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DAY70-1 美しい村連合・高知県馬路村 柚子だけじゃない!才色兼備 ファンの心を掴んではなさない村の魅力とは


馬路村(うまじむら)は高知の山奥にある、人口1,000人に満たない小さな村だ。しかし、「柚子の村」として、知名度は全国的にかなり高い。もともと林業が主要産業であった馬路村は、その衰退によって、1963年に林業からいち早く柚子栽培に切り替え、1980年代から柚子の加工を開始。6次産業化なんて言葉が存在するはるか以前である。通販がまだまだ一般的ではなかったその頃に、独自路線でリピーターを確保し、現在では年間約30億円の売り上げ、約70人の雇用を生み出している。今回は、そんな村の中心的な存在、馬路村農協さんにお話をうかがうことができた。

馬路村ロゴ(出典:馬路村農協)

農協視察
「馬路村」と検索すると、行政のウェブサイトより前に馬路村農協がヒットする。さすが、農協の持ちたる村。前日だったが、ダメ元で農協に視察を申し込んでみると、善養寺さんという担当の方から、すぐに返信がきて、対応してもらえることになった。先日の台風で道路が壊れ交通規制がかかっている時間まで丁寧に案内してくれた。ものすごい配慮だ。

農協ゲート
おかげさまで非常にスムーズに馬路村到着。農協工場へのアプローチ。こちらに植えられている木は、数年前に工場を建て替えた際、職員がみんなで苗を植えたものだそう。できるだけ景観を壊したくない、と、木で建物が隠れるようにしたそうだ。さすが、建物もお洒落である(そして巨大である)。事務スペースも日が入って、森の中で働いているみたいだ。

馬路村農協外観
今回ご案内くださった山崎さんは、高校から村を出て就職、Uターンで帰ってきたそうだ。最近、県外からも、若い農協就職希望者は増えているらしい。仕事があれば田舎で働いてみたいという人は増えているのだろう。私なら、ここまで有名になり、視察の絶えない農協に乗っかって、別のことするけどなぁ。

山崎さんと
柚子の収穫は毎年11月の一ヶ月のみ。その時期にドドドーっと農協に持ち込まれ、きたものから新鮮なうちに搾ってしまって冷凍してしまう。各製品はその冷凍エキスをベースにつくられていくのだ。農協は、なんと農家さんがつくった柚子の全量を、固定価格で買い入れる契約をしている。こうして安心して農家が柚子づくりに専念できることが、農協の目的だからであるが、なかなか思い切った制度である。大量に出るしぼった後の皮は、肥料にして、農家さんに使ってもらう、循環型農法を実践している。種は化粧品として加工されている。

循環型農業
ここだけは機械化せず、全て手作業、と決めているのが箱詰め作業。注文毎に違う大きさの箱に効率よくつめる必要もあるし、なんといってもお客さんが箱を開けて、一番に目に触れるところだからだ。3重のチェック体制で丁寧に梱包される。梱包はプラスチックのプチプチではなく、ごみにならないようにと、極力タオルで包んでいるそうだ。おばちゃんたちは、注文内容を見れば、大体この箱に、こう入れれば入る、と瞬時に判断できる、梱包のプロだ。

梱包作業

それから、お話を伺って面白かったのが、馬路村プロダクトとデザインの関係。無名の村の、無名なプロダクトなんて、誰も買わない。なので、馬路村プロダクトは全て「馬路村」という名前入りで、村を丸ごと知ってもらう工夫が凝らしてある。ネーミングだけではない。馬路村のプロダクトのほぼ全てが、同一デザイナーさんのデザインで統一されているのだ。

馬路村カレンダー

マーティングも秀逸だ。店舗販売の在庫管理の煩雑さを避ける目的もあって、通販という手法がまだ一般的でない頃から、消費者と直接つながることを目指して電話とハガキでの注文を受け付けるようにした。また、ターゲットも全国ではなく、とにかく地元。馬路村の代表プロダクトともいえる「ごっくん馬路村」という柚子ドリンクは、高知県の子供なら、誰でも知ってる県民的ドリンクとなっている。県民ドリンクの座を得ることができれば、流行廃れのない、一定の需要が見込めるというメリットがある。CMも村の子を起用。これは来たことなくても馬路村が好きになっちゃうでしょう。ずるい。

http://youtu.be/1AgayKlyZzs

第二弾として、「柚子」という食品をもっと日本中に知ってもらわねば、と食卓に並ぶ製品を開発。ヒット商品となる馬路村のポン酢が生まれた。高知県は、お寿司もお酢ではなく、柚子の搾り汁でつくってしまうような柑橘文化があるが、その他の県ではあまり馴染みがない。そこに市場をつくってしまったのだ。

柚子胡椒

馬路村農協見学は無料。ただ、「帰りに馬路村プロダクトを購入して帰ってくださいね。」というので、(というか、言われなくても買うけれど)柚子胡椒3色セットをはじめ、6,000円分くらい買い込んでしまった。

まかいちょって家
農協から歩いてすぐのところに、観光協会「まかいちょって家」(=任せてくださいという意)がある。農協のプロダクトも多数揃っていて、ここでお買い物するのがおすすめ。

まかいちょって家
中に入ってみると、案内所の方から「菊地さんですか?」と。ネームプレートを見たら、昨日対応してくださった、善養寺さんだった。農協で働かれていて、今は観光協会勤務だそうだ。あれ、観光協会も農協によって運営されているのか??よくわからないけどまあいいか…

善通寺さんと
木製フェンス!
観光協会まで歩いていく途中の道は、ずっと木製フェンスが続いている。林業が不振と悩んでいる町は、みんなこうしたらいいのに。と思う程、落ち着いた色で、山の景観に馴染む。今日は村のお掃除の日らしい。町の人総出で草刈りとお掃除をしていた。夏は草が伸びるのがものすごく早いため、頻繁に村の草刈りがあるそうだ。こうやって、みんなで協力して町の景観も保たれているんだろう。

お掃除中の馬路村の人たち

ランチ@馬路温泉
前日にお会いした室戸の蜂谷君にお聞きしたところ、お昼は馬路温泉のランチがおすすめとのこと。土佐ジローの鶏刺をいただきました。馬路川を眺めながら、さっき買った柚子胡椒をたっぷり添えて。

土佐ジロー定食

相名地区の棚田
観光協会で棚田もおすすめされたので、ちょっと見に行ってみる。馬路村には、思ったよりも柚子林がなかった。こういう棚田の一角に柚子の木があったり、もっと山の奥の方に植わっているらしい。

相名地区の棚田
魚梁瀬地区の大杉
馬路村の美しい村連合認定理由は、柚子のある風景と、魚梁瀬杉(やなせすぎ)の水源風景。ということで、農協のある中心部から40分くらい更に山奥に登って、魚梁瀬地区へ。

魚梁瀬地区
途中にある魚梁瀬小中学校は、休み時間になると、この滑り台から子供達がぞくぞく降りて来るらしい!楽しそう!だが、あいにく授業中のようです。

魚梁瀬小学校
千本山の登山口にある大杉。あんまり聞いたことはなかったが、この辺りの杉は秋田杉、吉野杉と並ぶ、日本三大美杉だそうだ。「林木遺伝資源保存林」といって、「遺伝的に優れた林木や希少価値の高い植生などを保存し、ジーンバンク(遺伝子の銀行)として後世に引き継いでいくための国有林」(四国森林管理局)に指定されているそうだ。

魚梁瀬杉

そういえば、観光協会のすぐ対岸に、昔、杉を運び出す鉄道だったという馬路森林鉄道跡が残っていた。こんな立派な鉄道が杉のために通ってしまった程、当時は一大産業だったんだろう。成功体験に縛られず、よくぞそこから柚子に舵を切ったものだ。
森林鉄道
所感
馬路村農協の視察対応に始まり、実際の見学内容、プロダクトのクオリティ、景観への配慮など、この村は、ただ柚子の加工をしてる村でないことを身を以て知った一日だった。柚子という強力コンテンツを中心に村が回っているからかもしれない。

しかし、それと合わせて、非常に強く感じたのが、デザインの力。この絵を見たら馬路村を想起する…というところまで持って行く、地域密着デザイナーさんの存在。町ののぼりも、レストランのメニューも、馬路村プロダクトも、広報紙も、ぜ〜んぶ同じトーンの文字やイラストなのだ。だんだん、馬路村を走っていると、そのキャラクターが出て来るような気持ちになってくる。心の中に描く馬路村が、田舎の豊かな魅力に溢れた元気な村になる。もちろんプロダクトが最高に美味しいというのが前提だけど、それだけではない、なにか馬路村に対する愛着を、こうして人々はもっていくんだろう。デザイナーさんと自治体のこんな関係って、素晴らしいと思いました。

*注:トップの写真は馬路村農協ウェブサイトよりお借りしました。

  • 馬路村農協
    高知県安芸郡馬路村3888-4 
  • まかいちょって家
    高知県安芸郡馬路村馬路382-1
  • 馬路温泉
    高知県安芸郡馬路村馬路3564−1
  • 魚梁瀬小中学校
    高知県安芸郡馬路村魚梁瀬10−149

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