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陽さんとアスパラ畑前にて

DAY12 美しい村連合・北海道赤井川村(2)コロポックル村のアスパラマン・陽さんが畑で育てる、アスパラガスと村の未来


コロポックル村に住むアスパラ(アスパラガス)職人、陽さんの話
ランチ、といってもかなり遅くなってしまった。もう営業時間を過ぎている…しかし、ここも天野さんが電話1本。ありがたい。天野さんおすすめの村の飲食店、コロポックル村で地場産の素材をつかったランチにありつくことができた。

コロポックル村ランチアスパラガスは春一番がおいしい。この時期は最後の最後とのこと。それでもすごく美味しかった~!

ランチの後が、本番。コロポックル村裏の農園にお邪魔し、猛烈にアスパラを愛するアスパラ職人、陽さん(赤木陽介さん)にお会いすることができた。

陽さんはコロポックル村二代目。ご両親が飲食店をオープン、その頃、農業はやっていなかった。ただ、陽さんは、農家だった叔父さんの畑が大好きで、子供の頃はよく、畑仕事を手伝わせてもらっていた(正確に言うと、邪魔していた…)のだそう。その頃から、自分でも農業をやってみたいと思ってお り、東京に一度出た後、Uターンして赤井川村に。コロポックル村を継ぐのと合わせ、お店の裏で、夢だった畑を始めたのだそう。

コロポックル村外観メイン通りに面している、コロポックル村

畑には色々な作物があった。しかし、あくまで陽さんは「アスパラガス農家だ」という。他はオマケ。アスパラに命をかけている。最近の野菜は甘さや柔らかさ、アスパラにおいては太さを追求しがちだが、陽さんは春野菜独特の「えぐ味」や歯ごたえを大切にするというアスパラ的境地に到達されている。

そういえば、春の山菜独特の「えぐ味」は、冬眠していた動物達の腸で固くなった便を排出する役割がある、という話はマタギの中村さんにも聞いた。その強力な デトックス効果は、アスパラに含まれる「葉酸」という成分由来のもの。「俺も”陽さん”だし、やっぱりアスパラ育てるために生まれてきたんですよ」と陽さん。お茶目である。
コロポックル村畑

陽さんは、芯がビシッとある野菜が好き。畑にはまっすぐ上にのびる野菜が多かった。

アスパラマンの名言「農村風景をつくるのも農家の責任」
陽さんにアスパラを語らせたら、本当に一日中放してくれそうな勢いである。お話は書ききれないが、中でも一番感動した言葉。「この村はほとんどが畑。だから、農家は、農作物をつくるのと合わせて、村の景観をつくっている、という責任がある。」初めて、農家さんからこんな言葉を聞きました。今、これを書いていても、改めて感動が蘇ってきます。

農家だけではない。住宅地なら、個人個人の家も然り、商店街ならお店も然り。ひとりひとりがその町の景観をつくっている。この意識が浸透してこそ、美しい村になっていくんだろう。

更に素晴らしいのが、その想いを行動に移していること。赤井川村では、同じ問題意識を共有するメンバーがTOGETHERというチームをつくり、耕作放棄地となった畑を借りてひまわり畑をつくっている。農家のメンバーが多いので、作業分担をして片手間で畑を耕し種をまき、水をやる。 ひまわり畑は、無論収入につながらない。でも、そのひまわり畑が景観に彩りを与え、赤井川村の夏の風物詩となりつつあるという。

ひまわり畑ひまわり畑。今は種を植え終わったところ。芽が出るのが楽しみ。

農家ってかっこいい、と思ってほしい
想いを行動にすることは難しい。そのモチベーションはなんだったのか。それは「おやじの背中をみて、子どもに農家ってかっこいい、と思ってほしい。」ということ。

「学校で、なりたい職業に農業なんて書く子、いないでしょ。みんな、消防士さんとか、サッカー選手とか、お医者さんとか。赤井川村は農業の村だから、子供達のなりたい職業の中に、農家という選択肢が増えてほしい。」これまた鳥肌もののコメントが返ってきた。「観光できてくれたひとや、子ども達にそれを伝えていくのも仕事」と、小中学生の農業体験等にも協力しているのだそう。意識の持ち方次第で、仕事は変わる。ビジネス書ではよくあるフレーズだが、農家でも全く共通している。

陽さん天野さんと3人で

なぜこんなに意識が高い農家が多いのか
なぜ、陽さんをはじめ、TOGETHERのようにボランティアで村にかかわっていくような、意識の高い農家さんが多いのか。お話を聞く中で、ぼんやり浮かび上がってきた要素は以下3点。

1. エセ田舎的立地
小樽から30分、札幌から1時間ちょっとの「エセ田舎」であること。(住民談)小樽・札幌といった都市が近く、週末には買い物に行くなど、生活圏に入っている。つまり都市の恩恵を受けつつ田舎に住めるという、いいとこ取りなポジションにあるのではないか。

2. 平成の大合併でも独立を守ったプライドとしたたかさ
その大都市の近くにありながらも、合併には断固として反対。小樽の中の一つの町になんかなってしまったら、人口も減る。認知度も下がる。道内でも当時、小さくて尖っていて独立しない村としてよくメディアに取り上げられたそう。

東京でアスパラを売るときも「人口1200人の小さな村で…」といえばウケがよい。小さい方がネタになっておいしい。とのこと。むしろ一番ちっちゃくなりたい!と(笑)。それだけじゃないだろうが、小さい村であることのメリットをきちんと認識されている。

3. 奇跡的なタイミングでのUターン
そんなとき、示し合わせた訳でもなく、なぜか陽さん年代の何人かが、Uターンで赤井村に返ってきた。Uターン者は客観的に田舎を把握できる貴重な存在。その仲間達が地元とつながり「TOGETHER」のような動きになっていった。

陽さん曰く、役所がお膳立てをしてくれてそうなったのだ、と。天野さんは苦笑いのような、照れ笑いのような。こういう、フラットな公民の関係が村を支えているんだろう。

天野さんと陽さん「俺たちの世代が頑張っていかねば」、語る二人。いつもこんな雰囲気で作戦会議をしているのが目に浮かぶようでした。

まとめ
なぜ、ここが美しい村なのか…美しくないわけではない。しかし、正直、ふらっと立ち寄ってもよくわからない。天野さんに、村の方を紹介していただき話を聞けたからこそ、取り組みの素晴らしさが理解できたが、そうでなければ早々に立ち去っていたかもしれない。

しかし、これからだ。天野さんも陽さんも「俺たちの世代が頑張っていかねば」。この言葉を何度か口にしたのが印象的だった。30~40代の村の未来を 担っていく2人の世代が、既にこんな気概をもって、地に足をつけ、踏ん張っている。赤井川村は、きっとこれからおもしろい。人口減少の波が襲ってくる中、 「この村、ずるい!」と、思わせてくれるような村になる気がする。「日本で最も美しい村連合」の加盟村であることも、したたかに使いこなしてくれそうである。

すっかり畑で話し込んでしまい、気づくと日が暮れ始めていた。
「お仕事、お邪魔してすみません。何時くらいまで、作業されるんですか?」
「アスパラはホワイトだけど、会社はブラックなんでね!」と再び畑へと帰っていった。最後まで、お茶目に決めてくれた。

そんな陽さんのアスパラは「コロポックル村」ラベルで、東京の各伊勢丹で購入できる。ぜひ、赤井川村の底力をご賞味あれ。

<<前編 (1) セイコーマート以外 小売店ゼロの村で暇を持て余していたら

 

 

コロポックル村
北海道余市郡赤井川村字都209
定休日 : 毎週火曜日(ゴールデンウィークと夏休み・祝日は営業)
営業時間 : 朝~夕
TEL:0135-34-6434
【備考】ちなみに、コロポックルとはアイヌの妖精の名前。昔、実家の押し入れの暗がりに、北海道土産のコロポックルがぶらぶらとぶら下がっていて、私には気味の悪いイメージばかりがあったが、本来はかわいいもののようだ。

農業元気グループTOGETHER


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