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養殖場前

DAY114 美しい村連合・栃木県 那珂川町 小砂 アートと淡水魚の町 那珂川町にて鋭意活動中、パワー溢れる小砂Village協議会


栃木県初の美しい村連合、那珂川町(なかがわまち)小砂(こいさご)。本来、美しい村認定を受けているのは人口800人あまりの小さな地区、小砂のみ。ですが、せっかく訪問するなら町内全体を楽しみたいもの。ということで、今回は他地区も含めて那珂川町全体をご紹介します。

那珂川(那珂川町を流れる、那珂川)

道の駅ばとう
web上の情報が乏しく、全体像がつかめなかったため、まずは観光協会併設の道の駅ばとうへ。
ばとう那珂川町は2005年の合併で馬頭町(ばとう)と小川町が合併してできた町(地図右の中ほど)。小砂地区は、馬頭町内の一集落という位置づけのようだ。

那珂川合併地図(出典:市町村変遷パラパラ地図

道の駅ばとう併設の観光協会の片隅に、こんな出版物を発見!さすが観光雑誌のプロ、ドン○ホーテを紙面に押し込めたようなゴタゴタテイストは相変わらずだが、那珂川町の見所がよくまとめられている。これは参考になるので、訪問の際はご一読を(webでこのくらいの情報を見られるようになるとなおよし…)。

るるぶ那珂川となりの直売所は小さいけれど、品揃えよくおすすめ。

馬コロ@とりよし
さすが(元)馬頭町、どうやら馬肉を食べる文化があるようだ。さっそく馬刺屋とりよしへ。朝ご飯に、馬メンチ!を食べたかったけれど、準備できていないとのこと馬コロッケを購入。朝市揚げたてのためか、外はアツアツ、中はぬるかった…(;´-`)馬感は3%くらい。う〜ん、普通。
馬コロ
那珂川町では馬よりも、豚。町内産の黒豚ならぬ茶色豚の加工品を扱ったお店、レストラン巴夢のスモークハムは美味。ちなみに、地元意見としては、ランチセットより、お肉が厚めのディナータイムを狙うべしとのこと。また、那珂川町では、町で食肉加工場を保有している。今回は食べられなかったが、そこで処理された新鮮な猪肉商品「八溝ししまる」ブランドもおすすめとのこと。
レストラン巴夢

広重美術館
那珂川町には町内に3つも美術館がある、アートの町である。まずは町の中心部付近の那珂川馬頭広重美術館へ。時間的に厳しかったので入館は断念、従って、なぜここに広重なのかわからずじまいだったが、隈研吾さん設計の建物ということで、外観だけパシャリ。町中にあるのに、周りの自然とうまく解け合っていて森の中のような静けさを感じる。
広重美術館
もうひとつの美術館
広重美術館を諦めたのは、こちらを訪問するため。その名も「もうひとつの美術館」。廃校を活用し、2001年に開館した日本で初めてのアウトサイダー・アートの美術館だ。館長は、那珂川町の自然環境とおいしいお米と野菜に惹かれて、東京から移住してこられたという梶原紀子さん。
もうひとつの美術館鹿児島市で訪問したしょうぶ園でも感じたが、アウトサイダー・アートからは、ものすごいパワーを感じる。評価とか、名声とか、人の目線を気にせず、ただそうすることが気持ちいいから、という理由で生まれる作品たち。画材もボールペンやマジックで、犬や飛行機といった、これまた身近な題材を描いているが故に、作者の思わぬ視点に「普通」が揺さぶられる感覚。
梶原さんと梶原さんに気に入った作品を告げると、作者の性格や、その作品ができるまでのストーリーを聞かせてくださる。これがまた温かくって、面白い。思わず、色々お聞きしたくなる。

いわむらかずおさんの美術館
ちなみに、今回はタイムオーバーで訪問できずだったが、那珂川町のもう一つの美術館は、いわむら かずおさんの絵本の丘美術館。小さな頃に14ひきのシリーズが大好きだった私としては是非訪問してみたかったところだが、残念。時々、岩村さんご本人による読み聞かせイベントもあるのだとか!聞いてみたかったなぁ〜><

14ひきのシリーズ(出典:絵本の丘美術館web site

唐の御所横穴
那珂川町には美術館だけでなく、史跡や寺社も色々ある。その一つ、唐の御所横穴を道ばたに発見し、車を停めてみた。この辺りには古墳時代のものと考えられる横穴が20基以上も点在しているという。が、ひときわこの横穴を有名なのは、ただの洞穴ではなく、穴の内側が屋根形の傾斜に削られ、入口には戸をはめ込むための彫り込みがあるという精巧なつくりのため。
横穴平の将門の娘がここへ逃げてきて出産するとき「唐土帝妃」を名乗ったことから、この名がついたとのこと。
もみじいわむらさんの本に出てくるような、秋の森。どんぐりがいっぱい落ちている。カサッカサッと、足が沈んで行くような落ち葉の感触が気持ちいい。いわむらさんが那珂川を気に入り、住み着いたのは、こんな森が好きだったんだろう、と私の心は横穴より14匹シリーズへ…。

だいこん
横穴の下で大根を干していたおばちゃんにご挨拶すると、お土産に大根をくれた!なんと、この旅で4本目の大根をゲット。ちょうど収穫の時期なのか、那珂川町では色とりどりの野菜やお花が、畑にきっちりと並んで植わっていて、秋の紅葉の風景の芸術性を一層高めていた。あらためて「どこが」と言われると指差しようがないが、普通のお庭や畑がとてもきれい。
那珂川町の畑

温泉トラフグ@みず乃
ランチは楽しみにしていた温泉トラフグを食べるため、定食屋のみず乃へ。那珂川町では、とらふぐが塩分を含む温泉水で養殖されている。海のない栃木県にあって、トラフグが地域の特産物になりつつあるのだ。
温泉トラフグ
温泉とらふぐをメニューとして出してくれる地域のお店は多いものの、2日前までの予約が必要なところが多い。その中で、「翁の館」と、こちら「みず乃」では、当日でもふぐ料理が食べられる。みず乃の方は3,000円のふぐ定食と、ちょっとお値段は張るが、ふぐ皮の酢みそ和えまで付くので、値段は目をつぶることにしよう。6,000~8,000円の本格コースも楽しめる。

温泉トラフグ養殖場見学
せっかく食べたからには、とらフグを一目見てみたい….!通常は見学は受け付けていない、とみづ乃の女将さんに言われたものの、ダメもとでフグの養殖場に直接お電話をしたところ、幸運にもOKをもらえた!!
養殖場
ふぐの養殖会社を経営している母体は、水質検査や環境分析の専門会社。6年程前に「地域のためになにかできないか」と、考えられた社長さんが、この土地の温泉に含まれる塩分に着目したフグ養殖が試験的に始まった。最初は廃校の部屋にたらいを並べて栽培を始めたが、老朽化に伴い、現在では町の廃プールに移動し事業を継続している。
ふぐプール
温泉で育ったフグには、フグ特有の毒がない(海水中にいるプランクトンがいないため)上、海水より生育が早いという利点がある。現在、絶品のフグ肝は、危険なため、特別に条例が設けられている大分市以外では食べられない。が、那珂川町でもフグ肝が食べられる日は近い(といいな。那珂川町の方、是非条例化を)!!
泳ぐ温泉トラフグ
近年はフランチャイズ化も手がけ、既に全国に12拠点、温泉とらふぐ養殖場を展開しているのだという!なんと、サイドビジネスとして始まった事業を6年間でここまで拡大したとは。

トラフグの謎
しかし、なぜ、この町で温泉とらふぐだったのか?その謎の一端は、那珂川町のもつ、意外な一面との関係がありそうだ。なんと、海のない栃木県にあって、なぜか那珂川町の県立馬頭高校には「水産科」があるらしいのだ!しかも、日本で唯一、淡水魚を専門とする水産科。おまけに、町にはこれまた日本で唯一の、淡水魚水族館もあるらしい。那珂川町は知られざる、日本の淡水魚拠点だったのだ。今回快く取材に対応してくださった杉浦さんも、こちらの馬高水産科出身。若くして、この会社の技術は彼の手にかかっている。
杉浦さんと
後で調べてみて判明したが、日本産淡水魚分布データベースによると、日本の淡水魚の分布は栃木県付近に集中している。(本DBは1960年代、護岸工事や河岸の乱開発前の豊かな漁場が存在していた頃のものなので、現状では不明との注意書きあり)。なるほど、このような背景があって馬高には水産科が設置されたのであろう。それが、温泉とらふぐ養殖となって現在につながったとは、非常に興味深い!思いの外、ストーリーのある事業だったのだ。

淡水魚分布(出典:日本産淡水魚分布データベース)

藤田製陶所
さて、次に、やっと本命の小砂へ。小砂ではまず、美しい村認定理由のひとつともなった、小砂焼きの藤田製陶所の陶工さんである、藤田さんを訪ねた。小砂焼きは水戸藩おかかえの御用窯として江戸時代から始まった。藤田さんはその頃から数えて6代目に当たるそうだ。
藤田製陶所
伝統的な小砂焼きの特徴は、やや陶石まじりの粘土と、黒に黄金色の結晶まじりの釉薬。藤田さんは工房で土づくりからやっているため、その特徴的な土の様子がよくわかる。写真中、白いのが陶石(つまり、普通は陶器ではなく、磁器のための石)。
小砂焼き
この土をローラーで細かく砕き、水を加えて泥にし、濾して粘土をつくる。日本一周、いくつか(とくに九州で)窯元をまわったけれど、土からつくっているのを見たのはこれが初めて。
小砂焼きケーキ
タイルが敷き詰められた工房の床をよく見ると、タイルにKKという文字が。これは、この工房の前身、大正時代の「関東化粧煉瓦株式会社」だった頃のマーク。堅くて耐久性に優れていることから、銀座の石畳煉瓦として長年使われ、その改修の際に、場所を変えて現在の戸越銀座のタイルとして使わることになったそうだ。
KK煉瓦
小砂Village協議会
製陶所のすぐ横、カフェ陶里庵(とうりあん)にて小砂village協議会の皆様と、那珂川町役場の露久保さんにお話を伺うことができた。小砂の美しい村加盟のきっかけは、非常に珍しい、ボトムアップ型だ。フランスで美しい村連合を知った、小砂唯一のホテル「美玉の湯」の総支配人さんが、小砂でも加盟しよう!ということで、地元で協議会を立ち上げ加盟にこぎ着けたのだという。陶里庵
美しい村審査員来訪の際は、小砂地区の人総出で審査員を拍手でお迎えしたというエピソードが、他の村との違いを物語る。「何もないから、自分たちで動かなければ」という意識が非常に強く、美しい村に加盟することを目標に、地元主体でアートイベントも開始した。美大生とコラボレーションして、町の中にアート作品をポツポツと展示したのだそう。ただでさえ美術館が多く、陶工やアーティストの移住が多いエリアに、新たにアートトリエンナーレ的な要素が加わり、小砂=アートの町というアイデンティティが生まれつつあるようだ。小砂village協議会の方と
今年から「棚田オーナー制度」もスタート。1年に4回、農家民泊をしながら、田植えから借り入れまでを体験するというもの。最後に、周辺にあるというアート作品をチラ見していこうと思ったが、すっかり話し込んで、日が暮れてしまっていたので発見できず。ひとつだけ、それらしきものの痕跡…。
アートらしきもの

美玉の湯
栃木の11月はもう寒い。那珂川町の締めくくりは美玉の湯へ。源泉かけ流し、ラドンを含むアルカリ性単純泉の濁り湯。優しい泉質はいいが、めっちゃくちゃ熱い!じんじんする。地元の人によれば、横の水風呂と交互に入ると効果的だそう。(16時以降の日帰り入浴は地元価格になるので、夜が狙い目です!)
美玉の湯
まとめ
美しい村連合加盟の小砂地区については、その運営主体である小砂villageの方々の活発な姿が印象的だった。美しい村加盟によって、全加盟村の中で最も積極的に動いている人々ではないだろうか。私たちのアポの前にも、後ろにも、みなさん別のイベント企画のアポ続きで、色々な企画が目白押しで忙しそうだった。

ものすごく地元リーダーの方々が動いている、と感じられた一方、どこまで、その他の地域の方々がついてきているのかがちょっと気になるところではある。また、イベント型だと、我々のように、なんでもない休日にふらりと旅にきた若者など、何をしてよいのかわからない嫌いもあるので、今後はイベントと並行して、なんでもない平日に行っても楽しめるスポットの情報発信にも期待したい。


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