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中村のお父ちゃんと

DAY4 美しい村連合・山形県飯豊町 ホストファザーは森の人間国宝、現役マタギの古民家ステイ


飯豊町にきたら、農家民宿はMUST VISIT。4日目は、朝から移動のつもりが、ホストマザー&ファザーであるマタギの中村さんのお話がおもしろくて、結局午後まで居座ってしまったのでした。

what’s 農家民宿ステイ
飯豊町には全部で13軒、殆ど中津川地区(=里山)にある。組合組織をつくっており、団体の場合は各宿に分担、個人の場合は組合を通さず、直接民宿にお電話するしくみ。「いろり」は古民家に泊まれるのが魅力。飯豊町の名産品である菅笠つくりの体験ができる「庄太郎」など、それぞれに特色があるので、一度、観光協会にお問い合わせて希望を伝えるとよい。

ステイ先は本物のマタギの家
私たちがステイさせていただいたのは、中村さんのお宅。なんとホストファザーが現役のマタギ!!!狩りのお話が聞けるという。それは、会ってみたいでしょう。

中村家伝統的な曲り屋は改造してしまっているが、コア部分は築130年超の古民家。

農家民宿の食事
17時過ぎにお宿に到着。まずは夕飯のため、山菜狩りに。といっても家の半径10m内に何種類も山菜が植わっている。うるい、ふき、よもぎ等5〜6種類をピックアップ、天ぷらに。調理も手伝わせてもらって、食べきれない程のご馳走になってしまった。

しみ大根この地方の郷土色、しみ大根(凍み大根)。冬に大根の中の水分を凍らせ、乾燥してつくる。歯ごたえがあっておいしい!

鯉料理この辺りでは海から遠いこともあり、鯉を食べる文化がある。冠婚葬祭には欠かせないという鯉料理。

熊汁時期ではないので冷凍だったけれど、熊汁もご馳走になった。中村のおやじさんは本来はもっとおいしい、と不満そう。笑

中村家とは。おばあちゃんの話。
かつて中村家は宇都宮の宮大工であった。それが、殿様暗殺のため、城の天井を改造するという企てに助力したため、バレたら命を追われる身。それで身を隠すために山奥の飯豊町の中津川という土地に来たのが初め。この集落の開祖ともいえる、由緒正しいお家である。という話は、おばあちゃんが教えてくれた。

おばあちゃんはおしゃべり好きで、宿泊のお客さんがくるのと、月に2回の集落の老人会を毎回楽しみに過ごしているのだそう。もちろん介護施設はあるものの、まだこの集落のご老人でボケている人は殆どいないのだそうだ。みんな、畑に出て身体を動かして元気にしているのが秘訣だそうだ。

乾燥ゼンマイおばあちゃん手揉みのゼンマイ。ゼンマイは珍重されており、雪解けの5月頃、山に1週間タームで籠もり、とった先から茹でて乾燥させる。大変な作業だが貴重な現金収入。

マタギのくらし
さて、夕食が終わってから、いよいよマタギの話。マタギというのは、熊を狩る猟師のこと。東北圏の伝統的な職業の一つである。

とにかく、ビックリするような話の連続だった。熊を狩るのは冬、猟が解禁になってから雪解けのころまで。朝早くから山に入り、帰りが遅いときは日付が変わることもあるそう。雪山を一日中歩き回って、獲物を探すわけだ。

熊の毛皮のマント冬山では熊の毛皮のマントを被り、その上にゴアテックス。吹雪のときは後ろの壁にかかる菅笠も活躍。

現在集落には3人のマタギがいる。1人ベテランが辞めてしまい、残りはサラリーマンをする傍ら、週末にちょっと熊を狩るくらい。中村さんは農家なので、雪に覆われる冬の季節はだいたい毎日狩りに出かける。

マタギ体験マタギウェア体験。熊の毛はごわごわ。でも思ったより軽い。

動物の気配を感じながら歩く
遭難と常に隣り合わせの、危険な仕事に思える。しかし中村さんは山を、動物を、自然を知り尽くしている。知り尽くすというより、共に生きている。歩きながら、足跡や糞、植物を食べた跡等をつぶさに観察し、だいたいどの動物が、現在どのような状態にあるのか、推測できてしまう。

熊が冬眠からさめると一番に食べるのがマンサクの花。少し毒性を持っているが故に、冬眠で固まりきった糞を柔らかくする役目があるそう。そういうときは、まだ目が覚めきっていないので、だいたい花を食べた後、転がって寝ていることが多い、とか。

紙芝居山が大好きなお父ちゃんのことを、紙芝居の作品にまとめたお母ちゃん。狩りの度に無事に帰るか心配に待っているそう。

雪山で常に平静を保つ
また、マタギは万一ここで獲物が現れたらどうしとめるか、その場合の最悪の場合とその対策を、無意識で常に想定しながら歩を進めている。だから、何があってもパニックになることはないようだ。

「怖い想いをしたことはありますか?」と聞くと、一度、木の根にはじかれて、崖に落ち、足を骨折したことがあるという話をしてくれた。
「でも、怖かったかっていわれると、そうでもねぇんだよなぁ。もしも、ここでこうなったら、どうしようと考えでいたから。」という。

産土にも登場日本の伝統的な森との共存生活を描いた映像作品「産土」*でも取材されている中村さん。

どうして中村さんはマタギになったか
熊を殺すか殺されるか。厳しい環境化で死と隣り合わせのマタギの仕事。マタギになるには、ベテランのマタギに弟子入りして、修行を積む。山を一緒に歩き、ひたすら教えてもらうそうだ。中村さんの守備範囲は、「ここから見える山全部」だそうだ。私には、果てしなく続いているように見えるが…。まさに、知恵と経験の塊である。

鉈入れ鉈(なた)のさやも葡萄のツルから自分で編んでしまう。本当に何でもできる。

そんな大変な職業であるのに、どうして中村さんは、それでもマタギ目指したのか、聞いてみた。「憧れだな。祖父も父親も狩りをしていた。自分も大人になったらそうなりたい。そう思っで育ってきた。」

「なかでも、熊を狩りたいと、ずっと思ってたのさぁ。熊は自然界の王者だからなぁ。初めて熊を自分一人でしとめた時のこどは、よく覚えているよ。」この言葉を聞いて、鳥肌がたった。優しく穏やかな人柄で、一見狩りなど好むようには見えない。しかし、日焼けした肌の奥で、目がきらきらしていた。

狩りが夢だった中村さん優しく穏やか。しかし、骨折しても一週間病院にいかない頑固者でもあるそう。

父親の背中をみて、マタギが夢、といえる子供が、現在日本に何人いるだろうか。たぶん、もう、一人もいない*。中村さんの代で、私たち日本人は、先代までに培ってきた、自然と共に生きる膨大な知恵を、受け継がないまま、絶やしてしまうことになるだろう。そう思うと、やるせない。自らマタギに弟子入りしたいとすら思う。絶対、冬にもう一度帰ってくると約束した。

中村家のお父ちゃんお母ちゃん
最後に
もっともっと、たくさんお話はあったけれど、書ききれないし、ぜひ中村さんの言葉で聞いてほしい。

そして、もし、歯車のように組織の一部となって働くことに疑問を抱いている人がいたら。オンリーワンの仕事がここにあることを覚えておいてほしい。
なにか、社会のために仕事をしたい、と強く思っている人がいたら。新しいことじゃなくていい。日本文化を継承する、大切な仕事がここにあることを知ってほしい。

農家民宿は1泊2食、たったの6,800円。野生の文化人、いや、森の人間国宝と呼びたい本物のマタギ中村さんから贈られる、プライスレスな感動がまってます。

 

 

*農家民宿のページ(観光協会サイト内)
http://www.iikanjini.com/minsyuku.html

【メモ】宿を始めたきっ かけは役所の方からのお誘いだったそう。民泊に取り組む他自治体への視察のステイなどの企画もあるようだ。滞在中、他の農家民宿から電話で「こういう依頼があるけど、あんたのとこできるか」といった問い合わせもあった。組合組織で横のつながりもつくられており、きちんと機能している。役所がインセンティブ をもつと、うまくいかないことが多いが、役所との距離も、なかなかよいバランスで運営できていそうに見えた。

*「一人もいない」と言ったものの、数週間後に福島県三島町で「卒業式でそう宣言した子どもがいたぞ」という話を聞いた。とてもよい。

*産土オフィシャルページ。中村さんちで、中村さんのパートだけは拝見させていただきました!とっても素敵な映像作品なので、いつか、どこかで全部みたいな〜。


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