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新庄宿

DAY58 美しい村連合・岡山県新庄村:メルヘンの里に隠された秘密 & 番外編 勝山町のパン屋タルマーリー


美しい村連合・岡山県の新庄村(しんじょうそん)、に、お邪魔する前に、同じく岡山県内の勝山町にあるパン屋タルマーリーで朝食。タルマーリーのオーナーである渡邊イタルさんの著作、「腐る経済」は、この旅への出発直前に読んだ本で、とても共感する部分が多かったので、是非、足を運びたいと思っていたところだった。

腐る経済カバー(出典:ミシマ社

できれば渡邉さんにインタビューもしてみたい、と思ったものの、あいにく、最も忙しいであろう土曜日の朝に勝山町を通るコースとなってしまったため、今回はお食事だけ楽しませてもらうことにした。

勝山町は美しい村でもなければ、重伝建でもないが、山陰と山陽を結ぶ出雲街道の宿場町であった、その面影がよく保存されている。外観が保存されているだけでなく、ちゃんとお店として活用されているところが多い。

勝山町のまちなみ勝山の町を歩いていると、もうひとつ気になるのが、様々なデザインの素敵な暖簾。これは、商店街の中の「ひのき草木染め工房」さんがつくっているもの。何か町の特徴になるものがあれば、といくつかの店で掛け始めたところ、最近では一般のご家庭も掛け始めたという。もちろん、全部自腹だ。意識の高さが伺える。

ひのき草木染め工房タルマーリーもそんな町の一角、以前は醤油蔵であったという古い建物を改装したパン屋さんになっている。醤油もパンも、発酵というプロセスは一緒。この蔵に住んでいる菌は、美味しいパン造りにも活躍しているらしい。

タルマーリーちょうど中国山地の中程にあり、太平洋側の岡山市からも、日本海側の米子市からも憂に1時間以上はかかる場所にある勝山町は、緑に囲まれた小さな町だ。しかし、タルマーリーが近づいて来ると、にわかに都会的な雰囲気の若い人たちがうろうろと姿を現す。近くの町並み観光駐車場もいっぱいだ。

高瀬船カウンター席に陣取って、スタッフさんのお話を伺ったところ、以前から飲食業で働いていたけれど、タルマーリの理念から学ぶことが多く、ここで働くために、東京から移住して来られたんだとか!「関東圏から働きにきているスタッフも結構いますよ。」と至って涼しげ。面接で勝山町に来たのが初めてで、それまでは来たこともなかったそうだ。環境と同じく、理念で人は動く。強力な魅力をもつ企業は、どこだろうと関係なく人を惹き付ける磁石になるようだ。

タルマーリーキッチンカウンターの横には地元の常連さんが雑誌を読みつつ、仲良しのスタッフさんとおしゃべり。夜は何かイベントがあって、一緒に行くらしい。裏のお庭とつながった土間になっている店内を、渡邉さんのお子さんと、隣の子が駆け回っている。なんか、小さいけれど楽しそうな町だ。ビール酵母、レーズン酵母などなど、色んな天然酵母で醸されたパンと、きんぴら、ラタトゥイユのプレートをいただき、本日の目的地、新庄村へと向かった。

タルマーリープレート

メルヘンの里 新庄村

美しい村連合のひとつ、新庄村は、勝山町から出雲街道を車で30分程、更に山を登って行ったところにあった。新庄村の人口は894人(2014年推計人口)。岡山県内で最も小さく、明治以来一度も合併していない。2005年の合併で、真庭郡に属する新庄村以外の自治体が全て合併したときですら、新庄村は独立を守り抜いたのだ。その事実からも、何かものすごく強い意志を感じる。さて、どんな村なのか。

新庄村(出典:パラパラ地図

しかし、新庄村には観光協会というものがなく、あいにく休日で役所もお休みだったため、話を聞くことができない。そして、WEBで観光マップすら見つけることができない。さて、どうしたものか…。ひとまず、情報収集のため、道の駅「メルヘンの里 新庄」へ。

メルヘン(出典:江西あきよしさんのブログ

思わず「メルヘン」の意味をスマホで検索して再確認してしまうような外観である。が、新庄村に来たら、ここがマストゴーなスポットである。なぜなら、他に空いている場所は殆どないからだ。また、積極的な理由としては、道の駅併設のレストランで、この町の特産である「ヒメノモチ」という絶品餅が食べられるからである!

ヒメノモチ
新庄村は30年も前から「特別村民制度」を設立し、年会費約1万円で、夏と冬の年2回、会員に村からの食料を届けているそうだ。もともと東北地方の品種であるヒメノモチのもち米。以前、新庄村では自家用にだけつくっていたものだそうだが、冬のギフトとして特別村民の方々に送ったところ、「なんだこのうまい餅は!」ということになり、再注文が殺到。それをきっかけに、ヒメノモチの生産に特化し始め、現在では村の田んぼの8割程度がヒメノモチをつくっているのだそう。写真は新発売「牛餅丼」。確かにものすごいコシで、のびるのびる!30cmくらいは伸びるのではないか。その他、ヒメノモチプロダクトとしては、ワッフルを真似たモッフルなる食べ物もあるそうだが、見当たらず断念。

ヒメノモチ

さるなし
メルヘンの里で発見したもうひとつの名物が「さるなし」。小さくて、毛のないキウイのようなもので、キウイの原種に当たる植物だという。レジのおばちゃんにあれこれ質問していると、おばちゃんが店の裏から実物をもてきてくれた。10月になったら熟れておいしいそうだ。さるなし酢というのを購入してみたが、そもそも酢が酸っぱいので、よくわからなかった。さるなしはジャムに挑戦すべきであった。。。

さるなし(出典:さるなしジャム考

新庄宿へ
さて、新庄村の美しい村選定ポイントは「出雲街道新庄宿」と「がいせん桜」そして「毛無山」だ。なんとか観光マップを手に入れ、まずは道の駅からほど近い新庄宿へ。がいぜん桜と言われる、日露戦争での勝利を記念して植樹された樹齢100年以上の桜が、通りの両側に植わっており、トンネルをつくっている風景はなかなか。

新庄宿両側に水路も整備されており、各家の前に水がひかれていて風情がある。昔は生活用水として使っていたのだろう。この鯉達も、きっと重要なタンパク源だったに違いない。

池

ちょうど通りの真ん中くらいに、参勤交代の際の宿泊に使われた脇本陣、木代邸がある。醤油蔵としてつかわれていた場所に「さくら茶屋」もある、と案内にあった。どちらも定休日ではないはずだが、なぜかお休みのようだ。新庄宿の入口に「できるだけ車で入らないでください」との立て看板がある割に、この陣屋横には立派な駐車場があって、なんだか色々ちぐはぐである。

 

また、新庄宿の所々に、新庄剛志船主の足形や手形があったり…。ちぐはぐ感は更に高まる。

新庄足跡
新庄宿を通り抜けたところに、町役場。やはりこれもテーマはメルヘンなのか。メルヘンという言葉がもつイメージと宿場町やヒメノモチのイメージは、不思議の国のアリスともののけ姫、いや時代劇くらいかけ離れている。この村の人はどのような自己認識を持っているのであろうか。気になるところである。

役場

毛無山
もうひとつの美しい村ポイント毛無山を、新庄宿から望む。ここから、山の麓の登山道入口までは車で15分くらい。

毛無山登山道の近くにある山小屋、「山の家」。休憩所であり、事前に連絡すれば宿泊所にもなる、とWEBにあった。が、土曜日にも関わらず、ここもお休み。雨も降りはじめ、悲しくなってくる。

山の家毛無山は山頂付近に木がないことから、毛無しと命名されたそうだ。この辺りから「ゆりかごの小径」という森林セラピーロードも始まっている。県下最大の天然のブナ林があるために、生物量も多く、非常に希少な生物もいるらしい。大山隠岐国立公園にも指定されている。

その他
google mapで、ちかくに「たたら場」と表示されているのを発見。鳥取だから、古くは金属の精製をしていたのかもしれない、サプライズで面白いものが発見できたらと、期待に胸を膨らませて探したが、杉林があるばかりであった。みなさんもひっかからないように。

たたら場その他、郷土料理が食べられる、という山の駅「味わいの宿」も、メルヘンの里の店員さんにお聞きしたところ、最近経営が変わって営業していない、という。

農村風景特段、展望台が用意されている訳ではないが、谷間に広がる緩やかな傾斜の田んぼはきれいだった。くねくねした地割りの田んぼがまだ残っていたから、整地していない、昔ながらの田んぼをあえて残しているのかもしれない。が、本当になにもとっかかりがなく、誰ともさしてお話できなかったので、真相はわからない。雨も降り始め、もうやることもなくなってしまったので、滞在時間3時間程で村を後にした。美しい村中、最も短時間の滞在である。

編集後記
この記事を書くにあたり、改めて、新庄村について調査したところ、起業雇用創造協議会のウェブサイト「村ゼミ」を発見。著名な方を講演に呼んで話を聞いたり(どんな人がオーディエンスなのかは不明)、若い人の起業支援、大学生の受け入れ、村外でのPR活動等、活発に活動しているグループもあるようだ。なるほど、もしかしたら、観光客目線ではなく、徹底的な地元目線で、ソトモノには容易にわからない充実した暮らしが隠されていたのかもしれない。そうであれば、確かに素晴らしい。

村ゼミ(出典:村ゼミウェブサイト

調べを進めると、新庄宿は、なんと祖谷、小値賀と並んでアレックス・カーが日本の素晴らしい田舎と称している場所だということもわかった*。さらに、2010年までに加盟した美しい村連合の審査で、最も高い点数で承認された村である、という記事も見つけた**。天気が悪かったのを差し引いても、なぜそんなに評価が高いのか、現時点では全く理解できない。私たちは大切な何かを見落としたのだろうか?それとも何か、知らず知らずのうちに架空の世界へでもひきずるこまれていたのであろうか、まさか、それがメルヘンの里。。。

そういう意味で、真相を知るべく、今となってはもう一度行ってみたい村となった。

*  GQ

**日本再発見塾

 

 


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