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栗城さん

DAY22 美しい村連合・福島県北塩原村・前編 警察官から塩職人に、駅員さんから蕎麦職人に。幸せな人生の番狂わせが起こる村


東北の軽井沢的な?裏磐梯
裏磐梯(うらばんだい)。この観光地名を知っているだろうか。少なくとも私は知らなかった。が、どうやら福島周辺では、自然豊かなアウトドアのメッカとして知らない者はいないようだ。これまで訪問した美しい村の中では格段にペンションの数も多く、観光地化されている印象だ。

猪苗代湖の北側、喜多方ラーメンで有名な喜多方市の東側に位置するこのエリア。村のど真ん中には、檜原湖という外周50km程の湖がある。磐梯山の噴火で川が塞き止められてできた湖だ。その他300あまりの湖沼が、そこかしこに広がっているという珍しい地形で、ジオパーク認定も受けている。

IMG_6346村北部の北山地区には、檜山湖形成の際に沈んでしまった集落も。

北塩原村の3エリア
裏磐梯というブランドで知られているため、それが北塩原村にあるという認識がある人は少ないが、山地区、大地区、桧地区(ここがいわゆる裏磐梯)の、もともと3つの村が合併し、それぞれの漢字をとって誕生したのが「北塩原村」である。美しい村に加盟したのには、桧原地区(裏磐梯)ばかりでなく、大塩や北山にも目を向けてほしいという想いがあるようだ

北塩原地図

裏磐梯観光協会HPの地図を加工

まず、役所を訪問。今回、村を紹介してくださった佐藤さんと高橋さん。お二人とも福島っぽく、最小限の口の動きと表情で、淡々とお話される。一見、固く、冷たい印象を受ける。しかし、話を聞けば、前日までに関係各所に電話を入れ、私が取材できるよう手配をしておいてくださるという配慮ぶり!あまりオープンな印象ではないだけで、とてもきめ細かく温かいのはお国柄なのだろう。本当に有り難い。
佐藤さん、高橋さんと

日本一高い塩の工場見学
さっそく訪れた、山塩工場。今回の旅では、各地の「さしすせそ」(=生活必需品である地場産品の生産者さん)を取材したいと思って出発したものの、なかなかコンタクトとれずだったので、ここが、初の塩工場取材。しかも、普通の海塩じゃなく、温泉を煮詰めてつくる山の塩。日本では、他に新潟と熊本でしかつくっていない、とても珍しいタイプの塩だ。

もともと、この地域では800年代頃から塩をつくっていたという記録がある。この工場のある地域も大塩地区という名前。その昔は大沢という名前だったのが、塩がとれるとうことで大塩と改称された歴史を持つ。商工会の声かけで、何か名産品を開発しようとしたが、頓挫。むしろ昔あったものを見直そうという動きの中から復活したのがこの山塩。

山塩1代表理事の栗城さんにお話を伺いました。現在は栗城さんと4人の若者、計5名の運営体制。

昔の知恵から学びつつ試行錯誤の毎日
山塩の製造工程は、塩分を含む温泉水を大釜でとにかく煮詰めて、塩を結晶させるというもの。塩が専売制になる直前の、大正末期まで塩を製造していたため、辛うじて当時塩づくりに携わっていたというご老人の記憶を頼りに、なんとか製造開始。

山塩2温泉成分を残しつつ、なるべくカルシウム分を取り除く絶妙な温度管理が難しいのだそう。

しかし、未だ試行錯誤の連続。角釜か、丸釜か。角釜の方が容量は大きい。しかし、伝統的には味噌ダル(=丸釜)を使っていたという記述があり、丸釜でも実験。やはり、熱伝導の関係で丸いと吹きこぼれない。「やっぱり昔の人の知恵はすごい」、と栗城さん。火事で資料が消失しているため、当時の製法は殆ど謎に包まれている。少ない資料を辿り、伝統的な作り方から学ぶことも多いようだ。夏は壁にかけた温度計が解ける程蒸し暑くなるという工場も、現在は換気扇をガンガン回しているが、すぐに塩で痛んでしまい使い物にならない。昔の人の工法から学び、高屋根で湿気がでていく仕組みを取り入れたいと考えているところだ。

材木を乾燥燃料となる間伐材*を干しているところ。これも三島町の桐箪笥の桐の干し方を取り入れている。

厳しい環境下でつくる山塩の苦労
海水の塩分濃度は約3%。対して、この温泉は1%程度。100ℓからたった1kgの塩しか製造できない。単純に考えても同じ量を製造するにも3倍のコストがかかる。その上、北塩原は山間地で気温も低く、砂浜の天日で水分を蒸発させるような広い敷地もない。自然、製造にはコストもかかる上、生産量は限られる。完成品は、キロ1万円以上の高級品となる。「日本一高い塩」と言われる所以だ。

山塩3塩と一緒に結晶してしまうカルシウムの結晶を取り除く採集工程。これも色々な機会を試したが、どうしても機械化できない工程。

警察官から塩職人へ異例の転身
工場も工程も、あまりの手づくりっぷりに驚いたが、更に驚いたのは、代表の栗城さんの経歴!!その物腰柔らかな出で立ちと、ひたむきな探究心からは想像だにしなかったが、なんと元警察官!しかも、もともと、バイトとして工場を手伝ったのがきっかけだったのだとか。それが今では日本でも希少な山塩職人。「大変だけど、ものづくりはおもしろいですよ。お客さんにおいしいと言ってもらえて、買っていただけるというのが。今までになかった喜びなんです。辞めたいと思ったことは一度もない」という。人生、何が起こるかわからない。

栗城さんと
源泉の塩温泉につかる
工場近くの観山ホテルで、この塩と源泉を同じくする塩温泉に入ることができる。濃度1%とはいえ、かなりしょっぱいお湯だった。出てからもしばらく汗がダラダラでる強烈な暖まり方が特徴。
塩温泉

Iターン岩佐さんの夢の城「蕎麦古家」でランチ
ランチは、(自称)日本一うまい蕎麦の「蕎麦古屋」さんで。蕎麦古家の岩佐さんは、元JR職員。57歳で早期退職、千葉から、大好きなイワナ釣り三昧の生活を、とIターンし、古民家を自ら修復。この素敵な空間を、気の合う人と共有したいとの想いで始まったのがこの蕎麦屋さん。

材料のそば粉は全てこの集落のもの。おいしいと評判になり、今では地元に蕎麦組合ができた。全国各地から色々なナンバーの車が並ぶようになり、集落も元気になってきたという。

蕎麦古家

田舎で暮らす秘訣
蕎麦屋さんは朝11時から、20食程度限定。営業時間は長くて3時間。岩佐さんにとっては、それがお客さんとコミュニケーションで人生を豊かに広げる時間。それが終われば山や川で遊んだり、大好きな音楽を聴いて過ごす、自分の時間。田舎暮らしで、周りの人とうまくいかなかったことは?と聞いてみた。「ないね。」と即答。「まず自分の生活をこういう風にしたいというビジョンがあるから。その芯がブレないことが大切。あとは周辺でも信頼できる人を見つけて仲良くなればいい。会わない人とはほどほどに距離をとればいい。それだけ。」

岩佐さんお気に入りのイギリス製スピーカーの前で。店内の音楽も古民家×JAZZで素敵でした。

地域に貢献したい、と移住を考える人が、「地域に入り込む」なんて言い方をするけれど、「楽しむために行く」という心構えの方がいいのかもしれない。つまらなかったらやめればいいし。もっと自分本位で田舎暮らしを始める人が増えることで、田舎のハードルが下がるのではないか。岩佐さんには、そんなヒントをもらった。

岩佐さんと

>>後編:北塩原村では棚からボタボタ、ボタ餅ならぬじゅんさいやラーメンが落ちてきた もお読みください

 

*間伐材:間伐材を活用して安価な燃料としつつ、林業との共存を図る…なんてことが出来ればよいと思うのですが、山が深く、伐採した木を運び出すコストがかかること、また燃料用の木材でないと燃やしてはいけない(産廃の問題等がひっかかるのでしょうか)という県の指導で、間伐材を使いきれていないとのこと。間伐材関係にお詳しい方、もしよい知恵があれば教えてください!!

  • 会津山塩企業組合
    福島県耶麻郡北塩原村大字大塩字立岩6106
    TEL:0241-33-2340
    基本見学可だが、日々作業が異なるので、訪問する前には念のため電話で問い合わせておくとベターとのこと。
  • ホテル観山(塩工場至近)
    福島県耶麻郡北塩原村大塩裏磐梯温泉
    TEL:0241-33-2233
    塩温泉に入れるのはホテル観山と米沢屋。両方に電話問い合わせをしたが、米沢屋の方は、日によって日帰り入浴の時間は異なるので来る直前に電話しろという。翌日のことすらわからないそうだ。あまりの対応の悪さにホテル観山さんにお邪魔しましたが、正解。清潔なお風呂です。
  • 蕎麦古家
    福島県耶麻郡北塩原村桧原字道前原1131-126
    TEL:0241-34-2160

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