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昔の小坂町

DAY7 美しい村連合・秋田県小坂町 生きた没落の歴史と底力を語る町、もっと語ってほしい町


小坂町は、他の美しい村とは一風違った町である。美しい村連合加盟村には、それぞれ加盟理由というのがあり、一般的には自然や農村の営み、史跡やお祭りなど。しかし、小坂町の認定理由は珍しく、産業遺産なのである。

小坂町との衝撃の出会い
初めての町を訪れるときは、とりあえず観光協会を目的地に設定する。そこで町のマップをもらったり、情報収集をして町に繰り出す、というパターンだ。

小坂町には、観光協会というものが存在せず、どうやら役場の観光課が観光情報の発信を担っているようだ。まぁ、ここまでは小さな町村なら一般的なこと。とりあえず、役場を訪問してみよう。…と、役場に行ってみて、目を見張った。私は以前銀行で自治体がカウンターパートだったので、日本全国、色々な役場を見たことがある、と思っていたが、こんな老朽化の進んだ役場を見たのは初めて。潔ささえ感じるこの風貌。

しかし、聞けばなにやら観光課は「元鉱山事務所」に間借りしているとのこと。まさか、文化財級の建物に間借り!?と、わくわくしながら、とりあえず小坂町本庁舎を写真におさめる。

小坂町役場老朽化著しい小坂町本庁舎。この簡素さに心を奪われる。しかし、今年中にも小学校跡地の新庁舎に移転予定だとか。

小坂鉱山事務所
鉱山事務所は移築され、現在の町のメイン通りにあった。売って変わって、こちらは、よそよそしいまでに色鮮やかに復元された立派な建築物。1階に観光課とショップ、2〜3階は炭坑の記録を残したミュージアムとなっています。

鉱山事務所

観光課の木村さんのお話を伺えました。町の見所として、炭坑事務所と、その目の前にある日本最古の芝居小屋(現在でもお芝居が見れます!)、そしてその2つが位置するメイン通り「明治百年通り」。確かに、この空間だけは、お花が咲き誇り、小川が流れ、町からポカッと浮いたディズニーランド風。お食事どころとしては「青銅館」の「黒鉱カレー」と、半ばこじつけではあるが、最近、地域活性化の一環として、売り込み始めた「カツラーメン」とのこと。

木村さんと
「不夜城」と呼ばれた歴史
まず、炭坑事務所のミュージアムへ。一時期2万人の人口を誇り、県内では秋田市の次に大きな町だった小坂町。現在の人口は約5千人程と1/4まで減少している。

何でも江戸時代に銅山が発見されのがはじまり。一時期は足尾・別子とならび日本三大銅山と称される程であった。しかし明治年30年代には掘り尽くしてしまい、鉱山廃業の危機に立たされた当時に小坂町に赴任した久原房之介氏が、今度は製錬技術を磨き、様々な種類の鉱石を取り出す技術で、またも鉱物の採掘量で明治43年、日本一に返り咲く。

不夜城の歴史当時30歳だった房之介氏。私と同い年で一つの町を再生させるような産業を切り開いたとは。スケールの大きさに驚く。

採掘場には日本でも有数な早い時期に電気が通り、当時なりのオール電化で、電車もいち早く導入*。医療費、学費、住宅費、全て免除で在る程の待遇で、憧れの就職先であった。一日三交代制で機会を止めず、「不夜城」と呼ばれた程の活気で、夜でも明るい町を、外部から見物にくるお客さんもいたそう。

昔の小坂町

明治の小坂町の様子

一変した町の風景とアカシアの木
すごい町だったんだ…と、ちょっとした感慨とともに、外に出て町を眺める。当時の写真と比べても、現在の小坂町にはその影もカタチもない。

役所前の風景当時の町の目抜き通りは市役所前のこの通り。

炭坑から生まれたこの町には、廃業後、何の緑も残っていなかった。そこで、盛んに植林活動をして、多くのアカシアの木を町中に植えた。現在、この町に緑が戻り、6月初旬には町中がアカシアの花の香りに包まれるそうだ。そのためハチミツも小坂町の有名なプロダクトのひとつ**。町のストーリーとつながったプロダクトはなかなか素敵である。

蜂蜜特徴は加熱殺菌していない生蜂蜜で、栄養価が高いことだそう。

現在に受け継いだ錬成の技術
町の風景は一変すれど、受け継がれたものがあった。それが、当時磨いた錬成技術。現在の鉱脈は鉱山ではなく、「都会」。すなわち、PCや携帯、精密機器等の電子部品から、鉱物を取り出す技術でリサイクルに取り組んでいるそうだ。

町の面影を求め、現在でも残っている、錬成所に向かう。何やら異様な雰囲気。すれ違うトラックの運転手さんは毒ガスマスク…!! 町の高台に徐々に姿を見せる錬成工場。町とは距離を少し距離をおいて、今でも生き続けている何かを感じた。

製錬工場2左側は当時のれんが造りの工場を今も使い続けている、趣のある建物。

疑われるエコタウンセンターの存在意義
歴史的な産業が、現在もカタチを変えて、町を支えている。これはちょっとすごいことである。と、興味をもった私がパンフレットで発見したのが、エコタウンセンターのツアー!工場や炭鉱跡を視察できるらしい!!錬成技術を活用し、小坂町をはじめ、この周辺自治体ではリサイクル産業が盛んで、それを学べる施設らしい。期待に胸を膨らませて行ってみたが、あいにくツアーは団体用。要2週間前予約。展示のキャプションも、ワンフロアに仕方なく並べてあるだけに留まり、前提知識がないと理解するのは難しい。基本的に、団体学習用施設と考えられ、個人客は行っても学べることは少ない。

町に新しい循環の輪を生む菜種油
エコセンターよりも、断然学びが多く、おもしろいのは、エコサカの工房見学。錬成技術を活用しているわけではないものの、リサイクルの町小坂町は、地域全体で資源を活用することにも積極的。

もともと工業の町であり、農地は少ない。その農地も最近は耕作放棄地になりつつある。そこで、考案されたのが、菜の花の栽培。景観としても美しく、耕作放棄地が活用できる。おまけに、搾りかすを乾燥させてペレットとし、堆肥として土に還元している。

ペレットエコサカでは1番搾りの油だけを活用するため、栄養満点のペレット堆肥が完成。ペレットも横の工房でつくっているのを見学できる。

地域の方4名だけで運営する小さな工房だが、毎日約400kgの菜種を精製。忙しい中でも、随時見学は受け入れており、丁寧に説明してくださる。突然の訪問にもかかわらず、私たちは、町の時計屋さんで働かれていた方が対応してくださった。

エコサカ見学菜の花でも品種によって、かなり風味が違うらしい。エコサカではキザキノナタネを使用。ブタの飼料としても活用できる、おいしい品種らしい。

おまけの十和田湖
せっかくここまで来たので、十和田湖にも立寄り。実は十和田湖、2自治体にまたがっており、西岸が小坂町で、東岸は十和田市。即ち、奥入瀬渓流は十和田市のもの。というわけで、一切、小坂町のパンフには奥入瀬渓流や、十和田温泉は掲載されていない・が、名湯の一つとされているので、是非次回は行ってみたい!に、しても、訪問者にとって、自治体の境界など関係ないのだから、もうちょい網羅的に情報掲載してほしいなぁ…。十和田湖観光者が小坂町に立ち寄ることだって見込めるだろうに…。

十和田湖十和田湖。曇りだったけど、普通の観光地は普通に美しいですな。

まとめ
正直、小坂町で美しいのは、メインの明治百年通りだけである。きっと、アカシアが咲き誇る季節や、菜の花の季節なら、更に美しい。その他の部分は、資源産業で一世を風靡した町の、現在進行形の没落プロセスを見るにはうってつけの裏びれ具合である。70年後のドバイはこんな風になるだろうか。そんなことを思った。

しかし、かなり得意な歴史をもっており、現在もその遺産が受け継がれている、素晴らしい側面を持つ町だと思う。その生きた歴史は特筆するに値する。ある意味、燕三条的な粘りをもっているのではないか。だから、レールパークを新規整備するより、既に当たり前になっているかもしれない、その炭鉱の歴史にスポットをあて、企業と連携して、丁寧にみせていってほしい。そうしたら、産業観光として、歴史を語る町として、とても面白いと思う。

小坂町地図小坂町中心部の地図

*現在では廃線されてしまったものの、車両は旧小坂駅に、現在も動態保存されており、イベントでは乗車体験ができるそう。この電車の歴史から、小坂町は最近電車押しのようだ。ミュージアム内にも、謎の電車コーナーがあり、かなり怖い。子供は一人ではいったら絶対泣きます。それとは別に、今月には新たなテーマパーク、「レールパーク」をオープン(主に子供向けかな)。電車は走れど、町はどこに向かって走っているのか、全く不明である。

**今回は見学をご快諾いただいたにも関わらず、タイミング会わずで、花輪養蜂さんにお邪魔できなかったのですが、次回は是非。毎日、蜂蜜はいただいてます!癖がなくおいしい。

DATA – – – – – –

小坂町データ

小坂鉱山事務所
秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山字古館48-2
TEL:0186-29-5522

エコサカ
秋田県鹿角郡小坂町上向字滝ノ下33-1
TEL:0186-29-2022


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