© coinaca/コイナカ All rights reserved.

ランチ

DAY99 美しい村連合・鹿児島県 喜界島 【後編】人々のあたたかさと自然の生命力をいっぱい吸い込む幸せな島時間


<<喜界島【前編】はこちら

翌朝は、朝いちで釣りへ。おもてなしハウスから徒歩5分もしないところに、花良治(けらじ)の海辺がある。コンクリの防波堤が続き、その上を平均台を渡るようにそろそろと歩く。左手にはジャングルのように生い茂るガジュマル、ソテツ、そして見ず知らずの鯉緑色の草木の蔓。海岸には砂でも岩でもなく、ゴツゴツの珊瑚の死骸が波打ち際までずっと続いている。所々に、小さな潮溜まりがあって、全てが朝日で赤く染まっている。

朝日に染まる海岸
私は夕暮れどきより、朝焼けの、この時間帯が好きだ。インドの最南端、ケララ州でヤシの木の生い茂る森を散歩した、なんでもない、けれどかけがえのない満たされた時間の記憶が、突然、心のひび割れから染み出てくる。自然には、なにか言葉を超えて心を揺さぶる大きな力があるみたいだ。「私は、東北のような照葉樹林生い茂る山深さではなく、この、台風にやられようがニョキニョキと生き返る生命力の強さに、大自然を感じるんですよね。」という、昨日の上園田さんの言葉が蘇り、身体で理解できた気がした。

花良治の海岸

旧滝川小学校
島の真ん中辺りの高台に城久(ぐすく)集落というのがある。その名の通り、以前はそこに城があったのではないかとされている場所で、畑の造成前の発掘調査を行っているそうだ。そこで歴史の常識を覆すような発見がされているという。前日の夜、公民館で飲んでいる間にその話になり、今日は花良治の森本さんが案内してくれることになった。この島の人は本当に親切だ。

滝川小学校
例えば、このふいごの羽口。これは製鉄する過程で、空気を送り込んで温度を上げ金属を溶かすのに使われた器具だ。これまで製鉄の技術は日本の本土にしかなかったとされてきたのだが、どうやらこの島にもかなり早くから存在したらしいのだ。また、大名や公家など高級な人の間でしか取り扱いが許されていなかった青磁の破片も多数発見されており、奄美群島全体の統治機構がこの島にあったのではないか、という説も唱えられ始めているのだとか。


地下ダム
喜界島には巨大な地下ダムがある。珊瑚でできた島なので、水はけがよ過ぎて雨が降っても流れ出てしまうため、地下に巨大なコンクリの壁を埋め込むことで、地下水をせき止め、そこから汲み上げて水を使っているのだ。かといって、昔から島は水に悩まされてきたのかといえばそうではなく、この日、島を案内してくださった森本さんのお話では、子供の頃は水田もあったし、至る所で清水が湧いていたという。

森本さんと

それが、政府の施策によりサトウキビの栽培が奨励され、農地の整備が進むに伴い、農業用水が必要になったため、地下ダムがつくられたのだという。現在、人口は減り、サトウキビ農家は衰退しているにも関わらず、まだまだ農地は拡大しているそうで、なんだか矛盾を感じだ。

地下ダム
土地改良センターで地下ダム見学をお願いすることができる。まず15分程度のビデオ上映があり、実際に地下20mのところにある、地底のトンネルに降りて行く。かなり高さがあるトンネルがどこまでも続き、白蛇の体内を通っているよう。とても音が響くので、音楽イベントなんかやたらすごいんじゃないか。

地下ダム
農産物加工センター
地底トンネルを出たところに農業物加工センターがある。その名の通り、島の農産物を加工する器具や調理室がそろい、カフェ「ゆい」と加工品の販売店舗も併設している施設だ。そこで勤務されている外内(とのち)さんがおすすめしてくれた新開発のそら豆ラテで一服。確かにこれはおいしい!

そら豆ラテ
黄金のさなぎ
また、このセンターの中庭では、「南国の貴婦人」の別名を持つ、オオゴマダラという蝶の黄金に輝くさなぎをみることができる!どうして自然界にこんな鮮やかな色が存在できるのだろう。ある意味不自然なほどピカピカした、おおきなさなぎだ。オオゴマダラは喜界島が生息の北限だそうで、本州では見られないレアもの。
オオゴマダラ

胡麻日本一
喜界島の隠れた日本一は胡麻の生産量。ちょうど胡麻の収穫時期で、案内をお願いした森本さんも、午後からは胡麻の収穫作業があるという。島の至る所で、こんな風に胡麻を干している光景が広がっていた。高価でなかなか帰るような代物じゃないけれど、本当の胡麻はちょっとひらぺったくて、すごい風味が高くおいしかった。国産でこんな美味しいものがあるのなら、もっと国内で流通して手軽に手に入るようになればいいのにな〜。

胡麻

三味線日本一さおりさんの歌声
島が誇る、もう一つの日本一。前日お世話になった得本さんが勤務する民族資料館(中央公民館)には、なんと小学校三年生から島唄を歌いはじめ、数々の賞を総なめにして来た川畑さおりさんが勤務している。民謡の大会では何度も日本一に輝いている超実力派だ。大学卒業後は保母さんもやっていたという、その優しい雰囲気からは想像できないような張りのある歌声だった。川畑さんと
全国での公演でお忙しい中だったが、とてもタイミングよく島にいらっしゃり、なんとその歌声を披露してもらえることに!ちょっとばかり島の太鼓のリズムのレッスンを受けて、歌と三味線と併せて一緒に叩かせてもらったのだが、なんだか踊り出したくなるような愉しさ。ほんの少しの間だったけれど、島のリズムが自分の身体の中に入ってくるようで、気持ちがよかった。

川畑さんと

養護施設でランチ
ランチは、得本さんに誘っていただき、得本さんが理事を勤める養護施設にて、みなさんの手づくりカレー
かつてノロの文化が存在し、精神障害を持った人にも、この島に暮らす場があった。にもかかわらず、10年程前までは、島に擁護施設などなかったため島には一緒に住めず、皆、鹿児島まで行かなければならなかった。得本さんたちの働きかけにより、徐々に福祉も充実し、島でも障害を持った人が歩けるようになったという。得本さんは島民もより多様な人を受け入れられるようになると喜んでいた。得本さんは民俗学の深い知識があるだけでなく、歴史と現在を一連続で考え、それを今に活かすべく活動されている。素晴らしいことだ。

ランチ
スギラビーチ
日本で最もスリルがあるビーチかもしれないというスギラビーチ。空港の真裏にあるため、目の前で飛行機が離発着する。喜界島は珊瑚でできているため、海岸はごつごつしていて天然のビーチはなく、ここは砂を入れてつくられた唯一の人工ビーチ。白砂に映えるコバルトブルーが美しい。

スギラナビーチ
ガジュマルの巨樹
午後からは農産物加工センターでお話した外内(とのち)さんが島を案内してくれることに。この島にはとにかくガジュマルが多い。明らかに、それが異国感を醸し出す要因の一つだ。そのなかでも、このガジュマルは奄美群島内で最も大きいのではないかといわれているガジュマル。ガジュマルは不思議な木で、自らの枝が支えられなくなると、枝からツルのように根が伸びて幹のような根になっていく。元の木を想像するのが難しくらい、幹が絡み合って、なんだか生き物のよう。

ガジュマルの巨木

一本道
「え、あそこでジャンプ写真をとってないんですか!!あれはマストです!!」と、外内さんの前振りだけを聞き、何が写るのかドキドキしながら案内してもらったのがこの場所。一面のサトウキビ畑の中にまっすぐ続く1本の道。ここで写真を撮ると…!? ビヨ~ンッ!!なぜかめちゃくちゃ高くジャンプできてしまうのです!秘密は行ってからのお楽しみということで^^

一本道
阿伝(あでん)集落
昔ながらの石垣が残っている阿伝集落は美しい村の認定ポイントでもある。奄美群島の至る所にあったというこの石垣だが、ハブの格好の住処となることから、その多くが既に取り壊されブロック塀となっているそうだ。喜界島は幸いハブが生息していないことから、比較的石垣が残っているが、その中でも最も保存状態がよく、昔の雰囲気を残しているのがここ阿伝集落だ。

阿伝集落
台風の多い島で、防風壁としてつくられたこの石垣。珊瑚質の石はゴツゴツしていてその凹凸が組合わさる上、隙間から程よく風や水を逃してくれるので、見た目よりもずっと丈夫とのこと。

阿伝集落

杉俣さんの製糖工場
次に案内していただいたのは早町(そうまち)という集落に位置する杉俣さんの製糖工場。サトウキビ畑が広がるこの島の特産品は、黒糖とザラメ糖。製糖工場は大小22軒程あるという。今回訪問させていただいたのは杉俣さんの工場。ご出身は東京足立区、自動車会社で研究開発の仕事をやっていたという異色の経歴。仕事の傍ら携わっていたNPOの研修で喜界島を訪れて黒糖の製造工程を目にしたのがきっかけで、移住してしまったのだという!今では島で結婚もし、やっと言葉もわかってきたそうな。「すごい決断をさらりとしましたね!」と驚くと「え、そんなにすごいですかね…」と落ち着き払ったご回答。

杉俣さんの工場
杉俣さんは、無農薬でサトウキビを栽培するところから手がけている。収穫は12月頃から。製糖の作業も収穫が始まってから冬場がピークとなる。私たちが訪問したのは10月だったので、工場は空っぽだったが、製造過程を丁寧に説明してくださった。まず収穫したサトウキビを搾って、加熱し水分を蒸発させては鍋を変えて温度をあげ、最終的にドロッとした液体を板の上に延ばして冷まして、切り分ける。

黒糖づくり

至ってシンプルなプロセスだけれど、それ故素材のよさがものを言う世界なのでしょう。できたてのあたたかい黒糖は製造現場でしか味わうことのできない絶品らしい!!!ぬぬぬ。これは…冬に再訪したいものである。

黒糖ほんとうはこんな色
お土産に黒糖をゲット^^なんだか、色が白くありませんか?実はこの黒糖というもの、できた時期と熟成度合い、そして材料により色が異なる。なんと、一般的に売られている黒糖は、サトウキビの栽培の手間がかかるため、普通のお砂糖を混ぜて製造していることも多いのだとか。購入する時に成分表を見れば一目瞭然。純粋な製品は「黒糖」、混ざり物がある製品は「加工黒糖」と表記されてるのです。純粋な黒糖は、甘いだけでなく、風味と味がある。本物はおいしかったんだ!とちょっと驚いた。

杉俣さんの畑にて
夕飯@十兵衛
怒濤の2日間の喜界島滞在を締めくくる夕飯は、ヤギ料理。この島、以前は一家に一頭ヤギ、という時代があり、現在でも集落で何件かはヤギを飼育しているそうな。ヤギのいる家は、エサのクワの木の葉を刈うのが子供達の仕事で、そのために放課後遊べなかった、とも聞いた。なにか祝い事があれば未だに「ヤギをつぶす」そうだ。

ヤギ刺
奄美、沖縄では広くヤギを食するそうだが、この島のヤギはクワの葉だけを餌にしているから臭みがなく、刺身でも食べられるそう。ヤギの刺身が食べられるという、十兵衛で夕飯を食べることに。伊藤さん曰く、島の食堂はどこも美味しいそうだが、観光地化されていないためであろう、郷土料理を出す店は少ないという。その中で、この十兵衛と、うどん屋のでこというお店では比較的島のものが食べられるとのこと。ヤギ刺し!確かに臭みはなく、皮の部分はコリコリで、ミミガーに似ている。

ヤギの血炒め
そしてヤギのレバーと野菜をヤギの血で炒めたというカラジュウリ。お店のお兄さん曰く「食べやすい」そうだが、私は一口でダウン。注文した同行者が責任を持って平らげてくれた。偉い!そして島の方おすすめの夜光貝(やこうがい)の刺身。夜光といっても発光するわけではなく、貝の内側の白い部分が美しく、螺鈿細工の材料として非常に高価で取引された歴史があるらしい。

夜光貝刺身
フェリーターミナルへ
食事も終え、フェリー乗り場へ。喜界島も、10月ともなるともう寒い。港はなおさらだ。夜空に光る星が綺麗で、帯状に白く天の川まで見て取れた。ちぢこまって見上げていると、流れ星が通った。台風明けで、各港での積み降ろしに時間がかかっているらしく、2時間程の遅れ。入校してきたときには日付が変わっていた。
フェリーターミナル
さすがに深夜ともなると、フェリー内での酒盛りも始まることなく、載るなりみな毛布にくるまり横になった。たった2日間だったけど、島の方のものすごいお世話焼き精神により、たくさんのことを感じ、学べた場所だった。この島では、近代化が進んだ現在でも、歴史の連続の上に、現在の営みがあるように感じた。

オオゴマダラ

もちろんサトウキビ畑の採算が全くとれなかったり、雇用がなかったり。人口減少や高齢化だって避けられている訳ではない。しかし歴史が息づき、文化が残る、この暮らしを大切に思っている島の人がたくさんいて、島暮らしを楽しんでいる。自分勝手なことをいわせてもらえば、この空気感を失わないでいてほしい。そしてこのblogを読んでくださっている方々に、是非、今のうちに喜界島へ!というか喜界島の人々に会いに行ってほしい。

サトウキビ畑

まだ、この島の何がそんなに私を惹き付けるのか、うまく自分でもわかっていないけど、自分がお客さんなのに、お客さんでなく、もっと親しい何かとして受け入れてもらえたような、とても特別な島だった。感受性の目を覚まさせてくれる島、喜界島、おすすめです。


キーワード,



関連記事

落合ダム

DAY12 美しい村連合・北海道赤井川村(1) 小売店ゼロの村(?)で暇を持て余していたら

人口約1,200人。美しい村連合加盟村の中でも小さなこの村。美しい村認定理由は「カルデラ」と「農業」。これって、日本中、どこにでもあるよね?…

おばばのお話

DAY93 美しい村連合・宮崎県椎葉村 クニ子おばばと不思議の森へー大切ななにかを思い出せる場所

「クニ子おばばと不思議の森」というNHKスペシャルの番組を見て以来、いつかは訪問してみいと思っていた村、宮崎県 椎葉村(しいばそん)。宮崎県…

メジカの刺し身

DAY73 重文景観・高知県中土佐町の久礼大正町市場でメジカを食す(夏季限定)

高知(土佐)といえば、たんまりと薬味がのったカツオのタタキであるが、少し足を伸ばした中土佐町でちょっと変わった魚が食べられると聞き、足を伸ば…

藤原さんと2

DAY29-2 美しい村連合・長野県南木曽町 町並み保存のパイオニア妻籠宿で学ぶ

長野県南木曽町(なぎそまち)にある妻籠宿は中山道の42番目の宿場として栄えた町。そしてここは、南木曽町が美しい村連合に加盟するはるか昔から、…

田尻家

DAY56 美しい村連合・兵庫県香美町小代地区 99.9%の国産黒毛和牛はここから生まれた!和牛のふる里の人々は温かく親切だった 

美しい村連合 兵庫県 香美町小代(おじろ)地区。ここは珍しく、地域自治区単位で連合に加盟している。2005年の3町合併(美方町、村岡町、香住…

ページ上部へ戻る