© coinaca/コイナカ All rights reserved.

朝市

DAY5 美しい村連合・山形県大蔵村 過去の栄華に溺れ沈む湯治場と滑り落ちる棚田の村


山形の南端、飯豊町から北上すること4時間程。山形の北の端っこに位置する大蔵村に到着する頃には日が沈みかけ、ひどい夕立に見舞われた。この村では、温泉宿に泊まることにした。大蔵村は、数少ない伝統的な湯治場として知られる、肘折温泉を抱えており、湯治宿とやらを体験してみたいと思ったからだ。

大蔵村マップ

大蔵村は縦に長い。肘折温泉郷と四ヶ村の棚田が見所。というか、そこしかいってない。

湯治場時間の夜ははやい
降りしきる雨。とりあえず、観光協会がしまる前に、電話で宿を予約しまおうと、17時をちょっと過ぎていたが急いで電話。そもそも観光協会という組織はなく、役所の観光課につながる。が、担当者は退庁しており、観光案内センターにつないでくれた。

「今晩、二人で素泊まりなんですが…」
「あぁ〜この時間じゃ、停めてくれる宿はないがなぁ」

…!? な、なんと、17時から入れる宿はないとのこと。楽天トラベルもバグっているのか、空室情報は表示されず。狐につままれたような妙な気分で、仕方なく役所HPにあるPDF(PDF!!)の宿リストといくつかのblog記事を頼りに電話。

西本屋旅館:「今日はいっぱいです〜」
私:(…うそでしょ?)
丸屋旅館:「今日は従業員帰ってしまいまして…」
私:(ええっ、じゃ、あなたは誰!?)
という攻防戦のあと、ようやくえびす屋さんに泊めてもらえることに。どうやら湯治場には独特の湯治場時間があるようだ。

肘折温泉丸屋25軒あまりの温泉宿が密集。外から見た感じ丸屋さんは風情があってよさそう。愛想はなかったが…

時がとまった町
肘折温泉郷はカルデラの中にすっぽり入り込んでいるため、突然ループ橋*の下に温泉宿群が姿を表す。狐につままれた気分さめやらぬままだったからだろうか。迷路のように入組んだ、路地のような道路と、所狭しと並ぶボロボロの温泉宿に、タイムスリップしてしまったような気分になる。千と千尋の物語に迷い込んでしまったようだ…と書きたいところだが、そのような趣は全くない。現実世界がそのままボロくなった感じ。

肘折温泉のぞみ大橋から望む肘折温泉郷

湯治場のいろは
湯治宿の洗礼はまだまだ続く。タオル、浴衣、歯ブラシといったアメニティは一切提供されない**。また、部屋には鍵がない。障子だから鍵がかけられないというのが正しい。トイレは共同で、炊事場がついている。サービスで、宿のおばちゃんが音もなく乗り込んできて、梅干しをおいていったりする。不思議なこと極まりない。

炊事場湯治場独特の自炊場。質素だが、ちゃんと大根おろし器があるのが山形っぽい。

朝市にみる農村の高齢化
翌朝は、5時半から有名な朝市にでかける。これまた異様な風景。どこから湧いてでたのか、浴衣姿のじいさん・ばあさんが集結し、カランコロンと温泉郷が下駄の音に包まれる。その混在ぶりや、確かに満室の宿もあったのかも…と思わせる程。そもそも湯治とは、年に2度、農作業が一段落する頃に農家の方が骨休めに1〜2週間滞在するものらしい。ここでもまた、農家の高齢化の凄まじさを目の当たりにした。

朝市のユニークな点は、全店が同じ商品のラインナップ(=この時期は山菜)であるということ。時がとまったこの町では、差別化という現代的な概念は存在しないようだ。

朝市私も負けじとカランコロンと無駄にかき鳴らす。下駄の音っていいな〜。

温泉いろいろ
肘折温泉には、それぞれの宿のお湯の他に、共同湯が3つに村営のいでゆ館、カルデラ館がある。共同湯は、地元の人に銭湯としても使われているような、飾り気のないもの。脱衣場と湯が一続きになっている無防備なで気軽に入れるタイプ。

いでゆ館は村のイベントにも利用される複合公共施設。売店兼観光案内所という、大変わかりにくいコラボレーションに注意。聞かなければわからないので、思い切って問いかけること。また、この町には蕎麦屋とラーメン屋以外、食事をできるところがない(基本的に宿で食べる)が、いで湯館には食堂がついている。

カルデラ館は他と異なる炭酸温泉。清潔感のある施設で、一緒になった天童在住のおばちゃん曰く「ここは人が少なくて穴場。温泉郷の方は年寄りばかりで…」とのこと。ふむ、60代と70代の見えない厚い壁。時がくれば理解できるだろう。

上の湯共同温泉の上湯(かみゆ)。このお湯で地蔵権現の折れた肘が治ったことから肘折温泉の名がついたそうな。

滑り落ちる棚田について地滑り資料館で学ぶ
温泉に朝から3つも入り、お腹いっぱい気味だったが、忘れてはならないのが、四ヶ村(しかむら)の棚田。温泉郷から来るまで15分ほど走った、山の別の斜面にある。見るだけではなく、中を車で走り回れる棚田は気持ちがいい。しかし、わかりやすいマップやビューポイントの標識がないのがもったいない。

棚田マップめちゃくちゃわかりにくいけど、これが一番わかりやすいマップ。おすすめのとこに赤丸つけました。

棚田は地滑りが起こりやすい地形の上に広がっており、地すべりを食い止める巨大施設が地下に埋め込まれている。ということを、マニアックな「地滑り資料館」で学んだ***。そういえば、なだらかな緑の絨毯の所々に、近代的なトンネル口が顔をだしている。棚田からの米の収穫高と、巨額の工事費を天秤にかけてはならないんだろう。この景観を守ることはプライスレスなのだ。きっと。地滑り資料館

こんなものが埋まっている!

まとめ
この村のサービスの悪さ、愛想のなさ、情報の不足は、長期滞在の湯治客を前提としているためであろうか。私たちのような一見さんは、お断りされている印象。終止、時間のとまった町の観客となっているような、外国人観光客のような距離を感じて過ごした、不思議な場所であった。年配者の訪問が絶えないために、若い層(70代未満)のニーズに対応するインセンティブがはたらいていないのかもしれない。

しかし、「まったく、こんな町、何も書くことがない…」と思ったが、いつの間にか、これまでにない長文になってしまった。どこまでも不思議な魅力、大蔵村。

棚田

– – – – – – – – 

*希望(のぞみ)大橋のこと。平成25年の完成記念に、全国の「のぞみ」さんは割引料金で宿泊できるという粋な企画があったようだ。
**なお、料金体系も独特で、湯治価格と普通価格があり、食事をつけないと自動的に湯治価格(=素泊まり価格)とされてしまうようだ。普通価格の場合はアメニティ一もちゃんとついてくる。
***地滑り資料館:とうてい開館しているとは思えない、無人の施設。でも開いているので大丈夫。手動で見られるDVDがわかりやすいのでおすすめ。日本の急峻な国土についての理解が深められる。ちなみに日本一地滑り面積が大きいのは新潟県の模様。
住所:不明

大蔵村データ

いで湯館
住所:山形県最上郡大蔵村大字南山451-2
TEL:0233-34-6106

カルデラ館
住所:山形県最上郡大蔵村大字南山2127-79
TEL:0233-76-2622

(棚田を見つける参考にどうぞ)
ふるさと味来館
住所:山形県最上郡大蔵村南山967-9
TEL:0233-34-6001

 【ご注意】情報は日本一周をした2014年時点のものなので、掲載している施設やお店、温泉等に行く前には必ずお電話してからご訪問ください。もし、情報が古くなっていることがありましたら、ご連絡いただければ幸いです。すぐに修正させていただきます。


キーワード, ,



関連記事

喜界島

DAY98 美しい村連合・鹿児島県 喜界島【前編】ノロ信仰、風葬、数々の民話、分断政治…隆起珊瑚でできた島で極上民俗ツアーを楽しむ

喜界島は奄美群島のうちのひとつ。鹿児島からはフェリーか飛行機の2ルートがある。しかし、今年は10月に入ってから季節外れの台風18号、19号が…

本川市長と

DAY35-3 富山県氷見市 旅の醍醐味はハプニング…にしても、はちゃめちゃなハプニングに見舞われた日本初・体育館リノベーション市庁舎視察

この4月末の退職前、私は銀行の調査部門で、地方自治体の公共施設関係の調査を担当していた。高度経済成長期に、一気に整備された日本のハコモノ・イ…

じゅんさい狩り

DAY22 美しい村連合・福島県北塩原村・後編 北塩原村では棚からボタボタ、ボタ餅ならぬ塩ラーメンやじゅんさいが落ちてきた!

花豆モンブラン@ヒロさんのお菓子屋さん福島の地場産品を使ったツイーツコンテストで優勝したという「花豆モンブラン」を食べに、「ヒロのお菓子屋さ…

田尻家

DAY56 美しい村連合・兵庫県香美町小代地区 99.9%の国産黒毛和牛はここから生まれた!和牛のふる里の人々は温かく親切だった 

美しい村連合 兵庫県 香美町小代(おじろ)地区。ここは珍しく、地域自治区単位で連合に加盟している。2005年の3町合併(美方町、村岡町、香住…

おばばのお話

DAY93 美しい村連合・宮崎県椎葉村 クニ子おばばと不思議の森へー大切ななにかを思い出せる場所

「クニ子おばばと不思議の森」というNHKスペシャルの番組を見て以来、いつかは訪問してみいと思っていた村、宮崎県 椎葉村(しいばそん)。宮崎県…

ページ上部へ戻る