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球泉洞

DAY88 美しい村連合・熊本県球磨村 九州のマチュピチュで棚田と地底を探検!アドベンチャラスな村


美しい村連合・熊本県球磨村(くまむら)は、球磨地方の中心部、という先入観を持って行ったら道を誤る。球磨地方の中心はあくまで人吉市(ひとよし)のようだ。しかし、球磨といったらその名を冠たる球磨焼酎の里!これは酒蔵巡りか、と気を取り直してみたところで、やっぱりこれまた人吉と多良木町に蔵が集中していて、今回の目的地、球磨村にはたった1蔵残るのみ…。む~ん、ややこしい名前だ。

球磨地方(出典:熊本地方法務局 地図の黄色いところが球磨地方)

白岳酒造訪問
日本全国、これまで訪問した酒蔵は全て清酒の蔵だった。私の好みでそうなっているわけだが、郷に入っては郷に従え。それに焼酎は立派な伝統的地場産品のひとつ、地域のことを学ぶためにも日本酒の南限といわれている熊本では、焼酎を飲んでみよう。幸い、人吉の白岳酒造に無料で焼酎について学ぶことができる素晴らしい焼酎ミュージアムを発見。

焼酎ミュージアム

日本版ボルドーワイン 球磨焼酎
球磨地方は、日本で数少ない「地理的表示」が許されている焼酎の名産地。
名前が地味過ぎて有り難みがないが、地理的表示は、ボルドー地方のワインや、エメンタール地方のチーズと並ぶ、国際的な産地保護のための知的財産権の一種。球磨地方の28蔵だけが、国税庁により、法的に「球磨焼酎」を名乗ることを許されている(この他に、地理的表示は壱岐と薩摩、そして琉球の3つだけ!)。

焼酎マップ(出典:球磨焼酎組合

「球磨焼酎」と名乗れる基準は3つ。原料が100%米であること、球磨地方の地下水を仕込み水として使っていること、蒸留・瓶詰めまで球磨地方でやっていること。1995年からこの制度が導入されたが、もともと鎌倉か室町頃から、この地方では焼酎がつくられていたといわれており、江戸時代に入ると製造には藩の許可が必要とされ、貴重な財源となっていたというから、この土地と焼酎の関係はとても深い。

焼酎の紀元は中国、ニューギニア、琉球など諸説あるようだが、「焼酎」という名前が確認できる日本最古の文献が、この地域にある、宮大工の神社の落書きなんだとか!「どんなに仕事をしても、ケチな領主が一度も焼酎をくれなかった」みたいな、文言らしい。日本最古の焼酎文献

 

焼酎の流儀 球磨拳
当たり前だが、焼酎の作り方は日本酒とは結構違う。詳しく書くとそれだけで終わりそうなので、興味のある人は組合発行のこちらのページを参照のこと。それだけ歴史の古い焼酎だから、飲み方にも作法があって、飲む前にちょこっとどっかにたらす(=神様に捧げる)とか、色々難しそうだ。中でも最も難しそうだったのが、ジャンケンならぬ、球磨拳。いわば6種類でやるジャンケンだ。これが宴席での遊びだというから酔っぱらっていられない。

くまけん(出典:球磨焼酎組合)

球磨村唯一の酒蔵・渕田酒造
一通り焼酎について学び、試飲の焼酎で半ばダウンしつつも、球磨村に向かう。最初に訪問したのが、渕田酒造。球磨村唯一の酒蔵だ。球磨川沿いにある小さな、古びた酒蔵だ。古びている酒蔵は数多いが、ここは、店舗とも工場ともつかない土間に古びた樽や段ボールが積上っていて、なにか雑然としている。インターホンを押しても鳴っている様子もない。しかし、奥で聞こえるテレビ音を頼りに進んで行くと、ご主人がでてきてくださった。ご主人も、なぜこんな酒蔵にくるのか、不審がっている様子だ。

渕田酒造
渕田酒造では、一升瓶にして年間約5万本程度の製造。と言われてもピンと来ないが、簡単に言うと、ものすごく小規模で、殆ど地域内でしか出回らないない量だそうだ。米を洗うところから手作業で行っており(規模の大きい工場では洗濯機のようなもので洗っているらしい)麹をつくるときは木箱に広げ、暖をとるために七輪を炊くという超手づくり蔵。醸造も貯蔵も殆どタンクではなく瓶で行っている。9月はまだ気温が高く醸造できないとのこと、訪問した時には奥で従業員さんがラベル貼りを行っていた。ラベル貼りまで手作業である。

仕込みの瓶
しかし、その手づくりだということが、ご主人にとっては当たり前なのか、あまり積極的にそのことを語らない。むしろ、手づくりなのは、大きな機械が導入できるほどの蔵ではないからと、あくまで控えめな様子。100年以上も続く、球磨村唯一の蔵。ここまで手づくりでつくっている蔵だって少ないだろう。せっかくの宝物、その良さを積極的に伝えていくことができたらいいのに。

渕田酒造
SL人吉
渕田酒造を出ると、目の前の線路をポーッと汽笛を鳴らしながら、SLが通り過ぎた!SL人吉だ!1日に上り/下りの2回、JR肥薩線を走るSL人吉(ウェブで一勝地駅の停車時間を確認可)。一勝地駅に駆けつけると、停車していた。幼稚園生がわらわらと車内を見学している。後から聞いた話だと、停車中なら、無料で中に入って見学することができたらしい!しまった、中に入れたのか…

SL人吉

一勝地駅
この一勝地駅、その名から、受験生やスポーツ選手の必勝祈願の駅として知られており、受験シーズンは込み合うそうだ。必勝のお守り切符を販売している。併設の観光協会で、その謂れを聞いてみると、「一勝地」という地名は、もともと一升瓶の一升だったものが、一勝になったのではないか、といわれいてるが確かではないらしい。

特に勝負事に関するいわれも、実績もないが、昭和40年くらいからネタとして打ち出しているそうだ。受験シーズンにこんなところに旅行している余裕ある大者たちが受験戦争を勝ち抜いて行くということだろうか。

一勝地
一勝地駅前のスーパー?ここも雑然としていて、なにか渕田酒造に通じるものを感じる。。。

一勝地駅スーパー

かわせみ
ランチについて、渕田酒造のご主人に聞き込みを行ったところ、天琴という西人吉のラーメン屋さんと石水という食事処がおすすめとのこと。が、どちらも月曜定休。仕方ない、最寄の公共施設内の冴えない感じ(失礼!)のレストランで昼食だ。入口には、木舟を改造した足湯が。なんでも、つい最近までは、球磨川を渡る渡しの船というのがあって、この船が最後の一隻だという。この謎な感じもまた、公共施設ならではである。

渡し船
鹿の竜田揚げを注文。山奥価格でやや高いが、ご飯は球磨村産のものを賞味することができる。付け合わせのみそ汁がちょっと変わった風味で、聞いたところ、魚の骨などを煮込んで出したあら汁のようなものらしい。このあたりはそんな出汁の取り方をするのか?私の聞き取り能力では50%も言っていることがわからない…。

鹿の竜田揚げ@かわせみ
かわせみ前のお土産物屋さんで、この球磨村の名産といううに豆腐(豆腐の味噌漬け)も購入。これは、佐賀県の鹿島で、酒屋さんのおかみさんに、おいしいといって教えてもらっていたもの。うん、これはごはんが何杯でもいけそう!というか、しょっぱくて、むしろ何杯も必要。

ウニ豆腐
棚田群
球磨焼酎を育んだこの土地は、県下でも有数の米どころという。鎌倉時代より700年間球磨地方を統治していた相良氏は、2万石程度と申請されていたが、実際は米が10万石程とれていたといわれるほど豊かだったそうだ。この棚田の数を見れば、さもありなん、と納得する。球磨村には、22の棚田があり、美しい村認定理由のひとつも、この棚田群である。

棚田
有名なところをいくつか回ってみた。上の写真が鬼ヶ谷の棚田。ちょうどはさ干し真っただ中。村中の人が表に出ているのではと思うほど。
松ヶ谷の棚田
松谷の棚田。高知県の本山町が四国のマチュピチュなら、こっちは九州のマチュピチュだ。

棚田
松谷の向かい側、毎床集落の棚田。


毎床溝

ここで、美しい村認定のもうひとつのポイント、毎床溝(まいとこみぞ)を探す。何でも260年前につくられ、この地での耕作を可能にした8kmもの水路で、地域の人に未だに大切にされているものだという。

観光協会の人に「行けばわかる」という言葉を信じて来たが、いくら探してもわからない。近くの民家にお邪魔してお聞きした。ちょうど、収穫してきたなしを包む作業中だった。この辺りは冷涼な気候と斜面を活かして、100年程前から梨の栽培を開始したそうで、今では一勝地梨というブランド梨の産地となった。この梨も、毎床溝からの水で成り立っているに違いない。

梨栽培
「あのお、毎床溝っていうのを探してるんですけど…」
「え、なにぃ?そんなもん知らない。」と言われたが、説明すると「あ〜あ、井出のことかぁ!そんなもん見てどうする。」と。まぁおっしゃるとおりではある。これまでに毎床溝を求めてやってきた遠方からの旅人など、どれほどいたであろうか。とにかく、この辺りでは溝ではなく「井出」と呼ぶらしい。井出さらいといって、地域の人総出で掃除もするそうだ。

毎床溝
棚田から車で5分もあがらないところに、石碑発見!以前は手彫りで、石張りの部分もあったそうだが、すでに多くがコンクリートで覆われてしまって、そこらのドブと区別がつかない状態だ。見に行くなら誰か、価値をきちんと説明できるガイドとともに、山の中の方まで歩かなければ、徒労感だけが残る見どころといえよう。

毎床井手
球泉洞
球泉洞の駐車場。あまりの趣味の悪さに思わず笑みがこぼれるこのモスク風の建物。その名も「エジソンミュージアム」。なんでも、森林について学べるらしい。せっかくなので拝見しようかと思ったが、「休館中」のようだ。かなり復旧の目処が立たなそうな空気が漂っているが、いずれその日はくるのだろうか。

IMG_0605
看板から昭和レトロな雰囲気が漂う球泉洞だが、これはなかなか面白かった。探検コースと普通コースがあり、探検コースの場合はヘッドライトと靴を受付で借り、ガイドさんと一緒に回る。行って帰ってくるのに1時間くらいのコースで1680円(一般コース料金+探検コース料金)。

球泉洞受付
球泉洞はいわゆる鍾乳洞なのだが、特徴は縦型であること。洞窟を横に進むのではなく、縦に降りて行くといった感じだ。

球泉洞

予想外だったのが、水の多さ。地下水といってもポタポタ染み出しているというレベルではなく、地中にある川なのだ。縦型の洞窟なので水が湧き出している滝もある。雨量や季節によって、水量が違い、水没する場所もあることから、インストラクターが付いて歩くそうだ。

球泉洞の滝
山の中に、風が通る穴がある、という地元の方の証言をもとに、愛媛大学の探検チームが最初ここを見つけたそうで、このアトラクションなまさしく、その探検隊が掘って行った穴を再利用したもの。

球泉洞
未だに月1ペースくらいで、何かしら継続的に探検隊が入っているそうだ。真っ暗で、地図もなく、ともすれば急流に流されて命を落としかねない危険な探検だが、地底の未知の世界を発見するワクワク感は何にも代え難いものなのだろう。球泉洞ではその一端を感じられる。

球泉洞
ラフティング&川下り
さて最後になってしまったが、日本三大急流でしられる球磨川。ここは九州で唯一ウォーターラフティングを楽しめる場所だという。同行しているカメラマンが「日本のラフティングなんて、ラフティングではない」と豪語し、目もくれなかったことから、今回は挑戦しなかったが、10月初めでも川下りしているボートを3隻ほど見かけたくらいだから、夏はきっとすごい人気なんだろう。

球磨川
所感
棚田好き&アウトドア派なら一日楽しめるおすすめの村だ。棚田は耕作放棄地も目立ち始めているので、今のうちに行くことをお勧めする(球磨焼酎の頑張りで、なんとか食い止められるといいけど…頑張れ渕田酒造!)。球泉洞については、願わくば、探検隊からの情報提供を得て、球泉洞の地質的特徴や発見など、知的好奇心を満足できる展示などあると更によかった。もしかして、それがエジソンミュージアムだったのかな…。


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