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とびかんな跡

DAY83 美しい村連合・福岡県 東峰村 日本一小さな合併(?)の村は、小石原焼、棚田、奇祭目隠し祭の里


東峰村(とうほうむら)は、2005年に旧小石原村(こいしわらむら)と旧宝珠山村(ほうしゅむら)の合併により誕生した。合併後も人口は3,000人に満たず、「村」を名乗る。日本で最も小さな合併といわれている。福岡県民に聞いても「どこそれ?」と言われることが多い。小石原焼の産地としてのネームバリューがある故、旧村名の方がまだまだ有名なのだろう。そう考えるとややもったいない合併だった感じがするが、小さくてもキラリと光る村になろう、という想いを込めて美しい村連合に加盟したという。

東峰村位置(出典:wikipedia)

さて、東峰村と翌日に訪問する星野村は、2013年のクリスマスに一度、まだ働きながら休日に美しい村巡りをしていた頃に訪問したことがあり、今回が2回目の訪問だ。窯の煙突がにょきにょき密集した風景が印象的で、もう一度訪問してみたかった村だ。東峰村は大まかにいうと2つの谷がV字になっていて、それぞれの谷が旧小石原村と、旧宝珠村だ。うきは市から登ってくると、ちょうどVの下の頂点辺りに「塔の元」という交差点があり、そこから左手が小石原地区、右手が宝珠地区である。

マップ(出典:のんびり周遊マップ東峰村←拡大地図有り)

道の駅 小石原
東峰村を訪ねるなら、小石原地区から訪問するのがおすすめ。ひとまず、道の駅小石原でマップをゲットしたい。特に窯元はたくさんあるので、東峰村全体の地図(といっても、小石原・宝珠両地区をカバーする地図は少ない。せっかく合併したのに…笑)と併せて、窯元マップを入手すべし。

高取焼高取焼(出典:鬼丸雪山窯

小石原はその名の通り、小石原焼で有名である。大分の小鹿田焼の源流と言われていて、「飛びかんな」でつける模様がその特徴だ。もう一つ、高取焼というのも有名。小石原焼が素朴な民具だったのに対し、高取焼は黒田藩の御用窯だったこともあり、薄めで釉薬が美しい上品なイメージ。

小石原焼小石原焼(出典:うなぎの寝床

道の駅にはたくさんの焼き物が展示されてるので、ここでざっと見て、作風が気に入った窯を訪問するのも手だ。各窯では突然訪問しても色々お話を聞くことができ、場合によっては工房も覗かせてもらえる。

道の駅小石原
熊谷さん@カネハ窯の話
道の駅のすぐ横が村役場だ。今回の訪問は間が悪く、ちょうど10月初旬の美しい村フェスティバル開催中(@北塩原村)に当たってしまったので、ご担当の方が出張でご不在だった。にも関わらず、観光課の泉さんが代わってご対応くださり、役場で少しお話を伺った後、直接窯元さんまでご案内いただいた。

カネハ窯
訪問したのは、カネハ窯の熊谷さん。熊谷さんは小石原焼の窯元3代目。3代目ということは、おじい様が窯を開いたということ。つまり、小石原焼きは一子相伝ではなく、新規参入OKというわけだ。熊谷さん曰く、小石原焼の特徴の一つとして、この地で焼き物が始まった当時より、多くの窯が半農半陶だったということが挙げられるそうだ。実際、熊谷さんは現在でも田んぼや畑を持ちながら工房を構えている。

高齢化が進む集落で、上流の田んぼが耕作できなくなると、下段の田んぼが影響を受けてしまう。熊谷さんは、それをなんとか防ごうと、3年前に営農組合を立ち上げたリーダーでもある。横で静かにうなずいていた泉さんも、実は営農組合の組合長さんということが発覚。半農半公務員だ。

カネハ窯

小石原は父親世代から泉さんや熊谷さん30〜40代の現役世代にバトンがきちんとつながれつつある。そんな印象を受けた。その鍵はやはり継ぐべき窯があることだそうだ。村には高校がないため、高校・大学と外に出てデザインや製陶の勉強をしてくることはあれど、やはりUターン前提であることが多いという。

なにが彼らを「Uターン前提」とさせるのか?更に訪ねてみると「親の洗脳」とのこと。これまで日本の多くの田舎では「こんな辛い仕事は子供にはさせたくない」と、農家は農村から若者を追い出して行くことを推奨した。しかし、東峰村では親の背中をしっかり見せながら格好よく仕事をする親がいたらしいのだ。子供達の世代をより幸せにすべく、自分の生活を犠牲にするんじゃなくて、今、私たち世代がそれぞれの地域で自分たちの生活に満足して、幸せに暮らすこと。ただそれだけのことが、次の世代の価値観に大きく影響を与えるんだろう。簡単に可視化することはできないけど、長期的に町の形を左右する重要なファクターだ。

七窯土(ななかまど)
熊谷さん曰く、バブルの時は大型バスがひっきりなしに来て、土日は毎日が祭のようだった。ただ、当時は焼けば売れた。とにかく量をつくることが目的となってしまっていたんじゃないか、と振り返る。今の方が消費者の目が厳しくなった分、良いものをつくろうというインセンティブがきちんと働いているのではと、ポジティブな視点をきちんともたれている。

とはいえ、客足も、客単価も激減した。気づくと、お店の陳列棚のホコリを払うよりも、自宅の洗濯物を優先する生活になっていた。そこで、窯元仲間6人+飲食店の1人=7人で「七窯土」というグループをつくり、月代わりで各お店を訪問し、おもてなしレベルをチェックし合う会を開催しているのだとか!7軒巡りのツアーも企画されているようで、そういうのがあると、訪問者側としてはとってもありがたいですよね。

カネハ窯

福岡市から嫁がれてきた奥様もお店を手伝われています。幸せなご家庭でお子さんもきっと帰ってきたくなりますね

皿山地区
九州には焼き物の里が多いが、その中で歴史的に陶工が多く住んでいる地区をどうやら「皿山」と呼ぶことが多いようだ。ここ、東峰村内でも、小石原焼の工房のクラスターがある一帯を皿山と呼ぶ。この地区で、春と秋に開催される「民陶祭」というイベントには3日間で10万人近くの集客があるらしい。それに向けてか、多くの工房で焼き物を乾かしているところだった。ヤマイチ窯さんにて、飛びかんなのかんながけの痕跡発見!作りたてはこんな風にお皿にクズがくっついてるんですね、おもしろい!

とびかんな跡

とびかんな跡
こちらはヤマイチ窯さんの工房。裏の立派なのぼり窯!ガス窯が中心になり、もう使われていないそう。

のぼり窯
どこの工房もそれなりに大きく、たくさんあって、全て回るのには時間がかかりすぎるので、先ほど教えてもらった七窯土の仲間たちのお店を手がかりに訪ねてみることに。

マルワ窯
皿山地区でも一番奥にあるマルワ窯さんの工房の裏には、まだ小石原焼がまだ「中野焼」と呼ばれていた頃の古窯跡が。現在は埋められてしまっていますが、のぼり窯的な傾斜にもっこりした坂道に碑が建てられてていた。

中野窯跡?
次に訪問したのも七窯土のひとつ、マルダイ窯さん。ラインナップには、使えそうな素敵なものが色々!コーヒーのドリッパーとサーバーのセット、離乳食のすり鉢などなど。ついお香立てをプレゼントに購入してしまいました。奥様曰く、全て手づくりなので(=すべて手づくりではない窯も当然ある)、自分たちが必要なものやお客さんの要望に合わせ、あれこれちょっとずつ、つくってみているのだとか。

七窯土
小石原ポタリー
前回、偶然見つけたこのギャラリー。小石原ポタリーには、使いたいと思うような素敵な食器ばかり並んでいて、更にカウンターで、本物の小石原焼のカップにコーヒーを淹れてもらえて。確か、お店の方は、もともと有田か伊万里で陶芸関係の仕事をしていた方だった。小石原焼のDVDも見せてもらって、小石原ポタリーの取り組みについてお話を伺った(フードコーディネーターの長尾智子さんと、小石原の15窯元さんのコラボなんですって!)。寒い日だったのもあって、温かいコーヒーがとても美味しかった記憶があり、今回もお話を伺うのをわくわくしながら訪ねてみた。

小石原ポタリー
…が、本日の当番は別の方のようだった。ちらりとこちらに目をやっただけで、なにか一生懸命新聞を読んでいる。あんまりお話をする雰囲気でもなかったので、いそいそと出てきてしまった。うーむ。せっかくよい食器がおいてあっても、あれじゃあ作品が輝かない。不思議なものだ。お店の印象の予想以上に多くの割合が接客で決まっているのかもしれない。人、ひとりの存在感、そして会話の力ってすごい。今回はそういう学びがあった。

宝珠地区のメガネ橋
さて、次に旧宝珠村エリアへ。いったん下り、またひたすら坂道を登って行く。途中、右手の山々に3つのメガネ橋が見える。これは現役の日田彦山線の線路。時々電車が走るらしい!

眼鏡橋
あった、2こ目!眼鏡橋を探しながら田んぼをドライブ。天気は悪いけどコスモスが綺麗。

めがね橋

竹地区の棚田
更に細い道を登って行くと、折り返しが不安になってきた頃に棚田が登場する。上の方には展望台があり、パーキングに停められるようになっている。

竹地区の棚田
去年、東峰村に来た時点では、棚田なんて見たことがなかったので、ここからの風景に痛く感動したものだった。が、ここまで日本全国の田舎巡ってくると、この棚田は案外大きなものではなかったんだなぁ、と思い直したり、電線が妙に気になったり。もちろん、普通に美しいわけですが。たくさん回って、感動が薄れてしまったのだと思うとやや切ない。

竹地区の棚田
岩屋神社
前回はあまりの雪で訪問できなかった、美しい村認定理由のひとつ、岩屋神社とその周辺の奇岩群。鬼達のお手玉がぼてぼて落ちたのだとか言われるこの奇岩群は、信仰の対象で、修験道の道となっていたのだとか。
岩屋神社
ある日、天から光る玉が降りて来て、それをお祭りしているという宝珠神社。祀られているご神体の玉は見ると目がつぶれると言われ、目隠しをしたままお祭りをするそう!どうやってやるんだろう。非常に気になる。

岩屋神社
この付近の行者の道は、軽いトレッキングコースとなっている。行者によって掘られた洞穴や、ちょっと不思議な石像群なんかもあって、天気がよければ、行者風ひと味違ったトレッキングを楽しみたいところだ。

岩屋神社
村民がつくったというお堂が崖の上に。今日はこの辺であきらめよう…。なんせ、普通の階段もかなり急傾斜で手すりにすがりついて降りるようだ。お年寄りには危険なレベルである。

岩屋神社
所感
今回は、有田、伊万里など焼き物産地をまわったあとでの小石原焼だったので、また違った視点で楽しむことができた。小石原の皿山地区についていえば、コンパクトにまとまっているところが、ひとつのメリットといえそうだ。歩行者用に道がタイル張りにもなっているから、器を探しながら、ぶらぶらと色んなところを見て楽しめる。それからもう一つは、ギャラリーと工房の近さも活かすべき特徴のひとつだ。

有田や伊万里、波佐見も益子も、だいたい窯はちょっと離れている。窯のすぐ横が工房で、工房まで見学できる距離感なのは、私たちがこれまで回った中では、備前焼の伊部(いんべ)と、ここ小石原くらいである。つまり、作家さんと直接お話できるということ。顔の見えるつくり手さんから、想いを聞いて、買う。これは消費者にとってはとっても貴重な体験だ。ぜひ、その利点をもっと活かして、歩くのが楽しい皿山地区になるといいなぁ。七窯土というチームが、その一歩を踏み出している。ぜひ、今後も応援したい。


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