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DAY69 室戸市室戸岬・空海とニュータイプ海の男、重伝建吉良川町・いしぐろ探しのまち歩き


人は先っぽに理由もなく惹かれる。中学生の頃、地図帳を眺めて気になるのはいつも先っぽと河川だった。北海道・野付半島、能登半島・禄剛崎、そして室戸岬。「いったいどんなところだろう?」

そして空海について読んだ人なら誰でも思うのが、「室戸岬に行ってみたい」。「空海」という恐ろしいほど美しい名前は、彼が室戸岬の洞窟にこもり、そこから外を眺めて見た光景から来ているという。かぶれた者としては、それを体感せずにはいられない。こうして、室戸岬の先っぽは、当時高校生くらいだった僕の、密かなあこがれの地となった。

その室戸岬に向かっている。

弘法大師空海修行の地、御厨人窟(みくろど)

室戸岬はどこからも遠い。ちょっとその感覚は稚内に似ている。行ったところで、さしたる観光地があるわけではない、でも行ってどんなところなのか確認してみたい、と思わせる何かがある。

その先っぽ付近に、空海が修行したとされる洞窟、御厨人窟(みくろど)がある。

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ロードサイドに出現する、いかにもな立像。この横に御厨人窟があります。

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高鳴る鼓動。しかし、のっけからの「なんじゃこりゃあ」感である。聖地はレッド・コーンで囲われていた。

内側に入って外側をみたところ・・も、あまり空海的ではなかった。もしかしたら、空海が生きた9世紀には、もっと海岸線が内陸まで入り込んでいたかもしれない。とか思いつつ、岬へ移動。

ジオパーク室戸岬

世界には「ジオパーク」なるものがある。認定機関である世界ジオパークネットワークは、UNESCOのサポートによって設立されたもので、世界遺産の広域自然版みたいなものだ。日本では洞爺湖有珠山、糸魚川、島原半島、山陰海岸、室戸、隠岐、阿蘇の8つが加盟(2014年9月時点)している。(ちなみに日本独自のジオパークもあって、重複もあるけど32地域が認定されている。)

ということもあって、室戸岬の情報発信はなかなかしっかりしている。ジオパークなので、その内容もなかなか渋みが効いていてよい。なんでも、「海のプレートが動いていることの証拠を陸上でさまざま観察できるのが世界的にスゴイ」とのことなので、ぜひ室戸ジオパークのWEBサイトをみて予習した後、現場をうろつくとよいと思う。

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先ほどの弘法大師像の辺りから先端の室戸岬へ、海岸通の遊歩道を歩く。南国情緒あふれる樹木がそこかしこに。

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先端付近から見える山は、こんもりしていてかわいらしい感じ。

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斜めに筋がはいった岩と、逆に斜めになっている旅人。どうやら室戸周辺では、フィリピン海プレートが年間4センチ日本列島側に押し寄せてくるせいで、こんな岩盤がみられるそう。もともとは水平方向にシマシマだったのが、陸にぶつかって押し上げられることで斜めになってしまったらしい。

年間4センチ。つまり、約1200年後を生きる僕らと空海の間には、4,800センチ、約5メートルの隔たりがある。そのまま垂直方向に隆起するわけではないだろうけど、現在の御厨人窟から、空と海以外のものが目に入ってくるのは当然のことのようだ。

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先端付近の中岡慎太郎像。高知市桂浜の坂本竜馬像と向き合っている、という都市伝説もあるらしいけれど、実際向き合っていない。でも、どちらも同じく海の方向を向いているほうが、よっぽどストーリーとしてはよくできていると思う。

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中岡慎太郎像の視線の先には、岩と海と空。

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歩いて弘法大師像へ戻る道すがら、お遍路らしいお地蔵さんを見かけた。このちょっと後、同じようなお地蔵さんの前でお経(?)を読み上げるシニア女性の集団にも遭遇した。

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ネコもいる。

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水切瓦といしぐろが特徴の重伝建、吉良川町

室戸岬をまわって西へ抜け、しばらく走ると海沿いに「吉良川町」がある。吉良町(現・愛知県西尾市)出身の僕には親近感あふれる名前だ。

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1997年に「在郷町」として指定された重要伝統的建造物群保存地区、吉良川町。ここの特徴は「水切り瓦」と「いしぐろ」である。

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町並みをウロウロすると、シャンプーハット的に家屋を取り巻く瓦を目にする。しかも何重にもなっている。これが水切瓦。吉良川町のまちなみは、台風対策のたまものと言ってよく、水切瓦もそのひとつである。

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文字通り、外壁を伝う水を瓦の部分で払い落とすことで、壁の寿命を少しでも長くしようとしたものらしい。が、それにしては意匠にこだわりまくっているということで、装飾的な意図もあったという。たくさん並んでいるほうが豪勢だったとか。防火壁から発展したうだつを思い起こさせる。

現代建築と比べてみると、デザインに制限があったがゆえに実用の部分が装飾的に発展していったのかもしれない。武士やらに何かイチャモンを付けられた時に、「いや、それは台風対策です」とかごまかせるように。

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ただ、確かに台風対策は徹底していて、写真にあるように、まち全体の高さを揃えたり、石垣(ここでは「いしぐろ」)を設けることで、少しでも強風を減じる工夫がされている。

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そして、この石垣が「いしぐろ」。なんともポップでかわいらしい。しかも、まちのそこかしこにあるわけもない。まちの中ほどにある観光案内所でもらえる大雑把な地図にいくつか「ここ、いしぐろ」と書いてあるだけである。ということで、この日はひたすらいしぐろを探すことにした。

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地図では、これも「いしぐろ」認定されている・・ようだ。しかし、だいぶデザインが違うように思える。ほとんど普通の石垣。ここはもう、朽ちつつあるみたい。かつては探すまでもなくそこらじゅうがいしぐろで区画されたいたのだろうが、こうなった結果撤去されていったんだろうな、、と思う。

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軒先に吊るされた備長炭を発見。書き忘れたけど、吉良川町は備長炭の交易で栄えた在郷町なのです。

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やや粗めのいしぐろを発見。どうやら、丸石を2つに割って、断面を外に配置する、という形式のようだ。ここは楕円断面いしぐろ。

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現在もお住まいの立派な家屋のいしぐろ。あまりにいしぐろがかわいくて、割られた断面同士をみつけられないかと、貝殻合わせならぬいしぐろ合わせに取り組んだが、ちょっと難しかった。

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室戸の陽光は東京のそれと比べて強くて明るい気がする。水分補給しようとしたところ発見したミニッツメイド・ゆず。さすが高知。(こ)

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うみ路の蜂谷さん

吉良川町(いしぐろ)散策後、うみ路の蜂屋さんにお会いするため、もう暗くなりつつある室戸岬に戻った。

蜂谷さんについては、もう、すごすぎて、何から書き始めていいかわからない。詳しくはたくさんの取材を受けている記事(例えば:四国びと)を参照してもらえばよいと思うが、かいつまんで書くと、蜂谷さんは、もともと岡山出身。あまりにも潜るのが好きだったために、海洋学部のある高知大学へ進学。その後ももぐる仕事がしたい…と考え、海藻の研究を専攻。

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そこで、数少ない海藻の海上養殖の可能性に触れるとともに、その排水(海藻が浄化してくれるため非常に綺麗)の利用について考え、ビジネス化してしまった。

室戸市は日本で初めて深層海洋水を汲み出した自治体。深層海洋水は年間を通して冷たいため、冬の冷たい水で育つ青のりの生育にぴったり。また、青のりが浄化してくれた綺麗な水ではアワビが育つ。そのアワビの糞などで不栄養化した水を再度海に放てば、そこでまた海藻が増え、豊かな漁場が戻るという。

温暖化により、かつての2%足らずにまで減少してしまった海藻の収穫量が、また増えるかもしれない…まだきちんと循環の輪がつなげた訳ではないが、そんな完全循環型の地域ビジネスを目指している。

それもこれも、日本ではほとんどやっている人がいないという海藻の養殖の研究がもとになっている。多くの起業家が新たなビジネスモデルで勝負しようと躍起になっている中、蜂谷さんは、研究開発から真っ当なビジネスを育てている。

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完成したプロダクトが、「青のり」と、非常に地味地味なところすら、おちゃめにさえ思えてしまう。うーん、この研究開発からのきちんとしたものづくりのストーリーをもっと知ってもらいたい!と歯がゆく思うものの、蜂谷さんはあんまり売り上げにこだわっていない様子(もちろん、販売を課題とは言っていたが)。

温暖化して海藻がとれなくなっている日本で、この技術は必ず必要になる時がくる。と、蜂谷さんは、あくまで社会の役に立てばいいと考えている模様。その姿勢がまた、好感が持てる。

うみ路の蜂谷さん

ちなみに、室戸市近くの奈半利(なはり)駅内のイタリアン食堂トンノ(本当に駅ビル?の中にある)でうみ路のプロダクトを賞味可能。私たちはトコブシと青のりと小エビのパスタを食べました。(ま)

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