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20167/25

DAY3 イタリアのアルベルゴディフーゾ、アグリツーリズム巡りー Assisi Marvelina アグリ&ディフーゾ


今回の旅で出発前に決まっていたことは、(1)ローマから入りミラノに抜けることと、(2)唯一アポがとれていたエミリアロマーニャ州のFaggore Fattoriに4日目に訪問すること。その2つだけで、あとは行きたい町の候補をごっそり選択肢としてもっていき、車の運転と気分によって行程を組み替えた。

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アッシジの街並み

さて、3日目に訪問したのは、美しい都市として有名なAssisi。その近くにアルベルゴディフーゾの宿が見つかったからだ。正確にいうと、civitaの後、もうひとつ美しい村連合に加盟しているTorgianoという町にさらりと立ち寄り、あまりのつまらなさに一瞬で立ち去り、2日目の夜に、目的のお宿 Marvelina(マルベリーナ)に到着した。Assisiにほど近いこの宿も、ネットで「albergo diffuso」と検索してでてきた宿で、手続きは簡単だった。そう、手続きまでは….しかし、到着するのが大変だった。性能の悪いナビと住所だけが頼りで、wifiの端末も田舎ではコネクションがほとんどなく全く頼りにならない。真っ暗なぶどう畑を彷徨い、何度も同じ道にでたり、行き止まりになったり。最終的には、覚悟を決めてちょっと治安の悪そうな地元のバーに入り、道を尋ねた。

荒々しく、必要以上に大声で話している彼らに緊張したけれど、案外気のいい人たちだった。そのうちの一人が、説明が難しいし、家と同じ方向だからといって、車で誘導してくれた。

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マルベリーナの受付の建物で私たちを迎えてくれたのはまだ20代のフィリポ。幸い、英語が堪能で要領もよい感じだ。ひとまずヘトヘトだったので、部屋まで案内してもらい、アグリツーリズムについて調べていることを伝え、翌朝に時間をとってもらうことになった。2月の閑散期でイタリアに行くのはもったいないと思ったけけれど、ゆっくり時間をとってくれる余裕があるこの時期でよかったかもしれない。

夕飯はおすすめされたAssisiのTorattoria Pallottaへ。ウンブリアでは黒トリュフの時期らしく、比較的安価でかなり太っ腹な振る舞いの黒トリュフラビオリが。香りだけでなくザラザラとした食感までも感じられるほど、気前よくトリュフが使ってある。あまりにも美味しすぎて、翌日の昼もこのレストランで食べてしまった。

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翌朝。鳥の声で目を冷ます。カーテンの外には今にも霜が張りそうに少し白っぽく凍えているような緑と、すっかり葉が落ちた木々の枝が見える。外は冷えているけれど、古い部屋なのに中は寒くない。最低限、暖かさへの配慮はきちんとされていることを感じる。

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朝食は、同じ建物の反対側の端の部屋に来るようにと言われていた。8時頃いくと、すでにパンや自家製のジャムをならべて朝食の支度ができていて、おばちゃんがてきぱきとコーヒーを淹れてくれた。リリアナさんといい、ここでパートタイムで働いているらしい。口数は多くないけれど、難なく英語でのコミュニケーションもとれる。ここには外国人も多いから、英語も習い、簡単な料理もまちの生涯学習講座のようなもので習ったそうだ。小さいけれど、この宿が雇用を生み、彼女の生活に張り合いをもたせているみたいだった。こういう効果があるのは素敵だ。
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食べ終わる頃、フィリポが現れ、彼から話を聞くことができた。3つの宿泊棟と1つの母屋という構成。母屋で受付してもらい、農園内に散らばる宿泊棟の部屋を割り当てるという仕組み。そういう意味で、アグリツーリズムでもあり、アルベルゴディフーゾでもあるそうだ。

もともとはおじいさんがマルバ(?)生まれで、60年前くらい第二次世界大戦中にアッシジに移住。リタイア前に農地を購入したのがここ。1989年になり、父親の代で、農園だけでなく、宿をスタート。フィリポはここで生まれた。28年前はアグリツーリズモはウンブリアにはまだ普及していなかったが、小屋も余っているし、どうせ土地から離れられないのだからと、農業の単なる副業として始めたそうだ。宿泊棟はどれも、倉庫や馬小屋などファームハウスだったものを父親がリノベーションしたもの。なので正確にはわからないけど、かなり古い建物だという。補助金などは全くはいっていないそうだ。

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アグリツーリズムの宿なので、もちろん農業も続けている。オーガニックファームとして、主にオリーブ(1,800本も!)と、あとは自家用だけの野菜を育成(オリーブオイルはある程度出荷)。食事で提供する野菜の70%は自家製野菜でまかなっている。残りの30%も周りの農家から調達している。豚は最初まで飼っていたけど宿泊を始めてから匂いが気になり、辞めて近隣の友達の農場に頼んでいるそうだ。

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ちなみに、この朝食会場とは別に、宿泊者ではなくてもここのオーガニックフードを楽しめるレストランがあり、夕食付きで宿泊する場合はこちらのレストランで食べることになる。町の人のちょっとした会などにもよくつかわれているようで、私が訪問した時は、前日のイベントの片付けをしていた。

例によってスローフード協会のステッカーを発見。「審査員は本当に抜き打ちできて、いつみられているかわからないんだ」と得意そうにフィリポが教えてくれた。装飾はアンティーク好きな母親が集めたものを徹底的につかうことにこだわったそうで、ぬくもりを感じるような空間だった。宿だけでなく、レストランもあることで収益の安定化に貢献しているようだ。オーガニックオリーブオイルやジャムも販売している。雇用はリリアナさんなど3人のキッチンスタッフ、3人の男性のパートタイムで掃除。あとは家族経営。地域内で食材も雇用もまかなうことにこだわっていた。

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こんな小規模な宿なのにアメニティのシャンプーにマルベリーナという名前が入っていたのに少し驚いた。聞けば、シャンプーも地場の会社に頼んでつくってもらっているのだとか。フィリポの彼女がコスメづくりをやっていることもあり、新たにコスメづくりにも乗り出す予定ということなので、オリジナルのオーガニックシャンプーが置かれる日も遠くないだろう。

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マルベリーナという名前は、昔からここにある湧き水の名前

顧客の変遷としては、最初はイタリア人、その次にアメリカ人が来るようになった。フィリポのアメリカの友達がプロモーションを手伝ってくれた影響と、アッシジという古い町の人気もある。EUの中だとオランダ人ニーズが高い。オランダ人はバケーションに、車でイタリアの南の海に行く。その間の2〜3日をここで過ごしていくというパターンだそうだ。現在のお客さんの50%はアメリカ人で、特に冬に多い。客層としては35-60 代のカップルが多い。夏はイタリア人のバケーション需要に対応しているので家族とくることが多いそうだ。日本人も0ではいが、今はかなり少ない。以前は乗馬が流行って、馬を飼っていたために、日本人ツアー客が非常に多かったが、その流行りが終わり、日本人はほとんど来なくなっってしまった(そんな流行り、あった?)。それでもたまに来る人は決まって女性のシングルとのこと。全体の予約者の45%がインターネットを利用しており、電話での予約はイタリア人が多いようだ。

 

アルベルゴディフーゾについて

アルベルゴディフーゾには、街中に幾つかの部屋が散らばってあるタイプと、マルベリーナのように1人のオーナーの農場内に複数部屋があるものとの2タイプがあるが、基本的な構造は同じ。1つのレセプションで鍵をもらい、食事は特定の会場に集まって食べてもらう。アルベルゴディフーゾを名乗るには100ユーロ/年程度をアルベルゴディフーゾ協会に支払い認証してもらう必要がある。それでも、それを名乗れることで集客につながると思うから支払っているそうだ。そんなに特別なことと思っていないようだが、ある種トレンドと感じてはいるようだ。

ただ、アグリツーリズムは法的に整備され、名称の使用がある種、きちんと規制されているようだが、アルベルゴディフーゾについては、あくまで民間の資格であり、あまり強制力がないようだ。このリストに含まれているところが、協会に属しているものということで、お墨付きを得ている場所と考えればよさそうだ。

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レセプションのたてもの。人懐っこいわんこがお出迎えしてくれる。

アルベルゴデュフーゾが始まった経緯として、日本で発見できる数少ない文献やブログを見ると、1976年のフリウリの大地震からの復興の一手としてジャンカルロ・ダッラーラ氏が始め、彼が協会を創立したのだと書いてある。それについて、フィリポに何か知っているか、そして、ちょっと遠いがフリウリまで見に行くべきだろうかと相談すると、「地震との関係は時系列的には整合性があるけれど、直接関係があるとは思わない」のでフリウリまで行く意味はあまりないのではないかとのこと。もし素晴らしいアルベルゴディフーゾを見たいなら、フリウリよりSextantoに行くべきだと教えてくれた。ドイツ人(?)の投資家が、空き家だらけになってしまった集落の物件をいくつかまとめて購入し、リノベーションして洞窟の中での滞在体験ができるアルベルゴデュフーゾをやっているという。かなり行き届いたサービスでクオリティが高いらしい。アルベルゴディフーゾ協会で情報交換する機会などもあるのだろう。Sextantoのオーナーさんと知り合いのようで、電話をしてくれたが、あいにく出なかった。どちらにせよ、ちょっと遠くて今回の訪問は無理だ。次回、ぜひ行ってみよう。(後日、追加でweb調査をした際も、sextantoはとても評価が高い宿のようで、モデルケースになっているようです。)

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最後に、現在の課題と感じていることを聞くと、同じアグリツーリズムでも本当に地元の食材を出して高いクオリティのモノから、節税対策の為に名前ばかりやっているものなど内容に幅があることで、良いものの良さが見えにくくなてしまっていることとのこと。人々はだいたいネットで価格しか見ずに宿泊先を選ぶので、本来の価値をどのように伝えるのかが難しいと感じているそうだ。(これは翌日訪問したファウストさんからも同じ課題を聞くことになった。)

1事業者からのヒアリングなので限界はあるし、正確性に欠ける部分もあるが、貴重な意見が聞けてとてもよい出会いだった。

 


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