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20167/25

DAY6 イタリアのアルベルゴディフーゾ、アグリツーリズム巡りー Prima Altura ミラノ的ビジネスセンスの総動員


閑散期の冬場にイタリアに行くことをためらったが、観光に携わる人たちにとって一番時間がある時期であり、結果ヒアリング時間をどこでもとってもらうことができた。自然に囲まれてゆったり過ごす…そんなアグリツーリズムの真髄を楽しんできたかといわれると疑問は残るが、結局私は人々との交流が何にも増して楽しみのひとつなのだから、まあいいか。また来よう。

ここPrima Alturaはファウストさん紹介してくれたリカルドさんが、私たちのために予約しておいてくれた宿だった。例によって、ぶどう畑の中の道なき道を不安とともに車で進む。Prima Alturaは丘のてっぺんにあった。到着して早々、価格帯を伝えておかなかったことを後悔した。駐車場の整備のされ方や植栽、建物の雰囲気からもちょっと高級そうである。建物は2つあり、ひとつはレセプション、レストランと、地下にワイナリーがある。もうひとつが宿泊棟で、2階建ての6室、1階部分にはエステもある。

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到着して荷物を置くと、さっそく夕飯を出してもらった。ダイニングホールは天井が高く、ワイン畑の丘に突き出したような形で、3面緑に囲まれた風景の中で食事ができる。横にテラスがあって、暖かい日にはそこでコーヒーを飲んだり、ゆったり読書をしたりできそうだ。お料理は盛り付けも味も、洗練されていた。こんな田舎町によくも…と不思議な気持ちになる。そしていよいよ価格が心配になる。

素直に喜んでよいのか、複雑な気持ちで夕食を進めていると、ワインを持って社長のロベルトさんがテーブルまできてくれた。時間も遅く私たちの他に1組しかお客さんはいなかったが、各テーブルに挨拶に回っているらしい。相当やり手なのだろうと身構えていたが、とても人懐っこい人だ。少し話して、私たちが日本からやってきてアグリツーリズムに関心があることを伝えると、ロベルトさんの方から、翌日の昼、時間があれば話そうと申し出てくれた。

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翌朝、初めて明るい中で景色が見えた。ずっと続く一面のワイン畑、小さく見える向こうの小屋から煙が上がっている。庭にはプールもあった。夏になると、一日中ここでのんびり過ごす人もいると言っていたが、確かに気持ちいいだろう。

地元のプロダクトにこだわったチーズやヨーグルトの素敵な朝食後、ロベルトさんの話を聞いた。ミラノ出身で、ミラノでaero space会社を創設。現在は引退し、息子さんが会社を継いでいる。現在のビジネスのことを考え始めたのは数年前。毎週末、家にいて奥さんと喧嘩するよりも、もっとやるべきことがあるのではないかと思い立ち、リタイア後に始めたそうだ。元バリバリのビジネスパーソンということで、またこれまでと異なる視点でアグリツーリズムを捉えており、話が面白いし、要点がまとまっている。さすがだ。こういう人がアグリツーリズムに乗り出しているという事実がイタリアのアグリツーリズムの可能性をよく示しているように思う。

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Prima Alturaが立地している場所は4000年前からワインぶどうを植えていたと言われ、イタリアでも最古のぶどう栽培地の地と言われている場所でのひとつで、非常に良質のぶどうがとれることから決めた。ぶどう畑のてっぺんを切り開いて新築でワイナリーと宿泊棟を建てた。

ターゲットはミラノからの集客。ミラノで定期的にイベントを開催したり、ウェブ発信を意識的に多くしている。ミラノまでは車で1時間半。付き合いのあった社長達が隠れ家レストランのように使ってくれたり、ちょっと自然に触れたいとおもったミラノっ子がきてくれるそうだ。ここで結婚式を挙げる人たちもいて、去年は16件。今年はもっと増えそうだということだ。

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お部屋にはいるとふわっと良い香りのワインのルームフレグランスが。ぬかりない。

現在近隣の生産者120社を巻き込んだアソシエーションをつくり、6つのワインロードを形成している。観光客にこのエリアを認識してもらうには、地元のどのレストランも同じ郷土料理(tyipical menu of the area)を出し、食べ比べができたり、自分のお気に入りのレストランをもってもらうことが重要。そうすることで、地元にとっても、地元のもので地元の料理をつくり、郷土に対する一つのアイデンティティを持つことができる。みんなが協力することでみんなが得をするサイクルだ。エリア自体が成功しないと、そこにある1つのビジネスも上手くいかないと考えている。

アソシエーションの役割は3つ。
1)人を集めてつながりをつくる
2)品質を一定に保つようチェックする
3)ミラノでマーケティングを行う

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ミラノでPrima Alturaのワインを置いてもらっているお店が紹介されているボードがあった。多くの入り龍レストランにも置いてもらっているようだ。これまでのビジネスの経験もあるからだろうが、マーケティング力がすごい。

また、せっかく来てくれたお客さんが宿泊する場所がなければ地域にお金が落ちない。宿泊施設も必要ということで、アルベルゴ・ディフーゾを企画中だそうだ。まちに一つつくる予定のレセプションでは希望にあった宿やツアーの案内、この地域のサラミやワインの試食ができるようにする。このような田舎で宿泊業を起こすことで、地元に若者が残れるようになるという効果にも期待している。現在Prima Alturaでは8人を雇用しており、娘3人も近くに住むことができているという。

しかし、エリアでビジネスを形成する際の課題は、その合意形成の段階の資金だ。そこに対して政府やEU(イタリアでは補助金というと国を飛び越えて、コムーネという基礎自治体単位が直接EUからもらうケースが多いようだった)からお金を出してもらえるよう、お願いしているそうだ。ここまで、イタリアでは補助金の話はあまり聞かなかったが、ロベルトさんは戦略的にアプローチしているようだ。もちろん、なんでもかんでも補助金に頼ろうというのではなく、あくまで自分たちの自立が先にあり、共通で必要な初期投資を補助金で補おうという順番である。ロベルトさんはビジネスをやってきたから特別かもしれないが、Assisiのフィリポも、ファウストさんも、かなり自然な形で経済合理性を身につけているように見える。経済合理性というよりは、協同組合的な発想が強いのかもしれない。「みんなでやらないとうまくいかないでしょ?」それは当たり前だが、日本ではそうは問屋が卸さないだろう。

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素朴さから質を求めるアグリツーリズムへ

ワインの出荷量は40,000/10haの農地で5タイプのぶどうを育てている。ぶどうを摘むところから手摘みで行う。ぶどうだけでなくすべてのプロセスがこだわり。天候により、葉っぱを残して日を防いだり、日が足りないと葉っぱを撤去したり、その年に合わせてぶどうを育成。ワインメーカーはシチリアから、腕のいい若者を地元出身者をヘッドハンティングしてきた。常に決まった味ではないけれど、このワイナリーの味ということで味わってもらっている。バレルは3年しか使わず、使用後はテラスのテーブルへ。こういう微妙なところの気遣いもブランディングのひとつだという。人々はプロダクトとともにストーリーも消費している。コストより、そのストーリーをいかにつくってあげるかをロベルトさんは常に意識しているようだ。

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ロベルト曰く、アグリツーリズムもより質をもとめるように変化してきている。例えば、ゴートチーズは50年前は臭かった。低品質で悪いものと思われていた。しかしフランス人がイノベーションを起こし、衛生的な作り方をして高級品になった。従来のプロダクトも磨き方次第だ。人口増加の時代はとにかく何をつくっても売れたからいいが、これからのイタリアは違う。田舎の食品は純粋・素朴であればよいとされていたが、時代は変わり、人々は質を求めるようになってきた。今の人の方が昔より変化に慣れているので、新しいタイプの観光にも柔軟であると感じている。

夢は、村に一つのショーケースのようなレストランをつくり、各地方のシェフがそこで毎週交代で調理して、気に入ったらそのお店を実際に尋ねてみることができるようなしくみや、特定の興味をもったひとが集合して地域のツアーをできるようにしたい。ワインを飲むと車が運転できないのが問題なので、地域を回る地元ツアーのような選択肢をつくりたいとのこと。

イタリア人はアメリカ的な消費の文化が必ずしも理想というわけではないと気づき始めている。以前の自分のように、平日は働きまくって、休日はダラダラとする生活より、友人や家族との時間を過ごすことのほうが重要だ。コネクション、グッドフード、プレイスの三拍子を大切にしたいと語った。

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帰りがけに、ロベルトさんがPrima Alturaのワインを扱うミラノのレストランをオススメしてくれた。農村と都市がワインでつながっている現場へ。Prima Alturaのワインと魚介のお料理でイタリアの旅を締めくくりにふさわしい、おしゃれで美味しいお店だった。

 

 


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