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DAY90 壺に耳をあてると発酵の音が聞こえるー鹿児島県霧島市・福山町の黒酢畑


霧島市・福山町に突如あらわれる「ツボ畑」

桜島を取り巻く錦江湾(鹿児島湾)をぐるっとまわってドライブ。晴れていると遠くに桜島がみえ、「鹿児島だなぁ~」という感慨にひたれる。

〒899 4501 鹿児島県霧島市福山町福山   Google マップ

湾の北側に位置するのは霧島市。その中心部から海沿いに東に走ったところに、福山町(2005年に霧島市に合併)がある。ここでは、日本でここだけのちょっと変わった風景をみることができる。

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壺畑の向こうに桜島をのぞむ

それがこの「壺畑」。まさに畑のように、大きな壺が並んでいる。福山町は山から海に向かって扇状に開けた土地だが、ここの平地部分にこんな景色が広がっているのだ。これの正体を突き止めるため、われわれは「くろず情報館」へと向かった。

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まだ新しいそうなくろず情報館&レストラン

ここは、黒酢製造会社のひとつ、坂本醸造さんが運営している情報館である。館内の展示では、実に丁寧に「福山の黒酢とは何か」が説明されていた。解説をお願いすると、超ベテランさんが丁寧に、黒酢の歴史について教えてくださった。

坂元のくろず「壺畑」情報館&レストラン
鹿児島県霧島市福山町福山3075

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色々テイスティングもできる。飲み過ぎるとむせます。

詳しい説明は現地にゆずるけれど、福山の黒酢は、奇跡のような製造過程を経てできる。黒酢というとなぜか通信販売の健康食品が思い浮かぶけれど、ここの黒酢は昔からの伝統食品。かつ、別に黒くしたかったわけではなく、ここの風土にあった作り方をすると、自然に黒くなってしまうのだという。

くろずの原料は蒸し米·米麹(こめこうじ)·地下水の3つだけです。米麹は、みそや醤油と同じ「黄麹(きこうじ)」を使います。

くろずの仕込みは、春(4月~6月頃)と秋(9月~10月頃)の年2シーズン行われます。壺の中に、混ぜ麹、蒸し米、地下水の順番で原料を入れ、最後に水面を振り麹で覆います。この振り麹の作業は、熟練した職人の手によって1本1本行われています。

くろずは1つの壺の中で、糖化、アルコール発酵、酢酸発酵が自然に進行する、世界でも類を見ない製造方法です。なぜこのようなことが起こるのか、まだ学術的に解明されてない部分も多いのです。
くろず情報館

上記WEBサイトにも写真付きの説明があるのだけれど、ようするにこんな感じだ。まず、壷の中に、麹と米と水を入れる。そして、麹をふりかけて(ふり麹という)表面を覆っておく。そうすると、まず糖化+アルコール発酵が進んで、お酒みたいなものができる。その過程で上面のふり麹(が発酵してどろどろになったやつ)が自然に壷の中に落ち込んでいき、酢の仕掛り品が酸素にふれることで、酢酸発酵が進みだすのである。そのあと、好きなだけおいて熟成して味をまるくする。

普通の酢の製造工程との違い

普通の酢(黒くないやつ)の場合、アルコール発酵のあとは、別の容器に移して酢酸発酵を進める。それが、黒酢の場合はひとつの容器の中で、なんとも絶妙なバランスで二段階の作業が進んでいくのだ。壷の大きさは、これより小さくても大きくてもうまくいかない。錦江湾の中でも、温度や風通しといった点で、福山町の気候でないとダメだという。そのあたりは複雑すぎて詳しいメカニズムはよくわからないので、江戸時代からつづく製法を遵守しているとのこと。

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なお、黒酢づくりを支える「ふり麹」は、パッパとふりかけているようで、とてもむずかしい技術らしい。イメージとしては、水の入ったお鍋に米をまいて上面をカバーしていく感じなのだが、下手な人がやると、隙間があったり偏ったり、振り過ぎたりしてしまうらしい。

達人たちは、日々壷のなかを竹の棒でかきまぜ、耳を近づけて発酵の音を聞く。それで、どこまで発酵が進んでいるのか、そして調子がわるい壷(発酵の進みが悪かったり、変な発酵をしていたり)がないかをチェックするのだという。製造業であり、農業のようでもある。彼らは壷が立ち並ぶエリアを「畑」と呼び、黒酢を「収穫する」と表現する。そんな表現がぴったりの景色だ。

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景色もいいけれど、知るともっと面白い黒酢の世界。お近くを通り過ぎるときはぜひお立ち寄りを!


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