洗からは車で一時間半の竹原。ここれは1982年に「製塩町」として指定された古株の重伝建です。

「安芸の小京都」と呼ばれる竹原はその昔、京都下鴨神社の荘園として栄えた。戦国時代は竹原小早川氏の領地であり、江戸時代は浅野家の領地であった。竹原は干拓地で、塩分が強く耕作に向かなかったため、浅野家(安芸浅野と赤穂浅野はルーツが同じ)の縁で赤穂から製塩技術を導入し、製塩業が盛んとなった。

なお、製塩と並んで酒造が盛んである。最近テレビでやっている『マッサン』のモデル、竹鶴政孝氏はここ竹原の「竹鶴酒造」の出身である。ということもあり、メインストリートでは堂々とロケをしていた。

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何をやっているのかな、と思って近づくと「ロケなので、近づかないでください」と警備員。どこでもそうだけれど、ロケさまさまだし、関係者は随分と得意そうで観光客などガン無視である。(ここでもまた妻籠宿を思い出す)

テレビなど見ない者からするとあんまり気分はよくない。ということで道を逆走。

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古株の重伝建だけあって、竹原はとてもきれいに保存されている。製塩の跡はあまりみられないが、美しい商家がたちならぶ。また、道路の舗装が美しい。どれほど建物がよく保存されていても、地面がアスファルトだったりするとあまり見栄えが良くない中で、竹原の地面は周囲とマッチするデザインだった。

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脇道さえ、よく整備されている。派手になりすぎない程度にお店がはいっていたりして、散歩するにはちょうどよい。

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この日のうちに備前に向かいたかったので、竹原を早々に離脱。

備前焼の窯元が集積するまち・伊部(いんべ)で一陽窯と出会う

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備前焼きの窯元が集まる伊部では、奇跡のような偶然が。たびに出る前にとあるレストランで、「これはいいね」と言っていたすり鉢(?)を、何気なく入った窯元で発見。ひとしきり盛り上がってひとつ購入させていただいた。帰ったら胡椒を擦りまくろうと思います。


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