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源太さん

DAY84 美しいしい村連合・福岡県 星野村 棚田・茶畑・夕日焼 福岡にも残っていた秘境はほしのふる里


人口3,000人あまりの星野村(ほしのむら)は、平成の合併で八女市に吸収され、現在は住所として残るのみ。日本で最も美しい村連合には「星野村」としてエリア加盟している。なんといっても、星野村は日本一を誇る質の高い玉露の里。強力な地場産業を持ったエリアとして村の活性化に力を入れているようだ。

石積みの棚田
星野村といったら、お茶と棚田。星野村は山々に囲まれており、また非常に石が多い地質だということもあって、奈良時代から急峻な斜面を棚田にして利用していたのだとか。村の中にはたくさんの棚田があるけれど、もっとも有名なのが、写真の広内・上原(うえばる)地区の棚田。なんと高低差200m以上、137段、425枚の石積みの棚田だ。

星野村の棚田
星野村へのアプローチはうきは市からの超絶山道コースと、八女市からのアプローチの2通りがある。私たちは前日うきはにいたので前者のコースをとった。うきは側からだと星野村にはいって、まず姿を現すのがこの棚田だ。向かい側に展望台があり、ゆっくり眺めを楽しめる(電線は気になるけど…)。

下の写真の手前に、棚付きの茶畑が見えるだろうか。時期になると、この棚に黒いカバー(もしくは、伝統的には藁のようなもの)を掛けて、日差しをよけ、玉露用の茶葉を育てるためのもの。

星野村の棚田
それにしても、この時期ならば、ちょうど棚田が黄金に輝いているのでは…と、うきうきしていたのだが、既に刈り取られている模様?早過ぎやしないかと、調べてみると、平成24年の豪雨の影響で用水路が崩れてしまい、まだ復旧できていないため休耕中なのだそうだ。その豪雨の復旧を目的として発足したNPO法人がんばりよるよ星野村、それから棚田保存会のメンバーが中心になり、継続的に復旧作業にあたっているそうで、休耕中ではあるものの、きちんと草取りがされていた。放置すると、きっともりもり雑草の根が石垣を壊してしまうだろう。地域の方がきちんと手をかけて管理されてこの景観が保たれているのは素晴らしい。

茶の文化館
さて、ここには前回滞在のときにもきたのだが、また立ち寄ってしまった茶の文化館。星野村は玉露の生産が中心ではあるが、玉露に限らず、世界中の「茶」の歴史、文化、分類を展示している公共施設だ。展示量はそんなに多いわけではないが、じっくり読み込むとかなり勉強になる。

茶の文化館

展示も、日本一周したあとに読むと、全国のお茶の話のコーナーなど、更に興味深くよむことができた。が、なんといってもお楽しみは「しずく茶」。茶の文化館オリジナルの飲み方で、蓋つきの茶碗に茶葉を入れ、お湯を注ぎ、蒸して、お茶のうまみたっぷりのしずくを、蓋の間からすするようにいただく。それがしずく茶。茶の文化館の入館チケットに、一杯チケットがついてくるのです。最後に器に残った茶葉は、おひたしで。いい茶葉だから、最後まで楽しむことができます。

茶の文化館抹茶づくり体験
今回は前回と全く一緒なのも能がないので、抹茶づくりを体験することに。抹茶は単に緑茶の茶葉を粉にするだけではなく、茶葉自体の乾燥のさせ方がそもそも違うんですね。なんだか茶葉が、まるで青のりのよう。

茶の文化館抹茶づくり体験
石臼で20分ほど挽く。この石臼なるもの、かなりローテクに見えるが、やはり機械ではここまで細かく切り刻めないらしいのだ(機械で石臼をまわせば可能だと思うけど)。よく見ると、石の溝の1本1本、きちんと角度がついていて、すり切れるようになっている。さらにぐるぐる回すと、うまーく、横から粉になって出てくるように設計されている。

石臼
缶に入れて、お土産にしてもらいました。これでお抹茶をたてられるサービスがあれば更にいいんだけどな〜。

抹茶完成
おばしゃんの店
さて、次は茶の文化館から下に下る坂道の中程にあるおばしゃんの店へ(ここらで急に雨がふってきたので、タオルをかけて、店に駆け込む)。婦人会のメンバー20人ほどで、交代でお店番をしている、産直&地場産品の売店だ。地域で元気な人に会いたいなら、ここへ、と役場の方に教えていただき、訪問した。今回は、日本で最も美しい村フェスティバルの会議のため、役場のご担当の方がご不在だったが、メールでおすすめの場所を事前にお聞きできたので、助かった。確かに元気なおばちゃんが対応してくれた。「日本一周しているんです」というと、ご自身が出品しているという商品をお土産にくださった!

おばしゃんと
ふみちゃんのみそ汁屋
ランチ場所でご推薦いただいた、このお店。みそ汁のお店なんて、気になる!それも古民家で素敵な感じだ。しかし、あいにくお休み、で店は空っぽ。不定休だから仕方ないか…。田舎のお店は、基本、電話を入れてから。この鉄則を怠るとこういうことになる。たとえ営業日であっても、営業時間内であっても、ウェブに情報が掲載されていようと何だろうと、事前に、念のため電話しなければならない。

ふくちゃんの店
鄙のひまわり
というわけで、教訓を生かして、もうひとつのおすすめであった、こちらの食堂にはすかさず電話!かけておいてよかった。まだ2人分なら辛うじてあるとのこと!店主の向さんは、とってもハキハキしていて、楽しいおばちゃん。午前中はパートさんのお手伝いがあるが、殆ど1人でお店を切り盛りされている。パワフルだ。

ひまわり
向さん、もともとはケータリングのお店を始めるつもりでキッチンをつくろうと、この物件をゲット。しかし、設計士さんに、念のため、食べられる席もつくっておいては、とおすすめされて、壁に沿ってぐるっとカウンター席をつけた。それがきっかけで、片手まで食堂をオープンしたそうだ。ガラス壁から外が見えて、開放的。かえって気取らずに、いい空間になってます。

ひまわり店長さんと
ランチは好きなおかず3品+ごはん、お味噌汁で、破格の450円!野菜は殆ど裏の畑でとれたもの。お米も星野村産。午前中に仕込んだお弁当プラスαというラインナップだそうで、日替わりで旬のものが並ぶ。町で働かれてる方と同じものを食べてるんだと思うと、なんか楽しいですね。

ひまわりプレート
源太窯(げんたがま)
星野焼は江戸時代に久留米藩の御用窯として起こったが、いったん途絶えてしまい、この源太窯によって再興されたという、すごい窯元さん。星野は玉露の里だし、八女(やめ)地方は古くから八女茶で有名ということもあって、星野焼は茶壺や茶器を多く生産していたとのこと。

ところで、わたしたちは、この日本一周旅行中、焼き物の産地を訪問する度に、探し求めているものがある。それが、宝瓶(ほうひん)だ。宝瓶は、茶師の試験用に用いられるが、あまり一般的には普及していない形の急須だ。急須の注ぎ口の長い部分もなく、取っ手もない。非常にシンプルな形だが、茶葉の様子はよくみえるし、とても手軽にお茶が楽しめる急須だと思う。茶の生産地でもあり、焼き物の産地でもあるという星野村。ここになら、宝瓶が売っているのでないか…そう望みをかけていざ訪問してみたのが源太窯だった。

源太窯
雨の降りしきる中、源太窯到着。メインの通りからは、少し入り組んだ道を行く。「源太窯」の看板も、ごく遠慮がちにあるので、危うく見逃してしまい兼ねない。

源太さん
工房を訪ねると、運良く、源太さんにお会いすることができた。源太さんは、あまり多くを語らない。というか、殆ど語らない。けれど、私たちがあまりにも長居するものだから、ぽつりぽつり、色々なことを教えてくれた。もともとは島根県出身の源太さん、いい土を探して全国を旅して歩いたときに、小石原(だったかな?)で出会ったのが星野焼だったそうだ。けれども、当時、既に星野焼は廃窯になってしまっていた。しかし、なにか「星野」という素敵な響きの土地が気に入り、移住。不思議なご縁で、吸い寄せられるようにこの物件にたどり着き、星野焼を再興することになったのだとう(詳しくは源太さんの著作「土泥棒」で。)

源太さんちでお茶

源太さんが、この色を出すのにものすごく苦労したという星野焼のこの光沢を帯びた赤褐色。お茶を注ぐと、底の光で黄金色に輝き、まるで夕日のようであることから、別名夕日焼とも言われているそう。そして、源太さんが使っている急須、これがまさに宝瓶です!!!

夕日焼
やっと見つけた宝瓶に興奮していると、歴代宝瓶を出して来てくださった。ただ、見よう見まねで宝瓶をつくってもダメ。やれ茶葉がひっかかりやすいだの、湯の切れが悪いだの、さんざん地元の方に意見をもらって、ようやく現在の完成型に至ったそうだ。さすが茶所、一流のご意見番が近くで常に指導してくれるなんて、いい茶器ができるわけだ。

宝瓶
湯のみの底の夕日が気に入って、湯冷ましと、湯のみも宝瓶とセットで買ってしまった。宝瓶は持ち手がないため、熱いお湯で出すお茶には向いていない。やはり、低い温度でじっくり出す玉露に向いているのだ。ちょっと贅沢なお茶を飲むときは、源太さんの緑に囲まれたこの隠れ家と煉瓦の窯のことを思い出そう。

源太さんと星野温泉&宿泊
星野村はその名の通り、山奥で人里離れており人口も少ないことから、星空が美しいことで有名だ。なので、できれば泊まりがけで訪問するのがおすすめである。今回は雨だったこともあり、星空は望めないので宿泊しなかったが、気になっているのは星の文化館。星の文化館には九州で最大の天体望遠鏡があり(ふるさと創世資金で建てられた施設らしい)、夜9時から天体観測という宿泊者限定のスペシャルメニューがあり(宿泊者なら無料)、星野村を丸ごと満喫できそうだ。ぜひ、天気のいい日に泊ってみたい!

しかし、予約がとれなかったので、この前は星の文化館よりかなり下ったところにある、池のホテルに宿泊。星空を眺めながら入れる露天風呂がとてもよかった(循環型、掛け流しではないので泉質はともかく、雰囲気は○)。星野村には室山熊野神社という神社があり、そこに船着石(ふなつきいし)と呼ばれる巨大な岩があるそうだ。なんでも神様達が乗った天の浮き舟がつながれた岩なんだとか。更に山奥にあるので行けなかったが、お風呂からその岩が遠くに小さく見えた。星野村、なんだかロマンがある村だ。

星野文化館(出典:星野文化館)

所感
星野村発の、熟成ワインと同じくらい高級な茶ボトルがあるという噂も入手しており、可能ならお茶農家さんや、製茶場のお話も伺ってみたかったところだが、源太さんの窯であまりにも長居してしまったこともあり、今回は産直でお茶を購入して星野村をあとにした。

お茶、焼き物、棚田、星空。魅力がギュッと詰まった村だけど、現状では、それぞれがそれぞれの分野で発信している印象。もちろん観光が主な産業ではないから、そんなに力を入れる必要はないのかもしれないし、観光協会も存在していない(強いて言えば、ほしのふる里財団がその役割を担っているのかな?)からなかなか情報を取りまとめるのが難しいかもしれないけれど、せっかくいいものが色々あるし、まちづくり関係の団体もあるのに、ちょっともったいない気がする。


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