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押戸石

DAY85 美しい村連合・熊本県南小国町 黒川温泉だけじゃない!ブータン級の幸福度とフランス級の誇りをもった美しいまち


熊本県南小国町(みなみおぐにまち)は、もしかするとその町名よりも「黒川温泉」という名前の方がピンとくる人が多いかもしれない。阿蘇の北側の高地にある、人口約4,000人の小さな町だ。これは黒川温泉で当ててにわかに有名になった町であろうなどと先入観満載で訪問したわれわれは、思い切り気持ちよく裏切られることになった。最終的には温泉に入っている時間がなくなって、滞在を延長したほどだ。

南小国町地図↑ 北の方の、濃い黄色の町。北側が小国町(出典:wikipedia)

立野さんのこと
さて、今回の滞在を楽しいものにしてくださったのは南小国町の地域おこし協力隊の立野さん。まず、彼女の紹介をせねばならない。なんと、南小国町にくる前は、青年海外協力隊でブータン支援をしていたという、異色のキャリアの持ち主である。ブータンからなぜ南小国に?と伺うと「ブータンは水が貴重で、お風呂がない。温泉のあるところで働きたかったから!」と、切実な様子。こういう職場の選び方、いいですね 笑

ブータンといえば、GNP(国民総生産-Gross Nationa Product)ではなくGNH(国民総幸福量-Gross National Happiness)で勝負している幸福の国。立野さんはブータンの人と、南小国町の人には、なにか似た雰囲気を感じるという。実際、調査したところ南小国町民の幸福度は周辺自治体よりも高いという結果もあるそうで、今は立野さんの強みを活かしてブータンの学校と南小国町の学校をTV電話でつなぐ交流授業も企画中だとか。

立野さんと夕飯をご一緒した立野さんと、役場の佐藤さん。立野さん、本当によく笑う。幸せな人はよく笑うのか、よく笑う人は幸せなのか…

蔵で民泊@入船
さて、当日の連絡(しかも午後になってから…)にも関わらず、立野さんが手際よく民泊先を探してくださり、古民家を改装した入船(いりふね)さんにお邪魔することに。お話好きのお父さんと、面白すぎるお母さんの、まるで夫婦漫才のコンビのようなお二人のお話を伺いつつ、郷土料理を、お腹がはちきれんばかりにいただきました。

入船でご飯
一時期は黒川温泉に溢れるほどお客さんがきて、宿も賑わったそうだが、あまりにも旅館や別荘が建ち並び過ぎたため、源泉が枯渇してしまい、泉質が悪い宿も増えて、客足が遠のいてしまったのだそう。黒川温泉って、最近、温泉のある町づくりで売り出し始めたものかと思っていたけれど、老舗の温泉場を再興したものだったんですね。今は小中学生の修学旅行や体験学習だ中心だという。入船

民泊は、特に行政から頼まれたわけでもない、蔵が空いているから、民宿をやろうかと思って始めただけという。そんな民泊施設がこの辺りにはいくつかあるそうだ。多くの場合、行政が地域振興策のひとつとして、四苦八苦して導入している民泊制度だが、ここでは自然発生しているらしい。

入船のおかあさんと
食後はお父さんおすすめの「日本で一番恥ずかしい風呂」に挑戦することに。なんでも、日本で最も、公道から近い露天風呂なのだという。しかも、男女混浴。はて、どんなものか。夜も更け、どうせ暗くて何も見えないのでドキドキしながら連れて行ってもらった。なるほど、道端の川に温泉が湧き出ていいるのだ。底は川と同じようにぬめぬめ。でも、不思議と川臭さがなく、お湯も結構熱めだ。

日本一恥ずかしい温泉
朝のお散歩@満願寺
気持ちのよい朝。朝ご飯前に満願寺までお散歩した。昨日の晩は暗くて見えなかったが、お母さんは、いつもお風呂に行く時、満願寺前の橋を渡り、「満願寺に向かって一礼、その東の何かに安産祈願、北の何か、そして西の何かにお参りするのよ。」と、4方向に礼をするのが日課らしい。北と西はすぐには思い出せないとのこと 笑

満願寺
昨日のお風呂はこの満願寺のすぐ脇。3層に別れていて、一番小さいところは食器や洗濯をする場所だそう。地元ルールがわからないと、危うく遠慮して洗濯用のお湯に入ってしまいかねない。本当に、地元の方が何か洗濯をしにきていた。(↓この屋根の下に簡単な棚があって、そこに着替えが置けるようになっています。)

満願寺温泉
押戸石おしどいし・おしといし)
朝ご飯を早々に切り上げて、朝イチが一番おすすめときいた、押戸石へ向かう!朝日が差し込んで清々しい森の道。南小国は、九州の中でも寒冷な気候を活かして「小国杉」の産地として林業で栄えた町であったという。

杉林
黒川温泉以外は観光地として知られているわけではないので、わかりやすい観光地図がなく、表札も少ないのがネックだ。しかし押戸岩はやはり有名なのか、怪しげな看板がポツポツ…。

押戸石
到着。駐車場から5分足らず、丘を登ると押戸石が見えて来る。この巨石群には、謎のシュメール文字が刻印されていて、太古の頃よりここで祭をとり行っていたのではないかといわれている。山頂付近では磁場が強く、コンパスがくるくるまわってしまうという有名なパワースポットらしい(管理小屋が空いていれば、そこでコンパスを貸してもらえます!)

押戸石
まだ管理小屋すら空いていなかった。押戸石からの360°パノラマを独り占めだ。南側には阿蘇の山々が見える。カメラに納まりきらないのが歯がゆい!これはわざわざ見に行く価値がある素晴らしい風景だ。日本一周、全国津々浦々回って、一番記憶に残った景色といっても過言ではない。

押戸石

驚くのが、こんなに広く見渡せるのに、建物が殆どなく、送電線が1本もないこと(携帯会社の電波棟が1本だけ最近たってしまったらしい)!!!住民の要望で、醜い鉄塔群は地中化されているそうだ。さすが、年に一度、野焼きをして草原を管理している阿蘇地域の人々である。


すずめ地獄

次に向かったスポットが、インパクトある名前のすずめ地獄。温泉ではなく冷泉で、入浴はできないが、地中から亜硫酸ガスがグツグツ吹き出ている様子が見える。時々、このガスのために小動物が死んでいるので、この名がついたのだとか。

すずめ地獄

「清流の森」という公園の中の一角にあります。確かに、水に含まれる成分のせいで生物が住めないためか、川底は不思議な色だけれど、水は澄んでいる。しかし、硫黄臭く、小動物ではないわれわれも、このままだと倒れそうなので、退散。

すずめ地獄
静子さんの話
地域で元気な方、ということで、立野さんに紹介していただいた静子さんを訪問。さっそく、現在6次産業化のため開発まっただ中という甘酒と栗の渋皮煮のおやつで迎えてくれた。この甘酒の美味しいこと!色々な酒造を巡ってきて、無添加であっても、やっぱり苦手な甘酒だったが、静子さんの甘酒は独特の発酵臭なく、さらりとした甘さで飲みやすい。なんと、もち米の甘さだけで、お砂糖不使用とのこと。これは商品化が待ち遠しい!

静子さんとこのおやつ
鯉農法
私たちが静子さんを紹介してもらったのは、鯉農法で無農薬のお米をつくっていると聞いたのがきっかけだった。合鴨よりも鯉の方が世話も楽そうだし、米も食べてしまわないし、良さそうだけど、鯉の背中が田んぼからはみ出るのではないか?などなど、疑問を携えて訪問。話を聞けば、家の前の池の鯉が、その鯉だという!

鯉農法
しかし、白鷺が増えて鯉が飼えなくなってしまったため、今はやっていないそうだ。静子さんは、ここに嫁いできて以来、無農薬で米をつくっており、鯉農法もその実験の一環だったのだという。しかし、今でこそ有機、無農薬がもてはやされるようになったけれど、30〜40年も前から、なぜ無農薬にこだわっていたのか?

静子さんと
気軽にした、その回答が秀逸だった。「これまで受け継いできたこの土地を、私たちの代で使い捨ててしまってはいけない。次の世代にちゃんと残していかなきゃいけないからね。」と。「安全なお米が食べたい」という、現在の、自分の都合の話ではない。むしろ、自分だけのものではないから、責任を持って手間をかけているというのだ。

静子さんち前の田んぼ
静子さんのお家の前の田んぼが黄金色に輝いていた。「この景観も農家が守ってきたもの。若いもんが出て行ってしまって、この景観もいつまで保てるか。私たちができるところまで頑張らねば。」と、静子さんの凛とした姿が印象的だった。

芋洗い機
水が豊富なこの地域。家の前の水路にこの器械を掛けておけば、芋が洗えるという自作の芋洗い器も見せていただきました!生活の知恵がまだまだ息づいています。


橋本さんの話

役所では橋本さんにお話を伺うことができた。入舟さんにしろ、静子さんにしろ、とにかく南小国町は自主的に考えて、ものごとに取り組む人が多いという印象を受けた。と、話すと、「役所はむしろお尻を叩かれているんですよ〜。」と橋本さん。

その象徴のひとつとして、景観条例があるという。景観条例はもともと住民協定という、強制力を持たない形で、まず黒川の人々が環境を守るために取り組み始 めたもので、今は町内全体へ広がりを見せているという。近年、それをもとに行政としても景観条例を制定する方向に動いているそうだが、やはり、これもまず 住民ありきなのだ。現在はみなリンクという町の異業種の色々な立場の人が加盟しているNPO法人が立ち上がり、官民一体で町を盛り上げて行く方向にあるそうで、これからも楽しみだ。

橋本さんと
黒川温泉
やはり、この町でもっとも有名なのが黒川温泉。今回は、黒川再興の牽引約となったオーナーさんの神明館、黒川荘と旅館 山河へ。源泉かけ流しのお湯3つに入った。

洞窟風呂神明館のオーナーさんが手彫りで堀ったという洞窟湯!

黒川温泉については、ガイドブックにも色々な情報があると思うので、温泉紹介はそちらにゆずるが、湯巡り手形を購入しての湯めぐりが断然おすすめ!湯巡り手形は1,300円で3つの旅館の温泉を巡ることができるという楽しい手形。湯冷めしちゃうほど遠いところにある温泉もあるので、温泉にこだわる方は車があったほうがよいです。

黒川温泉昼間にも一回通ったけど、俄然夜のが雰囲気がいいです

【番外編】
南小国町からちょっとはみだして、鍋ヶ滝

あまり滝に興味がない私たち。しかも、この滝は小国町になるので、美しい村連合の南小国町をリサーチに来た私たちには関係がない。しかし、町の誰と話しても「鍋ヶ滝に行ったか?」と聞くので、そんな堅いことも言っていられない。彼らがそんなに誇るものであるなら行っておくべきかと、訪ねてみた。カルデラでできた滝。裏を歩けるようになっている。

鍋ヶ滝
裏が歩けること以上に、この巨樹と周辺の苔むした岩の醸し出すマイナスイオンあふれる雰囲気が、この滝の見所ではなかろうか。滑って危ないんだろうけど、通路に絨毯をひいちゃったり、滝のためにビッチリ歩道ができていてビックリ!これはちょっと興ざめ。

鍋ヶ滝

小国町の道の駅
ついでに立ち寄った小国町の道の駅。なんだかすごい形!後でwebでリサーチしたところでは、小国町はどちらかというとハコモノ行政、南小国町はソフトで勝負してきたらしい。合併の話もあったが、その姿勢の違いもあり、結局ご破算になったらしい。うむ。それを象徴しているかのような建物に見えてくる…。

小国町(出典:道の駅 小国

所感
黒川温泉だけでは決してなかった南小国町。何気ない風景が、本当に美しく、何度も車を降りて写真を撮った。これも、意識の高い住民に支えられている景観なのかもしれない。どうして南小国町の人は、そんなに自主性が高いのですか?橋本さんに聞いたが、その答えは誰もわからないという。ひとつ、おもしろいことを教えてくれた。幸福度調査を実施した際、南小国の人たちは「地域に誇りを持っている」という項目が飛び抜けて高い結果だったというのだ。

南小国町の田んぼ
地域の誇り。それは現在住んでいる人の満足感でもあり、未来に残していきたいという、これからの原動力ともなるのだろう。フランスでは、日本でいう市町村合併が失敗に終わったという。なんでもその一因は住民の地域に対するプライドの高さが邪魔したからだと聞いた。自分の所有地にはしがみつくが、町単位となると、すいすいと合併がすすむ日本。その中で、南小国町の人々の土地の感覚は、どこかヨーロピアンなのかもしれない。

  • 満願寺 いりふね (お食事だけもありだそうです!)
    熊本県阿蘇郡南小国町満願寺1993
  • 押戸石
    熊本県阿蘇郡南小国町中原511
  • すずめ地獄(清流の森)
    熊本県阿蘇郡南小国町満願寺火焼輪知
    ※ 黒川温泉は住所がよくわからず…とりあえず密集しているので、行ってからマップをもらって探してみてください。

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